第89章 何日
朝。
目を開ける。
天井。
いつもの。
昨日。
鞄を。
持った。
少しだけ。
入れた。
それでも。
重かった。
旅に必要なものは。
もっとある。
でも。
全部を。
私が持つ必要はない。
そこまでは。
分かった。
まだ。
分からないもの。
ある。
⸻
朝食。
アルベルト。
ヴィオラ。
カイル。
ノア。
今日は。
いる。
食べる。
パン。
スープ。
果物。
昨日。
聞いた。
服は。
日数による。
食べ物も。
日数による。
日数。
「……アルベルト」
「ん?」
「故郷まで」
言うと。
みんなが。
少しだけ。
こちらを見る。
もう。
驚かない。
「何日。かかりますか」
アルベルトが。
すぐには。
答えない。
考えている。
「今の道なら、順調に進んで三日ほどだ」
三日。
一日。
二日。
三日。
「……三日」
思っていたより。
短い。
ような。
長い。
ような。
分からない。
「じゃあ。三日で着く?」
アルベルトが。
首を振った。
「アネクシアなら、もう少しかけた方がいい」
増えた。
「どうして?」
「一日中、馬車に乗り続けるつもりか?」
止まる。
馬車。
揺れる。
長く座る。
疲れる。
途中で。
降りる。
食べる。
休む。
昨日まで。
知った。
「……無理。かも」
「だろうな」
ノア。
早い。
見る。
「たぶん」
「そこ便利に使うなよ」
便利。
今日は。
たぶん。
⸻
アルベルトが。
机の上に。
紙を広げる。
朝食のあと。
書斎。
前にも。
来た。
紙。
線。
町。
道。
川。
知らない名前。
「地図だ」
知っている。
でも。
今まで見た地図とは。
少し違う。
指。
アルベルトが。
一つの場所を示す。
「ここが、この町だ」
ここ。
今いる場所。
そこから。
線を辿る。
長い。
途中。
分かれる。
曲がる。
また。
続く。
そして。
指が止まる。
「この辺りだ」
故郷。
名前は。
もう。
知っている。
場所も。
知った。
でも。
こうして。
今いる場所と。
一本の線で。
つながっているのを。
見るのは。
初めて。
「……遠い」
「遠いな」
⸻
「三日で行けるの?」
もう一度。
聞く。
アルベルトは。
別の場所を。
指す。
「馬を替えながら進んで、天候も道も良ければな」
馬。
また。
出た。
「替える?」
「同じ馬を何日も走らせ続けるわけにはいかない」
そうか。
馬も。
休む。
少し。
見る。
ノアは。
いない。
言ったら。
何か言いそう。
たぶん。
⸻
「それに」
アルベルトの指が。
途中で止まる。
「雨が降れば遅れる。道の状態が悪ければ迂回することもある」
前に。
聞いた。
道は。
いつも同じではない。
「宿に着く前に疲れたら?」
聞く。
アルベルトが。
こちらを見る。
「その前に休む」
「でも。遅れる」
「遅れていい」
すぐだった。
遅れて。
いい。
「三日じゃ。なくなる」
「三日で着くことが目的ではないからな」
目的。
故郷へ。
行く。
三日で。
ではない。
⸻
ヴィオラが。
地図を見る。
「今のアネクシアなら、一日に進む時間を短くして考えた方がいいと思う」
「何日?」
「それをこれから決めるんだよ」
まだ。
決まらない。
「四日?」
「かもしれない」
「五日?」
「かもしれないね」
「六日?」
カイルが笑った。
「増やし続けなくていいよ」
そうか。
⸻
地図。
見る。
三日。
四日。
五日。
数字。
増える。
遠くなる。
前なら。
嫌だったかもしれない。
早く。
行きたい。
今も。
行きたい。
でも。
途中で。
食べる。
休む。
眠る。
また。
進む。
それを。
知った。
「……ゆっくりでも。着く?」
アルベルトが頷く。
「道を進めばな」
それなら。
いい。
⸻
「泊まるところは?」
聞く。
アルベルトが。
地図の途中を。
二つ。
指す。
「候補はいくつかある」
候補。
「ここ?」
「その一つだ」
町。
らしい。
今いる町とは。
違う。
知らない町。
「ここで。寝る?」
「その可能性はある」
知らない場所。
夜。
客室。
思い出す。
眠れた。
怖かった。
でも。
朝が来た。
「……見たい」
「何を?」
「泊まるところ」
アルベルトが。
少し考える。
「今すぐは無理だな」
今すぐ。
ではない。
「写真?」
聞いてから。
違う。
ここには。
たぶん。
ない。
アルベルトが。
首を傾げる。
「宿の。写真?」
アルベルトが。
首を振る。
「その宿のものは、持っていないな」
そう。
写真は。ある。
宿の写真が。ない。
⸻
代わりに。
アルベルトが。
宿のことを。
教える。
大きさ。
部屋。
食事。
馬を休ませる場所。
人。
知らない人も。
いる。
「家とは。違う?」
「違うな」
「客室とも?」
「違う」
知らない場所。
本当に。
知らない場所。
少し。
胸が。
固くなる。
でも。
前ほどでは。
ない。
「……泊まる前に。行ける?」
ヴィオラが。
「近い宿なら、一度見に行ってみてもいいかもね」
近い宿。
故郷へ行く途中では。
なくても。
いい。
見る。
帰る。
それなら。
できそう。
⸻
昼。
自分の部屋。
紙を。
一枚。
もらった。
地図ではない。
書く。
三日。
その横。
四日。
五日。
少し。
考える。
消す。
数字だけでは。
分からない。
代わりに。
書く。
進む。
休む。
食べる。
眠る。
進む。
昨日まで。
知ったこと。
並べる。
最後。
着く。
⸻
三日なら。
早い。
五日なら。
遅い。
でも。
どちらでも。
最後は。
同じ。
着く。
途中で。
一日増えても。
道が。
なくなるわけではない。
休んでも。
次の日がある。
眠っても。
朝が来ることも。
知った。
だから。
早くなくても。
いい。
たぶん。
まだ。
少し。
早く行きたいけど。
⸻
夕方。
ヴィオラが来る。
紙を見る。
「旅の予定?」
「……まだ」
予定では。
ない。
「何?」
考える。
「行き方」
ヴィオラが。
少し笑う。
「そっか」
紙の最後。
着く。
そこだけ。
指で触る。
何日か。
まだ。
分からない。
途中で。
何があるかも。
全部は。
分からない。
でも。
三日で。
着かなくてもいい。
四日でも。
五日でも。
途中で。
止まっても。
また。
進めばいい。
大事なのは。
早く着くことでは。
ない。
ちゃんと。
着くこと。
たぶん。
今日は。
急がない方の。
たぶん。




