第88章 持っていくもの
次の日。
朝。
目を開ける。
天井。
いつもの。
身体。
少し。
疲れている。
昨日。
外で食べた。
休んだ。
馬車で帰った。
でも。
重くはない。
起きる。
今日は。
何をする。
まだ。
決めていない。
⸻
朝食。
ヴィオラ。
ノア。
アルベルト。
いる。
カイルは。
いない。
仕事。
たぶん。
食べながら。
昨日のことを。
少し。
思い出す。
川。
風。
昼。
持っていった食事。
ミーナが。
用意してくれた。
もし。
故郷まで。
何日も。
かかるなら。
「……ごはん」
ヴィオラが見る。
「足りない?」
首を振る。
「違う」
昨日は。
一回。
昼を食べただけ。
でも。
何日もなら。
「故郷まで。ごはん。どうするの?」
アルベルトが。
こちらを見る。
「道中の?」
頷く。
「持っていく分もあるし、途中で用意できる場所もある」
途中。
昨日。
知った。
「全部。持っていかない?」
「何日分も全部、というわけではないな」
そうか。
考える。
食事。
それから。
眠る。
服。
「……服は?」
ヴィオラが。
少し笑う。
「持っていくよ」
「何枚?」
「日数によるかな」
日数。
まだ。
分からない。
「水」
「それも必要だね」
「毛布」
「宿にあることもあるけど、用意はすると思う」
増える。
ごはん。
服。
水。
毛布。
他。
「……多い」
ノアが。
パンを食べながら。
「旅行なんだからそんなもんだろ」
旅行。
故郷へ行く。
旅行。
少し。
違う気がする。
でも。
途中だけ見れば。
同じなのかもしれない。
⸻
食事のあと。
アルベルトに。
ついていく。
「……見たいです」
「何を?」
「持っていくもの」
アルベルトが。
少し考える。
「なら、ちょうどいい」
ちょうど。
いい?
⸻
連れていかれたのは。
屋敷の。
奥。
物置。
入ったことが。
ない。
扉が開く。
箱。
袋。
道具。
たくさん。
知らないもの。
「全部。持っていく?」
「持っていかない」
早い。
「必要なものだけだ」
必要。
昨日。
食べ物。
今日は。
必要なもの。
似ている。
⸻
アルベルトが。
箱を一つ。
開ける。
布。
小さな袋。
火をつける道具。
紐。
容器。
「これは?」
一つ。
持つ。
「水を入れる」
次。
「これは?」
「雨具だ」
次。
「これは?」
「予備の紐」
「何に使う?」
「色々だな」
色々。
便利。
たぶん。
⸻
ヴィオラも来る。
手に。
小さな鞄。
「アネクシアが自分で持つなら、このくらいかな」
鞄。
見る。
小さい。
「もっと。持てる」
「持てるかどうかじゃないよ」
聞いたことが。
ある。
ような。
ないような。
「何日も持って歩けるか、だからね」
何日も。
そうか。
一回。
持ち上げるのと。
ずっと。
持つのは。
違う。
座るのと。
馬車に乗るのが。
違ったみたいに。
「……これ」
小さい鞄。
「うん」
⸻
空の鞄を。
持つ。
軽い。
「入れてみる?」
頷く。
ヴィオラと。
選ぶ。
水。
少し。
布。
小さいもの。
増える。
鞄が。
重くなる。
持つ。
まだ。
大丈夫。
「もっと」
「まずそれで歩いてみようか」
また。
少しずつ。
「……はい」
⸻
廊下。
歩く。
鞄。
肩。
いつもと。
違う。
重い。
でも。
歩ける。
階段。
ゆっくり。
庭。
出る。
歩く。
最初は。
平気。
少しして。
肩が。
痛い。
「……重い」
ヴィオラ。
「うん」
「さっきは。重くなかった」
「持ち続けると変わるでしょう?」
変わる。
また。
知らなかった。
⸻
木のところ。
前に。
歩いた場所。
止まる。
鞄を。
下ろす。
軽い。
肩。
楽。
「……これだけ?」
「今日はね」
今日は。
これだけ。
鞄の中。
少ない。
旅に必要なものは。
もっと。
たくさん。
「全部。自分で持つ?」
アルベルトが。
後ろから来た。
首を振る。
たぶん。
無理。
「馬車に積むものもある。人に持ってもらうものもある。自分で持つものもある」
三つ。
「分ける?」
「そうだ」
全部。
自分で。
やらなくていい。
⸻
ノアが。
庭へ来る。
鞄を見る。
「何してんの」
「持つ練習」
「休みの日終わったな」
昨日は。
休みでは。
ない。
「違う」
「何が」
「昨日は。外で食べた」
「知ってる。俺いたし」
そうだった。
少し。
恥ずかしい。
⸻
ノアが。
鞄を持つ。
「軽っ」
「重い」
「軽いだろ」
「重かった」
ヴィオラが笑う。
「しばらく持ってたからね」
ノアが。
肩にかける。
「これくらいなら余裕だろ」
違う。
たぶん。
でも。
説明する。
「持てるのと。持ち続けられるのは。違う」
ノアが。
止まる。
「……先生みたいなこと言うようになったな」
それは。
少し。
嫌。
「……違う」
「何が?」
分からない。
⸻
午後。
鞄の中身を。
机に並べる。
水。
布。
小さいもの。
これだけ。
それでも。
重くなった。
故郷まで。
必要なもの。
食べ物。
水。
服。
眠るもの。
雨。
他にも。
ある。
全部。
持つことは。
できない。
でも。
全部を。
私が持つ必要も。
ない。
ヴィオラ。
アルベルト。
カイル。
ノア。
先生。
ミーナ。
旅に。
誰が行くかは。
まだ。
分からない。
でも。
一人では。
ない。
前に。
ヴィオラが。
言った。
一人では行かせない。
あの時は。
一緒に来る。
という意味だと。
思った。
今日。
少し。
違う意味も。
分かった。
一人で。
全部。
できなくていい。
⸻
鞄。
空にする。
軽くなる。
明日。
また。
何かを。
入れるかもしれない。
まだ。
何を持っていくか。
全部は。
知らない。
道も。
全部は。
知らない。
何日かかるかも。
まだ。
知らない。
でも。
準備するものは。
少し。
見えた。
行くために。
必要なのは。
身体だけでは。
なかった。
そして。
私だけでも。
なかった。
たぶん。
今日は。
一緒に持つ方の。
たぶん。




