第86章 いつもの朝
朝。
目を開ける。
天井。
いつもの。
身体を。
少し動かす。
昨日より。
軽い。
腕。
脚。
痛くない。
起き上がる。
できる。
昨日。
休んだ。
だから。
たぶん。
戻った。
⸻
朝食。
食堂へ行く。
ヴィオラ。
ノア。
アルベルト。
カイル。
いる。
最近。
先生と。
ヴィオラと。
いることが。
多かった。
ノアも。
よくいる。
でも。
四人が。
同じ場所にいるのは。
少し。
久しぶり。
「おはよう、アネクシア」
アルベルト。
「……おはようございます」
カイルも。
「おはよう」
「……おはよう」
ノア。
「おはよ」
「……おはよう」
ヴィオラ。
「私には?」
見る。
「……さっき。言った」
部屋を出る前。
言った。
ヴィオラが笑う。
「覚えてたか」
ノア。
覚えている。
当然。
たぶん。
⸻
食べる。
会話。
アルベルトと。
カイルが。
何か話している。
仕事。
たぶん。
知らない言葉が。
少しある。
前なら。
聞いた。
今も。
聞きたい。
でも。
食べ終わってからでも。
いい。
待つ。
「アネクシア」
カイル。
「はい」
「さっきからこっち見てるけど、何か聞きたい?」
ばれた。
「……あります」
アルベルトが笑う。
「やはりか」
やはり。
とは。
「何の話ですか」
「町の外の道の話だよ」
道。
身体が。
少し前へ行く。
「故郷?」
「いや、反対側だ」
違った。
戻る。
ノアが笑った。
「分かりやす」
「……何が」
「別に」
別に。
便利。
⸻
話を聞く。
町の外。
道。
橋。
雨が降ると。
通りにくくなる場所。
知らない。
「道って。いつも同じじゃない?」
アルベルトが。
少し考える。
「場所は同じでも、状態は変わるな」
「状態」
「雨が降ればぬかるむ。川が増水すれば橋を渡れないこともある。冬なら雪もある」
雪。
知っている。
でも。
旅の道と。
つながっていなかった。
「故郷までの道も?」
今度は。
ちゃんと聞く。
アルベルトが頷く。
「調べている。今使える道も含めてな」
今。
使える道。
場所が。
分かっても。
道が。
使えるとは。
限らない。
知らなかった。
また。
一つ。
増えた。
⸻
「行きたいか?」
アルベルト。
「……はい」
すぐに。
答える。
「そうか」
それだけ。
止めない。
許すとも。
まだ。
言わない。
「先生が。大丈夫って言ったら」
付け足す。
アルベルトが。
少し目を細める。
「分かった」
カイルが笑う。
「ずいぶん慎重になったね」
慎重。
考える。
「……たぶん」
ノアが。
「それ便利なだけだろ」
見る。
なぜ。
分かる。
⸻
先生が来る。
診察。
「今日は軽そうだね」
「軽いです」
「昨日休んだからかな」
「たぶん」
先生が笑う。
「今日は便利な方?」
止まる。
先生まで。
知っている。
「……たぶん」
ヴィオラが。
笑う。
みんな。
知っている。
少し。
不満。
⸻
「今日はどうしたい?」
聞かれる。
考える。
歩く。
馬車。
町。
客室。
色々。
できる。
でも。
朝。
アルベルトから。
道の話を聞いた。
「……外」
「町?」
首を振る。
「町の。向こう」
先生が。
少し考える。
「馬車で?」
「はい」
「降りる?」
考える。
今日は。
見る。
まず。
「……まだ。決めない」
先生が頷く。
「いい答えだね」
いい。
らしい。
「体調を見て決めよう」
「はい」
⸻
出かける準備。
玄関。
ヴィオラが来る。
当然のように。
その後ろ。
カイル。
「……カイルも?」
「今日は時間があるからね」
時間。
ある。
だから。
来る。
「嫌?」
首を振る。
「……来て」
言ってから。
少し。
止まる。
カイルも。
少しだけ。
止まった。
それから。
笑う。
「うん」
⸻
馬車。
乗る。
ヴィオラ。
カイル。
向かいに座る。
先生は。
今日は来ない。
出る前に。
言われた。
疲れたら戻る。
気分が悪くなったら言う。
降りるかは。
その時に決める。
覚えている。
馬車が。
動く。
揺れる。
知っている。
前より。
身体に。
力を入れない。
少し。
慣れた。
⸻
町。
前に見た。
店。
道。
大きな木。
知っているものが。
増えた。
馬車は。
止まらない。
そのまま。
進む。
知らない道。
知らない店。
少しずつ。
建物が減る。
人も。
減る。
町の端。
その先。
道。
続いている。
「……町。終わった?」
カイルが。
窓の外を見る。
「そうだね」
終わる。
町にも。
端がある。
でも。
道は。
終わらない。
前。
横。
ずっと。
続いている。
⸻
少し進む。
身体。
まだ。
大丈夫。
でも。
揺れは。
ずっと。
ある。
「アネクシア?」
ヴィオラ。
「……まだ。大丈夫」
少し。
間。
「疲れては。きました」
言えた。
ヴィオラが頷く。
「どうする?」
戻る。
進む。
降りる。
選べる。
窓の外。
道。
知らない。
でも。
見たい。
「……少し。降りたい」
「分かった」
馬車が止まる。
⸻
外。
町より。
静か。
道。
草。
木。
空。
それだけ。
振り返る。
遠くに。
町。
来た道。
見える。
反対を見る。
道。
続いている。
故郷とは。
違う方向。
でも。
町の外。
初めて。
自分の足で。
立った。
「どう?」
カイル。
考える。
「……遠い」
「何が?」
町。
屋敷。
故郷。
色々。
「全部」
カイルが。
少し笑った。
「そうかもね」
でも。
道は。
ある。
どこかへ。
続いている。
⸻
長くは。
歩かない。
少しだけ。
道の端まで。
それから。
自分で言う。
「……戻ります」
ヴィオラも。
カイルも。
何も言わない。
ただ。
一緒に。
馬車へ戻る。
⸻
帰り。
少し。
眠い。
でも。
眠らない。
窓を見る。
知らなかった道。
さっき。
通った。
町が。
近づく。
建物が。
増える。
人が。
増える。
知っている店。
大きな木。
そして。
屋敷へ。
戻る。
⸻
玄関。
アルベルトがいた。
「おかえり」
「……ただいま」
すぐに。
出る。
「どこまで行った?」
「町の。向こう」
「そうか」
「道が。ありました」
アルベルトが。
少し笑う。
「あるだろう」
頷く。
ある。
知っていた。
たぶん。
でも。
今日。
見た。
⸻
部屋へ戻る。
少し。
疲れた。
今日は。
休む。
昨日。
何もしなかった。
だから。
今日。
少し遠くまで。
行けた。
故郷とは。
違う方向。
だから。
故郷には。
近づいていない。
でも。
町の外を。
知った。
道は。
屋敷から。
町へ。
町から。
その先へ。
続いている。
故郷への道も。
きっと。
同じ。
一度に。
全部。
行かなくていい。
知っている場所を。
少しずつ。
増やせばいい。
今日は。
町の向こう。
次は。
まだ。
分からない。
でも。
道は。
続いている。
たぶん。
今度は。
進む方の。
たぶん。




