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第三皇女の約束  作者: トカゲ


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第84章 夜の部屋

夕方。


先生が来た。


いつもの診察。


腕。


脚。


背中。


問題は。

ない。


たぶん。


先生も。


「今日は大丈夫そうだね」


と言った。


なら。


「……夜」


「覚えてた?」


頷く。


忘れていない。


昨日。


次は。

夜。


そう言った。


「やってみる?」


考える。


少しだけ。


怖い。


でも。


「……やります」


先生が頷く。


「途中で戻ってもいいからね」


戻る。


できる。


それを。

先に知っている。


「はい」


⸻


夕食のあと。


客室へ行く。


三回目。


扉。


ベッド。


窓。


机。


椅子。


知っている。


でも。


少し。

違う。


暗い。


窓の外。


庭が。

黒い。


昼は。

見えていたものが。


見えない。


部屋の中も。


灯りがあるところと。


ないところ。


昼とは。

違う。


「どう?」


ヴィオラ。


「……暗い」


「夜だからね」


知っている。


それは。


でも。


言わない。


⸻


ベッドに座る。


今日は。


昼寝ではない。


ここで。


夜を過ごす。


朝まで。


長い。


「ヴィオラは?」


「どうしようか」


聞き返された。


考える。


昨日は。


扉の外。


呼んだら。

返事があった。


今日は。


夜。


「……最初は。いてほしい」


言えた。


「うん」


ヴィオラが。

椅子に座る。


それだけで。


少し。


楽になる。


⸻


いつもの時間。


ベッドに入る。


灯りは。

まだ。


ついている。


「消す?」


ヴィオラが聞く。


見る。


灯り。


消したら。


暗くなる。


いつもの部屋では。

消している。


でも。


ここは。


違う。


「……少しだけ。このまま」


「分かった」


目を閉じる。


明るい。


瞼の向こうにも。

少し。


分かる。


眠れない。


少し。


時間が経つ。


目を開ける。


ヴィオラ。


本を読んでいる。


「……まだ。いる」


ヴィオラが顔を上げる。


「いるよ」


そう。


いる。


⸻


もう一度。


目を閉じる。


眠れない。


身体は。

疲れている。


でも。


頭が。

起きている。


音。


昼とは違う。


鳥は。

いない。


代わりに。


虫。


風。


屋敷の音。


時々。


遠くで。


何かが鳴る。


知らない音。


目を開ける。


「ヴィオラ」


「うん?」


「今の」


耳を澄ます。


また。


小さな音。


「窓かな。風が強くなると鳴るの」


窓。


そうか。


知った。


次に鳴った時。


少しだけ。


怖くなかった。


⸻


「灯り」


言う。


ヴィオラを見る。


「消してみる?」


頷く。


灯りが消える。


暗い。


思っていたより。


暗い。


胸の奥が。

固くなる。


でも。


ヴィオラは。


いる。


見えない。


でも。


いる。


「……ヴィオラ」


「いるよ」


昨日と。

同じ。


見えなくても。


返事がある。


目を閉じる。


暗さは。


変わらない。


⸻


目を開ける。


暗い。


どこ。


一瞬。


分からない。


身体が。

固まる。


でも。


音。


風。


窓。


さっき。

知った音。


客室。


思い出す。


ここ。


アークス家。


ヴィオラ。


見る。


暗くて。

よく見えない。


「……ヴィオラ」


返事がない。


胸が。


強く鳴る。


もう一度。


「ヴィオラ?」


椅子。


動く音。


「……ん。いるよ」


眠そうな声。


いた。


ヴィオラも。


寝ていた。


少し。


おかしい。


息が。

抜ける。


「何かあった?」


「……何も」


「そっか」


また。


静かになる。


⸻


眠った。


たぶん。


次に。


目を開ける。


少し。


明るい。


窓。


夜では。

ない。


朝。


身体。


動く。


声。


出る。


髪。


同じ。


部屋。


客室。


覚えている。


椅子。


ヴィオラ。


今度は。


ちゃんと眠っている。


「……ヴィオラ」


起こさない。


ベッドから。


ゆっくり降りる。


窓へ行く。


庭。


見える。


昨日の夜。


見えなかった。


でも。


なくなっていたわけでは。

なかった。


朝になったら。


また。


見えた。


⸻


「おはよう」


後ろ。


ヴィオラ。


起きていた。


「……おはよう」


「眠れた?」


考える。


何回か。

起きた。


怖かった。


ヴィオラを。

呼んだ。


でも。


朝まで。


ここにいた。


「……眠れました」


「そっか」


ヴィオラが笑う。


それだけ。


⸻


先生が来る。


話す。


暗かった。


音が違った。


何回か起きた。


少し怖かった。


ヴィオラを呼んだ。


それでも。


戻らなかった。


先生は。


最後まで聞いた。


「どうだった?」


考える。


できた。


でも。


簡単では。

なかった。


怖くない。


でも。

ない。


「……また。できます」


先生が。


少しだけ。


笑った。


「じゃあ、成功だね」


成功。


朝まで眠れたから。


では。


たぶん。


ない。


また。


できると。


思えたから。


⸻


いつもの部屋へ戻る。


天井。


見慣れた。


でも。


昨日の夜。


違う天井の下で。


眠った。


目を開けた。


世界は。


変わっていなかった。


夜に。


見えなくなった庭も。


朝になったら。


そこにあった。


見えないことと。


なくなることは。


違う。


ヴィオラも。


暗くて。


見えない時があった。


返事が。


少し遅い時もあった。


でも。


いた。


眠る。


目を閉じる。


見えなくなる。


それでも。


次に。


目を開けた時。


同じものが。


あることも。


ある。


全部が。


変わるとは。


限らない。


だから。


次も。


眠れる。


たぶん。


今度は。


朝が来る方の。


たぶん。


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