第80章 もう少し先
次の日。
ではない。
何日か。
歩く。
座る。
馬車に。 乗る。
休む。
また。 歩く。
少しずつ。
できることが。 増えた。
馬は。
まだ。 分からない。
◇
今日。
先生が。 来た。
診察。
いつも通り。
足。
腕。
歩く。
座る。
それから。
「今日はどうする?」
聞かれた。
私に。
少し。 考える。
「……馬車」
「うん」
「町」
「うん」
「……降りたいです」
先生が。 ヴィオラを見る。
ヴィオラも。 先生を見る。
何も。 言わない。
少し。 不安。
「駄目?」
「まだ何も言ってないよ」
そうだった。
先生が。 笑う。
「短い時間ならいいよ」
いい。
「ただし」
来た。
「疲れる前に休む。無理だと思ったらすぐ言う。遠くには行かない」
「はい」
「走らない」
「……走りません」
「言い切った」
言い切った。
今日は。
◇
馬車。
乗る。
ヴィオラと。
今日は。 ノアは。 いない。
暇では。 ないらしい。
少し。
静か。
馬車が。 動く。
揺れる。
前より。 力を。 抜ける。
全部では。 ない。
でも。
少し。
町。
前に。 見た。
店。
曲がり角。
大きな木。
分かる。
「……あった」
ヴィオラが。 窓の外を見る。
「何が?」
「前も。見た」
「覚えてたんだ」
頷く。
知っている場所。
少し。 増えた。
◇
止まる。
扉が。 開く。
外。
前は。
降りなかった。
今日は。
降りる。
ヴィオラが。 先に。
私が。 あと。
手を。 借りる。
地面。
人の声。
馬車の音。
店から。 匂い。
知らないものが。 多い。
少し。
嬉しい。
「行こうか」
ヴィオラ。
歩く。
ゆっくり。
人が。 横を。 通る。
知らない人。
私を。 見る人もいる。
でも。
誰も。
名前を。 呼ばない。
アネクシア。
知らない。
当然。
少し。 変な感じ。
でも。
嫌では。 ない。
◇
店。
並んでいるもの。
果物。
布。
パン。
知らないもの。
知っているもの。
混ざっている。
「……あれ」
「パン?」
「違う。その隣」
ヴィオラが。 見る。
「焼き菓子」
「……食べられる?」
「食べ物だからね」
知っている。
たぶん。
ヴィオラが。 笑う。
「食べたい?」
少し。 考える。
「先生に。聞く」
ヴィオラが。 止まった。
私も。 止まる。
「どうしたの?」
「いや」
少し。 笑っている。
「成長したなと思って」
何が。
分からない。
◇
少し。 歩く。
まだ。
大丈夫。
でも。
足。
少し。 重い。
気づいた。
だから。
止まる。
「……ヴィオラ」
「うん?」
「休みたいです」
「分かった」
近く。
座れるところ。
座る。
人が。 通る。
町は。
私が。 休んでも。
動いている。
当たり前。
でも。
少し。 面白い。
「どう?」
「大丈夫」
ヴィオラが。 見る。
「……少し。疲れました」
「うん」
言えた。
先生は。 いない。
でも。
言えた。
◇
帰る。
馬車。
揺れる。
少し。 眠い。
ヴィオラが。 隣。
「寝てもいいよ」
寝る。
少し。 怖い。
前は。
眠ったら。
次に。 目を開けた時。
全部。 違った。
髪も。
身体も。
知らない場所も。
でも。
今は。
少し。 違う。
「……起きたら」
ヴィオラが。 見る。
「うん?」
「家?」
言ってから。
少し。 止まる。
家。
ヴィオラも。 少しだけ。 止まった。
それから。
「うん。着いたら起こすよ」
そう。
なら。
目を。 閉じる。
馬車が。 揺れる。
音が。 する。
隣に。
人が。 いる。
眠る。
◇
「アネクシア」
声。
目を。 開ける。
ヴィオラ。
窓。
見たことのある。
屋敷。
「着いたよ」
身体。
同じ。
髪も。
たぶん。 同じ。
ヴィオラも。 いる。
「……おかえり」
ヴィオラが。 言う。
少し。 考える。
前に。
私が。 言った。
言葉。
今度は。
私に。
「……ただいま」
言えた。
知らない家では。
もう。
なかった。




