第78章 揺れる
数日。
長く。 座る。
少しずつ。
最初より。 長く。
できるように。 なった。
暇なのは。 変わらない。
ノアを。 呼ぶことも。 ある。
来ないことも。 ある。
来ると。
だいたい。 邪魔をする。
でも。
暇では。 なくなる。
◇
今日。
先生が。 来た。
いつもの。 椅子ではない。
外。
屋敷の前。
馬車が。 ある。
前に。 見たものより。
近い。
「……乗る?」
「乗る」
先生が。 答える。
少し。 嬉しい。
ヴィオラが。 横から。
「まだ出発しないからね」
分かっている。
「……乗るだけ?」
「今日はね」
今日は。
先生の。 言い方。
覚えた。
◇
馬車に。 近づく。
馬が。 いる。
前に。 見た。
たぶん。 同じ。
「……この馬?」
「違う馬」
違った。
馬の。 区別。
まだ。 分からない。
乗る。
ヴィオラが。 先。
私が。 あと。
手を。 借りる。
段差。
思ったより。 高い。
足を。 上げる。
少し。 難しい。
でも。
乗れた。
中。
椅子。
向かいにも。 椅子。
窓。
「座ってみて」
座る。
昨日までと。 同じ。
ではない。
少し。 硬い。
「どう?」
「……座れます」
「それは見れば分かる」
先生。
ノアみたいなこと。 言う。
◇
先生は。 外。
ヴィオラは。 向かい。
扉が。 閉まる。
「じゃあ、少しだけ動かすよ」
動く。
馬車が。
ゆっくり。
身体が。 後ろに。 引かれる。
「……あ」
ヴィオラが。 笑う。
「目が覚めてからは、初めて?」
「たぶん」
動く。
揺れる。
右。
左。
少し。 上。
下。
座っている。
だけ。
なのに。
身体が。 勝手に。 動く。
足に。 力が入る。
手で。 椅子を。 押さえる。
「どう?」
外から。 先生。
「……揺れます」
「馬車だからね」
知っている。 今。 知った。
◇
屋敷の前を。
少し。
進む。
遠くには。 行かない。
曲がる。
その時。
身体が。 横に。 持っていかれる。
ヴィオラが。 手を伸ばす。
でも。
その前に。
座席を。 掴む。
戻る。
「大丈夫?」
「はい」
言ってから。
考える。
身体。
足。
背中。
少し。 力が。 入っている。
「……まだ」
先生が。 窓から。 見る。
「まだ?」
「大丈夫。です」
少し。 間。
「でも。疲れてきました」
先生が。 頷いた。
「じゃあ戻ろう」
もう?
思う。
でも。
言わない。
戻る。
これも。
練習。
◇
馬車が。 止まる。
降りる。
こっちの方が。 難しい。
地面が。 少し。 遠い。
ヴィオラの。 手。
借りる。
降りる。
立つ。
地面。
動かない。
少し。 変な感じ。
「どうだった?」
先生。
考える。
「座るだけじゃ。なかった」
「そうだね」
「揺れた」
「うん」
「疲れた」
「うん」
それから。
「……面白かった」
先生が。 笑った。
ヴィオラも。 笑う。
「じゃあ、次もできそう?」
「はい」
答える。
先生が。 見る。
分かっている。
「……たぶん」
「よろしい」
◇
馬車を見る。
今日は。
屋敷の前だけ。
故郷には。 近づいていない。
距離は。
たぶん。 何も。 変わっていない。
でも。
昨日まで。
馬車は。 行くために。 必要なものだった。
今日。
乗った。
揺れた。
疲れた。
少し。 面白かった。
知らなかったことが。
また。
一つ。
減った。
故郷は。
まだ。 遠い。
でも。
そこへ行く方法は。
少しずつ。
知らないものでは。
なくなっている。




