第77章 長く座る
次の日。
朝。
目が覚める。
足。
少し。 重い。
昨日。 歩いたから。
痛くは。 ない。
動く。
大丈夫。
たぶん。
起きる。
今日は。
長く。 座る。
らしい。
◇
「……これ?」
椅子。
いつもの。 椅子。
「これ」
先生が。 言う。
知っている。
何度も。 座った。
「座るだけ?」
「座るだけ」
簡単。
「できます」
先生が。 私を見る。
「今のところはね」
今のところ。
少し。 嫌な言い方。
ヴィオラが。 笑っている。
「今日は長く座っていられるかを見るの」
「……どれくらい?」
「時間は気にしなくていいよ」
時計。
ない。
「疲れたり、姿勢がつらくなったら教えて」
「……はい」
座る。
いつもと。 同じ。
何も。 起きない。
◇
先生が。 紙を。 見ている。
ヴィオラは。 本を。 読んでいる。
私も。
座っている。
暇。
「……先生」
「ん?」
「何か。しない?」
「座ってる」
している。 らしい。
「……暇です」
ヴィオラが。 本から。 顔を上げた。
「ノア呼ぶ?」
少し。 考える。
「……呼ぶ」
先生が。 笑った。
◇
ノアが。 来た。
「何してんの?」
「座ってる」
「見れば分かる」
分かる。 らしい。
「訓練」
「座るのが?」
「はい」
ノアが。 先生を見る。
先生が。 頷く。
「長時間の移動に耐えられるか確認してるんだ」
「へえ」
ノアが。 私を見る。
「暇そう」
「暇です」
「だろうな」
同意された。
少し。 嬉しくない。
ノアが。 向かいに。 座る。
「で、何すんの?」
何。
座る。
「……話す?」
「何を?」
分からない。
ヴィオラが。 本を閉じた。
「じゃあ、故郷に行く時の話でもする?」
故郷。
少し。 姿勢が。 戻る。
先生が。 すぐに。 言う。
「座ってるだけだからね」
「……はい」
まだ。 何も。 していない。
◇
「馬車で行くなら、何がいる?」
聞く。
ヴィオラが。 考える。
「まず馬車」
「……それは。知ってる」
ノアが。 笑った。
「あと馬」
「それも。知ってる」
「じゃあ完璧じゃん」
違う。 気がする。
ヴィオラが。 ノアを見る。
「邪魔するなら出ていって」
「俺呼ばれたんだけど?」
呼んだ。
私が。
「……いる」
「ほら」
少し。 得意そう。
ヴィオラが。 ため息を。 ついた。
「移動に必要なものは私が考えるから、アネクシアはまず身体のこと」
「……はい」
「それと、すぐ出発するわけじゃないからね」
知っている。
昨日。
分かった。
「先生が。大丈夫って言ったら」
先生が。 顔を上げる。
「ちゃんと覚えてるね」
覚えている。
条件。
それが。 できれば。
行ける。
◇
少し。
腰が。 重い。
背中も。
座っているだけ。
なのに。
疲れる。
足を。 動かしたくなる。
でも。
まだ。 できる。
昨日と。 同じ。
まだ。
できる。
だから。
「……先生」
「うん」
「少し。疲れました」
先生が。 頷く。
「じゃあ今日はここまで」
ここまで。
「立っていい?」
「ゆっくりね」
立つ。
足に。 力を。 入れる。
少し。
ふらつく。
ノアが。 動く。
でも。
自分で。 立てた。
「大丈夫?」
ヴィオラ。
「……はい」
先生が。 見る。
「今日はね」
今日は。
「これを少しずつ伸ばしていこう」
「はい」
長く。 座る。
昨日より。
少しだけ。 分かった。
歩けることと。
旅ができることは。
違う。
でも。
昨日。
歩く道が。 あると。 知った。
今日。
その道を。 進むために。
必要なことを。 一つ。
知った。
まだ。
行けない。
でも。
行くためのことは。
もう。
始まっている。




