第76章 少し遠く
次の日。
先生が。 来た。
いつもの。 診察。
足。
腕。
立つ。
歩く。
少し。 長く。
前より。 歩ける。
「じゃあ、今日はもう少し先まで行ってみようか」
先。
「……外?」
「外」
庭は。 もう。 外。
でも。
先生が。 言っているのは。
たぶん。
その先。
「屋敷の前までね」
少し。 嬉しい。
「走らない」
まだ。 何も。 していない。
「……走りません」
先生が。 見る。
ヴィオラも。 見る。
「……たぶん」
「そこは言い切って」
◇
玄関。
初めて。
ではない。
ここを。 通ったことは。 ある。
たぶん。
この家に。 来た時。
でも。
覚えていない。
だから。
今は。 初めて。
扉が。 開く。
庭とは。 違う。
道。
塀。
その先にも。 建物。
人。
馬。
音。
世界が。 ある。
知っていた。
外に。 世界があること。
でも。
見るのは。 違う。
一歩。
出る。
もう一歩。
「どう?」
先生が。 聞く。
「……広い」
ヴィオラが。 笑った。
「庭よりはね」
歩く。
屋敷の前。
道までは。 出ない。
先生との。 約束。
まだ。
行かない。
馬が。 一頭。
少し。 離れたところに。 いる。
大きい。
「……馬」
「馬だね」
知っている。
城にも。 いた。
乗ったことは。
ない。
たぶん。
「怖い?」
ヴィオラが。 聞く。
首を。 振る。
怖くは。 ない。
でも。
近くで見ると。
大きい。
馬が。 こっちを。 見る。
私も。 見る。
「……見てる」
「そりゃ見るだろ」
後ろから。 声。
ノア。
いつの間にか。 いる。
「暇?」
「違う」
早い。
◇
少し。 歩いた。
庭より。 長い。
足が。 重くなる。
まだ。 歩ける。
もう少し。
できる。
でも。
止まる。
「……休みます」
先生が。 少し。 驚いた。
ヴィオラも。 少し。 驚いた。
「どうした?」
「疲れる前に」
先生が。 笑った。
「覚えてたんだ」
覚えている。
言われたから。
それに。
行きたい場所が。 ある。
今。
全部。 歩く必要は。 ない。
椅子に。 座る。
足は。 少し。 疲れている。
でも。
痛くは。 ない。
馬が。 また。 見えた。
「……先生」
「ん?」
「どれくらい。歩けたら」
言葉を。 探す。
「行けますか」
先生は。 すぐに。 分かった。
「故郷のこと?」
「はい」
先生が。 ヴィオラを見る。
ヴィオラも。 少し。 考える。
「歩ける距離だけの問題じゃないんだよ」
違う。
「遠い?」
「ここからだと、歩いて行くような距離ではないね」
歩いて。
行けない。
少し。 考える。
「……馬?」
目の前に。 いる。
ヴィオラが。 笑った。
「どうしてそこで馬になるの」
「いるから」
「いるけど」
先生も。 笑っている。
違う。 らしい。
「馬車になると思うよ」
馬車。
知っている。
「ずっと歩くわけじゃない。でも、長く座って移動するのも身体には負担がかかる」
座る。
それなら。
できる。
「できます」
「長く、って言ったよ」
「……できます」
先生が。 見る。
ヴィオラも。 見る。
「……たぶん」
「はい。そこから練習だね」
増えた。
歩く。
休む。
今度は。
長く。 座る。
「それができたら?」
聞く。
先生が。 少し。 考える。
「それだけじゃないけど、一つ進む」
一つ。
また。
一つ。
「……分かりました」
すぐには。 行けない。
でも。
行けない。 ではない。
やることが。 分かった。
それなら。
できる。
休んで。
また。 立つ。
帰りは。
来た時より。 少し。 ゆっくり。
でも。
自分で。 歩く。
玄関を。 通る。
扉が。 閉まる。
今日。
初めて。
庭より。 先を。
見た。
故郷は。
思っていたより。 少し。
遠い。
でも。
道は。
ある。




