第72章 知っていること
「……アウレリス?」
ヴィオラが。
言った。
「第三皇女って……」
少し。
止まる。
「王家の、第三皇女?」
「……はい」
先生が。
私を見る。
「なるほど」
分かった。
らしい。
「いや」
先生が。
すぐに。
言った。
「なるほど、ではないな」
分かって。
いなかった。
少し。
面白い。
「ごめん。ちょっと驚いた」
ヴィオラが。
言う。
先生が。
紙を見る。
「前に、君の家族について確認できていたことはあった。でも、君自身が第三皇女だとは確認できていなかった」
そう。
なのか。
知っていたことと。
今。
分かったこと。
違う。
反応。
やっぱり。
薄くない。
先生が。
紙を見る。
「名前を口にして、何か新しく思い出したことはある?」
「……ないです」
名前は。
ずっと。
知っていた。
忘れて。
いない。
「では、順番にいこう」
順番。
壊れている。
「一番古く覚えているところからでいい」
お母様。
お姉様。
城。
エマ。
レティシア。
たくさん。
「……あの日?」
「うん。まずはそこから」
城。
炎。
音。
人。
「……城に、いました」
「誰と?」
「……エマ」
「エマ?」
「侍女、です」
先生が。
書く。
音。
揺れた。
走った。
炎。
違う。
炎は。
その後。
たぶん。
「……分からない」
先生の。
手が。
止まる。
「何が?」
「順番」
音がして。
人がいて。
走って。
「エマが、いて」
その先。
動かない。
「……死にました」
先生は。
何も。
言わない。
書く。
「レティシアも」
また。
書く。
「お母様は、その前に」
「その日より前?」
「……はい」
お母様は。
あの日では。
ない。
「そうか」
先生が。
書く。
それだけ。
少し。
楽。
「他には?」
「姉が、います」
ヴィオラが。
少し。
動いた。
「お姉さん?」
「……はい」
先生が。
聞く。
「その人は、あの日どうしていた?」
お姉様。
手。
見つけた。
「……会いました」
「城で?」
「たぶん」
たぶん。
また。
使った。
でも。
今度は。
便利だからでは。
ない。
本当に。
分からない。
「手を、掴んで」
その先。
何か。
いた。
サウラ。
声。
約束。
身体。
銀。
「姉が、いなくなりました」
先生の。
目が。
少し。
細くなる。
「どうやって?」
「……分かりません」
見ていた。
はず。
でも。
そこだけ。
切れている。
「手を掴んで。いたのに。いなくなった」
ヴィオラが。
何か。
考えている。
でも。
言わない。
「その後は?」
「……覚えて、ない」
先生が。
頷く。
「今ので十分だよ」
十分。
でも。
「でも」
まだ。
ある。
知っていること。
言っていないこと。
「全部では、ないです」
先生が。
待つ。
急かさない。
胸に。
手を。
置く。
ここ。
いる。
今は。
寝ている。
たぶん。
「もう一人、います」
先生と。
ヴィオラが。
私を見る。
「もう一人?」
「はい」
どう。
言えばいい。
サウラ。
私の中に。
いる。
説明。
難しい。
でも。
知っていることを。
話す。
そう。
決めた。
「名前は、サウラ」
口にする。
返事は。
ない。
やっぱり。
寝ている。
「私の中に、います」
今度は。
二人とも。
ちゃんと。
反応が。
薄くなかった。




