第65章 弟
庭。
昨日より。 少し。 歩く。
ノアが。 いる。
前を。 歩く。
少し。 先。
振り返る。
また。 歩く。
振り返る。
「別に気になってないから」
別に。
昨日も。 聞いた。
便利な。 言葉。
「……べつに」
ノアが。 止まる。
「それ、俺の真似?」
二回。
「絶対そうだろ」
ヴィオラが。 笑う。
「変な言葉を教えないの」
「俺のせい?」
また。
別に。
便利な言葉。
◇
ノアは。 私を。 知っていた。
眠っていた。 私。
私は。 ノアを。 知らなかった。
前なら。
少し。 嫌だった。
今は。
知ればいい。
「……ノア」
「ん?」
「……ヴィオラ」
「なあに?」
「……ミーナ」
ノアが。 少し。 笑う。
「覚えたんだ」
一回。
知らない人が。 減っていく。
少しずつ。
「じゃあ俺は?」
「……ノア」
「姉さんは?」
「……ヴィオラ」
「ミーナは?」
「……ミーナ」
「じゃあ俺は?」
また。
「……ノア」
「よし」
何が。 よし。
ヴィオラが。 笑っている。
私も。 少し。 笑う。
ノアが。 見る。
「なんか」
何。
「普通だな」
普通。
ヴィオラが。 言う。
「そうだよ」
私は。
普通。
よく。 分からない。
でも。
嫌じゃない。
◇
帰る。
ノアが。 聞く。
「明日も来る?」
庭。
一回。
「俺も来る」
そう。
「暇だからじゃないぞ」
聞いていない。
「その顔やめろよ」
何も。 していない。
たぶん。
でも。
たぶん。
明日も。 いる。
また。
明日。
一つ。 増えた。




