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第三皇女の約束  作者: トカゲ


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第60章 返事

先生は。


昼前に。


来た。


いつもより。


遅い。


らしい。


時間は。


分からない。


でも。


ヴィオラが。


そう言っていた。


先生が。


身体を。


確認する。


右手。


人差し指。


動かす。


「昨日よりいいね」


一回。


「他の指は?」


動かしていない。


二回。


「動かしてない?」


一回。


先生が。


少し驚いた。


なぜ。


「ちゃんと言うこと聞いたんだね」


一回。


当然。


ヴィオラを見る。


ヴィオラが。


笑っている。


「えらいもんね」


そう。


えらい。


先生が。


首を傾げた。


「何の話?」


秘密。


たぶん。


診察が。


終わる。


先生が。


道具を。


片づける。


ヴィオラが。


机を見る。


紙。


朝の。


文字。


まだ。


ある。


「先生」


先生が。


振り返る。


「聞きたいことがあるみたいで」


先生が。


アネクシアを見る。


「聞きたいこと?」


一回。


ある。


ヴィオラが。


紙を持ってくる。


ここ。


わたし。


からだ。


かみ。


家族。


先生が。


読む。


家族。


そこで。


止まった。


また。


同じ。


ヴィオラと。


同じ。


顔。


少しだけ。


違う。


何かを。


考える顔。


「家族のことが、聞きたい?」


一回。


「そうか」


先生が。


椅子を。


借りる。


ヴィオラの。


隣。


座る。


話す。


のだろうか。


待つ。


先生は。


すぐには。


話さなかった。


「まず」


やっと。


口を開く。


「君の身体について、話してもいいかな」


身体。


家族。


ではない。


でも。


知りたい。


一回。


「長く眠っていた人は、目を覚ましても、すぐには身体が元通りにはならないことがある」


長く。


眠っていた。


長く。


どれくらい。


聞きたい。


でも。


先生は。


続ける。


「今、指が少し動くようになっている」


一回。


「口も、昨日より動いている」


一回。


「ちゃんと良くなってる」


良く。


なっている。


「だから、焦らなくていい」


また。


それ。


「時間はかかるかもしれないけど」


時間。


「少しずつ、できることを増やしていこう」


一回。


分かった。


でも。


知りたいのは。


それだけではない。


先生を見る。


一回。


「まだ聞きたい?」


一回。


当然。


先生が。


少し。


笑った。


「そうだよね」


紙を見る。


家族。


「これについては」


止まる。


「今の君に、一度に全部話すのはよくないと思ってる」


よくない。


なぜ。


「身体だけじゃなくて、頭もまだ疲れやすい」


そうなのか。


「目を覚ましたばかりだからね」


ばかり。


どれくらい。


眠っていた。


また。


そこに。


戻る。


先生は。


知らない。


のだろうか。


違う。


たぶん。


知っている。


ヴィオラも。


先生も。


知っている。


私だけ。


知らない。


少し。


嫌だった。


アネクシアは。


先生を見る。


二回。


先生が。


困る。


「今のは?」


違う。


そう言いたい。


何が。


違う。


全部。


話さなくていい。


でも。


何も。


話さないのも。


嫌。


伝えられない。


困る。


紙。


見る。


文字。


ヴィオラ。


見る。


ヴィオラが。


気づいた。


「紙?」


一回。


「書いてほしい?」


一回。


ヴィオラが。


鉛筆を取る。


「何を?」


それが。


言えない。


困る。


先生が。


少し考える。


「質問を、分けようか」


一回。


それ。


「家族がいるか?」


違う。


知っている。


二回。


「家族が無事か?」

止まる。

あの日。

城。

炎。

動かなくなった人。

お姉様の手。

その先は。

ところどころ。

抜けている。

順番も。

曖昧だった。

全部を。

覚えているわけではない。

それでも。

知りたい。

あの日のあと。

みんなが。

どうなったのか。

一回。

先生も。

止まった。


部屋が。


静かになる。


知っている。


その顔。


良くない。


答え。


なのかもしれない。


でも。


聞く。


先生が。


ゆっくり。


言った。


「全員について、私は答えられない」


全員。


「私が確認できている人もいる」


いる。


「確認できていない人もいる」


分からない。


だけ。


死んだ。


とは。


言っていない。


「だから」


先生が。


こちらを見る。


「今ここで、誰がどうなったと、私から決めつけて話すことはできない」


一回。


分かった。


正しい。


たぶん。


でも。


欲しい答えでは。


なかった。


ヴィオラが。


紙に。


書く。


――家族。

その横。

――まだ、わからないことがある。

髪と。

似ている。

でも。

違う。

髪は。

理由が。

分からない。

家族は。

分かっていることと。

分からないことが。

ある。


同じ。


分からない。


なのに。


全然。


違う。


「ごめんね」


先生が。


言った。


二回。


謝らなくて。


いい。


先生が。


少し。


息を吐く。


「でも」


何。


「君がもう少し話せるようになったら」


話せる。


「君が覚えていることも聞かせてほしい」


覚えている。


あの日。


「それから、一緒に整理しよう」


一緒に。


整理。


一回。


それなら。


いい。


先生が。


立つ。


「今日はここまで」


また。


終わり。


聞けた。


でも。


分からない。


先生が。


帰る。


ヴィオラが。


残る。


紙も。


残る。


――家族。

――まだ、わからないことがある。

アネクシアは。

その文字を見る。

あの日のあと。

みんなが。

どうなったのか。

分かっていることも。

分からないことも。

ある。

今は。

それが。

分かった。


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