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第三皇女の約束  作者: トカゲ


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第59章 文字

朝。


目を開ける。


白い天井。


窓から。


光。


右手。


人差し指。


動かす。


少し。


動く。


昨日より。


楽。


でも。


一回だけ。


やめる。


えらい。


これは。


もう。


間違いない。


扉が。


開いた。


ヴィオラ。


「おはよう」


一回。


ヴィオラが。


笑う。


「今日も早いね」


今日も。


らしい。


ヴィオラが。


いつもの椅子に。


座る。


「指、動かした?」


一回。


「何回?」


何回。


困る。


一回。


「一回?」


一回。


ヴィオラが。


少し驚いた。


「ほんとに?」


一回。


信用。


されていない。


なぜ。


「昨日、先生に止められてたから?」


一回。


「……えらい」


そう。


えらい。


知っている。


ヴィオラが。


笑った。


それから。


水を。


飲ませてもらう。


少しずつ。


喉を。


通る。


終わる。


「今日は先生、少し遅いんだって」


そう。


なのか。


「暇?」


一回。


暇。


とても。


ヴィオラが。


考える。


「何かする?」


一回。


何か。


できるのだろうか。


ヴィオラが。


部屋を。


見回す。


机。


鏡。


窓。


それから。


何かを。


見つけた。


「あ」


何。


ヴィオラが。


立つ。


机へ。


行く。


紙。


持ってきた。


それから。


細い。


棒。


違う。


鉛筆。


「これ」


紙を。


見せる。


「書けるかな」


文字。


書く。


人差し指しか。


動かない。


無理。


たぶん。


二回。


「だよね」


ヴィオラが。


紙を見る。


少し。


考える。


「じゃあ」


紙を。


机に置く。


鉛筆も。


置く。


何。


ヴィオラが。


こちらへ。


戻ってくる。


「私が書く」


なるほど。


「聞きたいこと、あるんでしょ?」


一回。


ある。


たくさん。


「昨日も、何か言いたそうだったし」


そう。


「私が文字を書いて」


ヴィオラが。


自分の指を。


動かす。


「合ってたら一回」


「違ったら二回」


なるほど。


できる。


一回。


「よし」


ヴィオラが。


机へ。


戻る。


紙に。


何かを書く。


こちらからは。


見えない。


「まず」


紙を。


持ってくる。


大きな文字。


――ここ。


「ここは、もう分かったよね?」


一回。


分かった。


ヴィオラの家。


客室。


紙に。


線を引く。


次。


――わたし。


「私のことも?」


一回。


ヴィオラ。


アークス。


知っている。


また。


線。


次。


ヴィオラが。


鉛筆を止める。


少し。


考える。


書く。


紙を。


見せる。


――からだ。


身体。


一回。


知りたい。


「身体のこと?」


一回。


「どうして動かないのか?」


一回。


それも。


知りたい。


ヴィオラが。


少し。


困る。


「それは、先生の方が分かると思う」


そう。


なのか。


「あとで聞いてみよう」


一回。


紙に。


何か。


書き足す。


先生。


強い。


でも。


聞いてくれる。


次。


ヴィオラが。


考える。


――かみ。


一回。


「髪はこの前聞いたね」


一回。


分からなかった。


ヴィオラが。


紙に。


小さく。


何かを書く。


読めない。


見たい。


目を。


動かす。


「見たい?」


一回。


紙を。


近くへ。


持ってきてくれる。


文字。


読める。


ここ。


わたし。


からだ。


かみ。


その横に。


小さな文字。


わからない。


髪。


分からない。


その通り。


「他は?」


ある。


ヴィオラを見る。


一回。


「まだある?」


一回。


たくさん。


「じゃあ……」


ヴィオラが。


また。


机へ。


戻る。


何を書く。


だろう。


待つ。


紙を。


持ってくる。


――家族。


止まった。


見る。


文字。


家族。


お父様。


お姉様。


レティシアお姉様。


エマ。


クロイツェルの。


みんな。


あの日。


城。


火。


声。


ヴィオラを見る。


一回。


「家族のこと、聞きたい?」


一回。


聞きたい。


ずっと。


聞きたかった。


ヴィオラの。


顔から。


少し。


笑顔が。


消えた。


何。


「……そっか」


ヴィオラが。


紙を見る。


「そうだよね」


何。


知っている。


のだろうか。


聞きたい。


一回。


瞬きをする。


ヴィオラが。


こちらを見る。


「聞きたい?」


一回。


「今?」


一回。


今。


ヴィオラが。


黙る。


少し。


長い。


やがて。


首を。


横に振った。


「ごめん」


どうして。


「私からは、話せない」


話せない。


知らない。


ではなく。


話せない。


ヴィオラは。


紙を。


膝の上に置いた。


「先生が来たら」


少し。


間を置く。


「聞いてみよう」


先生。


また。


先生。


でも。


さっきとは。


違う。


ヴィオラは。


知っている。


何かを。


でも。


言わない。


なぜ。


聞けない。


声が。


出ない。


文字も。


書けない。


また。


増えた。


質問。


ヴィオラが。


紙を。


机に戻す。


「ごめんね」


二回。


違う。


ヴィオラを見る。


「……怒ってない?」


一回。


怒ってない。


困っては。


いる。


とても。


でも。


ヴィオラが。


困っているのも。


分かる。


少し。


静かになる。


窓から。


光。


白い天井。


ヴィオラ。


いつもの。


場所。


紙は。


机の上。


文字なら。


聞ける。


そう思った。


でも。


文字でも。


答えられないことは。


あるらしい。


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