第58章 声
次の日。
目を開ける。
白い天井。
もう。
驚かない。
窓から。
光が。
入っている。
ヴィオラは。
まだ。
いない。
右手。
意識する。
人差し指。
動かす。
少し。
動いた。
昨日より。
分かる。
もう一度。
動かす。
動いた。
嬉しい。
でも。
やめる。
昨日。
止められた。
先生に。
怒られるのは。
ヴィオラ。
だった。
まだ。
いないけど。
やめておく。
えらい。
たぶん。
口。
今度は。
そっち。
昨日。
少し。
動く気がした。
舌。
動かす。
動く。
少し。
唇。
動け。
何も。
起きない。
もう一度。
ほんの少し。
動いた。
気がする。
声。
出せるだろうか。
息を。
吐く。
空気が。
喉を通る。
「あ」
出ない。
音に。
ならない。
もう一度。
「あ」
空気だけ。
出る。
難しい。
何度か。
やる。
何も。
出ない。
喉が。
少し。
疲れた。
やめる。
扉が。
開いた。
ヴィオラ。
「おはよう」
一回。
「今日は早いね」
何が。
「起きるの」
そうなのか。
時間が。
分からない。
ヴィオラが。
椅子に座る。
いつもの。
場所。
もう。
いつもの。
になっている。
「指は?」
聞かれた。
一回。
動く。
「動いた?」
一回。
「見せて」
右手が。
布団から出る。
人差し指。
動かす。
昨日より。
少しだけ。
大きく。
動いた。
「ほんとだ」
ヴィオラが。
笑った。
「先生が来るまで、それ以上は禁止ね」
一回。
知っている。
「……素直」
そうだろうか。
ヴィオラが。
こちらを見る。
「他は?」
他。
口。
伝えたい。
目を。
自分の口へ。
向けようとする。
見えない。
当然。
ヴィオラを見る。
口。
動け。
少し。
唇を。
動かす。
「口?」
一回。
通じた。
「動くようになった?」
一回。
少し。
「声は?」
二回。
まだ。
ヴィオラが。
少し考える。
「出そうとした?」
一回。
「喉は痛い?」
二回。
「無理した?」
二回。
してない。
たぶん。
ヴィオラが。
じっと。
見る。
何。
「本当に?」
一回。
本当。
たぶん。
「……まあ、いいけど」
信用が。
ない。
なぜ。
「先生に聞いてからね」
一回。
また。
先生。
強い。
少しして。
先生が。
来た。
指を。
見る。
口を。
見る。
喉を。
見る。
いくつか。
確認する。
「声を出そうとしたんだって?」
一回。
ヴィオラ。
言ったな。
ヴィオラを見る。
目が合う。
少し。
笑っている。
「まだ、無理に出さなくていい」
一回。
「でも」
先生が。
言う。
「少しずつなら、練習してみようか」
一回。
やる。
「まずは息だけ」
息を。
吐く。
「そう」
もう一度。
「次は、口を開けて」
少し。
開く。
前より。
動く。
「そのまま、声を出そうとしなくていいから」
声を。
出さない。
息だけ。
何度か。
繰り返す。
「じゃあ、一度だけ」
先生が。
言った。
「声を出してみよう」
息を。
吸う。
喉。
口。
声。
「あ」
空気。
だけ。
だった。
もう一度。
やりたい。
先生を見る。
「一度だけって言ったでしょう」
む。
ヴィオラが。
笑った。
「先生、強いでしょ」
一回。
強い。
「今日はここまで」
先生が。
言う。
終わり。
まだ。
できるのに。
でも。
ヴィオラが。
怒られる。
たぶん。
我慢する。
先生が。
帰る。
また。
二人。
ヴィオラが。
椅子に座る。
「声、出したい?」
一回。
出したい。
聞きたいことが。
たくさん。
ある。
「そっか」
ヴィオラは。
少し考えた。
「じゃあ、最初に何て言うのかな」
最初。
声が。
出たら。
何を。
言う。
ここは。
どこ。
あなたは。
誰。
それは。
もう。
知っている。
髪。
どうして。
それは。
ヴィオラも。
知らない。
どれくらい。
寝ていた。
それは。
知りたい。
みんなは。
どこ。
それも。
知りたい。
サウラ。
起きて。
それは。
声に出しても。
たぶん。
聞こえない。
考える。
たくさん。
ある。
ヴィオラが。
待っている。
答えられないのに。
待っている。
最初に。
言いたいこと。
アネクシアは。
ヴィオラを見る。
一回。
「決まった?」
二回。
まだ。
分からない。
ヴィオラが。
笑った。
「じゃあ、ゆっくり考えて」
一回。
ゆっくり。
考える。
声が。
出るまでには。
まだ。
時間が。
ありそうだった。




