第56章 鏡
先生が。
来た。
右手。
人差し指。
見せる。
動かす。
少し。
先生が。
頷いた。
「いいね」
いい。
「でも、まだ他の指は動かさなくていい」
そうなのか。
「身体は、急には戻らないから」
戻る。
その言葉に。
少し。
安心した。
戻るなら。
いい。
先生が。
帰る。
ヴィオラが。
残る。
いつもの。
椅子。
少しして。
ヴィオラが。
こちらを見る。
「自分の顔、見たい?」
顔。
一回。
見たい。
ヴィオラが。
立つ。
「ちょっと待ってね」
部屋を。
出る。
戻ってくる。
手に。
小さな。
鏡。
「起こすよ」
一回。
頭と。
肩を。
支えられる。
ゆっくり。
身体が。
起きる。
鏡が。
見える。
誰。
知らない。
女の子が。
いた。
銀色の。
髪。
紫色の。
目。
見ている。
私を。
違う。
鏡。
だから。
私。
顔は。
知っている。
ような。
気がする。
でも。
知らない。
いや。
違う。
私。
だった。
少し。
大人びている。
気がする。
でも。
髪。
違う。
銀色。
黒かった。
はず。
目は。
紫。
同じ。
銀色。
紫。
どこかで。
見た。
未来。
銀色。
紫。
女の子。
――。
あ。
あの子。
未来で。
見た。
サウラと。
話していた。
女の子。
私。
だった。
サウラ。
返事は。
ない。
こういう時くらい。
起きてほしい。
鏡を見る。
銀色の髪。
紫の目。
知らない。
でも。
私。
ヴィオラが。
何も言わず。
鏡を。
持っている。
鏡の中で。
その少女が。
瞬きをした。
私も。
瞬きをした。
知らない少女は。
私だった。




