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第三皇女の約束  作者: トカゲ


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第12章 兄弟たちの将来

数日後。


 アネクシアはエマを連れて、クロイツェル家を訪れていた。


「今日は負けないよ」


「前回も同じことを仰っていましたね」


 クラウスが盤を用意しながら言う。


「今日は作戦があるの」


「聞かない方がよさそうですね」


「聞いても教えないよ?」


「では、やはり聞かなくて正解です」


 向かいではテオドールが笑い、ユリウスは呆れたように息をついていた。


 ゲームが始まってしばらくした頃。


 アネクシアは盤面を見ながら、ふと思いついたように尋ねた。


「三人とも、大きくなったら何するの?」


 三兄弟の手が止まる。


「急ですね」


 クラウスが言った。


「だって、みんな勉強してるから」


 アネクシアはユリウスを見る。


「ユリウスは?」


「私は長男ですから」


「長男だと?」


「いずれ家を継ぐことになります」


「決まってるの?」


「おおむねは」


「やりたい?」


 今度はユリウスが少しだけ考えた。


「そうですね」


 すぐには答えなかった。


「一度も、別の道を考えたことがないと言えば嘘になります」


「あるんだ」


「ありますよ」


 ユリウスは盤上の駒を一つ動かした。


「ですが、大変かどうかで決めることではありません」


「ふうん」


 アネクシアには、まだよく分からなかった。


 次にクラウスを見る。


「クラウスは?」


「私はまだ決めていません」


「宰相になるんじゃないの?」


「誰がそのようなことを?」


「なんとなく」


「なんとなくで国の役職を決めないでください」


 テオドールが吹き出した。


「でも似合いそう」


「褒められている気がしませんね」


 クラウスは苦笑する。


「私は、何になるかより、何をするべきかを考えたいと思っています」


「違うの?」


「似ているようで、少し違います」


「難しい」


「そうでしょうね」


 クラウスは盤面へ目を落とした。


「ですが、正しい答えが見つかるまで、世界が待ってくれるとは限りませんから」


 アネクシアは首を傾げる。


 やっぱり難しい。


「じゃあテオドールは?」


「僕?」


「うん」


「兄上たちが難しい顔をしていたら、横で笑う係かな」


「それ仕事?」


「重要だよ」


「では、まず自分の勉強をしてください」


 クラウスが言う。


「ほら。もう難しい顔してる」


「あなたのせいです」


 アネクシアは笑った。


「じゃあ私も手伝う」


「何を?」


「ゲーム」


「それは助かるなあ」


「助けないでください」


 いつものように笑い声が広がった。


 夕方。


 アネクシアが帰ったあと、三兄弟はしばらく同じ部屋に残っていた。


「兄上、本当に家を継ぐの嫌じゃないの?」


 テオドールが尋ねる。


「嫌だとは言っていない」


「でも別の道は考えたことあるんでしょ?」


「誰にでもあるだろう」


 ユリウスは淡々と答えた。


「クラウスは?」


「私は先ほど答えました」


「決めてない?」


「ええ」


 テオドールは椅子の背にもたれた。


「ずっと今みたいだったら、楽なんだけどね」


 ユリウスが家を継ぎ。


 クラウスが本を読み。


 自分が二人をからかい。


 時々、小さな皇女が遊びに来る。


 そんな未来なら。


「何を笑っているんです?」


「別に」


 まだ決める必要はない。


 少なくとも今は、そう思っていた。

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