↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第三皇女の約束  作者: トカゲ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/101

第11章 いつもの勉強

誕生日が終わった翌朝。


「今日からまた普通の日だね」


 朝食を終えたアネクシアが言うと、エマはいつもの顔で頷いた。


「はい。ですので、まずはお勉強でございます」


「普通の日って、もっと楽しいものじゃないの?」


「昨日が特別だったのでございます」


「毎日誕生日ならいいのに」


「一年で百歳ほどお年を召されますが」


「それは困る」


 そんな会話をしながら、アネクシアは勉強部屋へ向かった。


 今日は国の税についての授業だった。


 机の上には、領地ごとの収入や税率について簡単にまとめられた資料が置かれている。


 そして今日は、珍しくレティシアも一緒だった。


「レティシアお姉ちゃんも勉強?」


「私は復習よ」


「じゃあ分からなかったら聞いていい?」


「もちろん」


 教師が説明を始める。


 農地から集められる税。

 市場で取られる税。

 領地によって違う収入。


 アネクシアはしばらく黙って聞いていた。


 そして、やはり手を挙げた。


「これ、誰が決めるの?」


「基本となる方針は国が定めます。ただし、細かな部分については各地の事情も考慮されます」


「じゃあ、みんな意見が違ったら?」


 教師が少し考える。


「その場合は、それぞれの立場から意見を出し、調整することになります」


「誰が?」


「最終的には陛下のお考えも必要になりますが、その前に多くの者が話し合います」


「ふうん」


 アネクシアは資料へ目を落とした。


「じゃあ、お父様が全部決めてるわけじゃないんだ」


「もちろんでございます」


「でも最後はお父様?」


「場合によります」


「難しいね」


 教師が少し笑った。


「その疑問を持たれること自体が、殿下のお年では大変立派なことでございます」


「そう?」


「はい」


 アネクシアは首を傾げたあと、隣を見る。


「でも、レティシアお姉ちゃんのほうが詳しいよ?」


 突然名前を出され、レティシアが瞬きをした。


「私?」


「うん。この前も税の話してたし」


「それは……勉強しているもの」


「じゃあ、分からなくなったらお姉ちゃんにも聞けるね」


 アネクシアは嬉しそうに笑った。


 レティシアも笑う。


「いつでも聞きなさい」


 いつもと同じ声だった。


 授業が終わり、昼食の時間になる。


 今日は父の席が空いていた。


「陛下は本日もこちらにはいらっしゃいません」


 給仕の一人が告げた。


「また?」


 アネクシアが父の空いた席を見る。


 昨日も、夕食に少し遅れてきた。


「お仕事?」


「ええ。本日もお忙しいようです」


「最近ずっとだね」


「そうですね」


 アネクシアは少しだけ空いた席を眺めた。


 けれど、すぐに食事へ戻った。


 父が仕事で食事に来られないことなど、これまでにもあったからだ。


 午後。


 アネクシアはエマと盤上遊戯をしていた。


「そこ」


「本当によろしいのですか?」


「……待って」


「もう置かれました」


「今のなし」


「なりません」


「エマは厳しい」


「侍女でございますので」


「関係ある?」


「ございます」


 たぶんない。


 アネクシアは盤面を睨んだ。


 昨日までと変わらない部屋。

 いつものエマ。

 いつもの遊び。


 そんな日々は、まだ何も変わっていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。