第88話 「動き方」
「──ふむ、懐かしい」
茶を飲みつつ、まだ咲いていない桜を見る。
「夢を見るのは久方ぶりじゃな…?」
そう言っていると町の老人が歩いてくる。
「クミホ様、今日は涼しいですな。」
「うむ。今宵は少し、風が強くなるやもしれぬな…」
桜の木を見ながら湯呑を傾ける。
──。
結局、あの後授業は受けれず、そのまま次の日の朝になっていた。
「うぅ…今までお師匠様に言われてたけど…あんなに魔力が無いんですね私…」
そう言いながら毎朝のお茶をズズっと皆さんと一緒に飲む。
「まさかたった一発で倒れる思わんよ。肝冷えたわほんまに。」
「…練習…するの?先生付きだけど。」
「一応はしようかなと。何もできないのは嫌なので」
グイっと飲みつつクローディアさんが口を開く
「って言っても、また聞いた通りの調子だったら倒れるでしょ。」
「ま、まぁそのための先生の監視ですから」
苦笑しつつキナコにもお水をあげる。
キナコはお水を飲みつつ、種をカリカリと食べていく。
「…セリア。なんで、光った時は魔法連発を?」
「あれですか?私は何もしてないというか…」
「「「は?」」」
私が首を傾げると更に「…は??」と首を傾げられた。
「待ち待ち待ち。え、氷の盾とかなんか地面陥没させて移動とか丸太飛ばすとかめっちゃしてたやん!?」
「戦略級魔法の天の剣を花に変えたのはなんですの?」
「あれも私は知らないですね…?キナコが巾着袋から取り出したのをカリカリしていましたが」
そう言うとみんなの視線が机上で食べているキナコを見る。
「と、いう事は…。セリアの周りがしていましたの?」
「…周り?」
そう言いつつキナコを見ると首を傾げる。
──。
その頃。
「クソが…ッ!」
ドガァンッ!!
拳に炎を乗せて訓練所の壁に叩き込むと爆炎と埃が舞う。
「…ッ。」
SランクがAランクに負けた。しかもタイマンで。
その噂はすぐに広がった。
当然だ。中継が繋がりリアルタイムで視聴されていたんだから。
その日を境にヴァルザードは荒れていた。
粗雑な態度が表立って出る程に、周りのやつらが離れる。
戦略級の契約獣の縛り。狭い所での戦闘では一切使えない。
それでも勝てると思った結果を見てみれば対抗戦での敗北。
それらは尾ひれを付けて色々と掲示板に記述されていた。
「Sランクのヴァルザード。口だけかよ」
「Aランクに負けるのだっさ」
「俺様系なのに女に負けるとか無いわ」
全て匿名で追跡できない奴らの大量の誹謗中傷。
その背後では逆に4組が相当うなぎ上りで評価されていた。さらに言えばGランクのセリアにでさえ、多少の固定ファンらしきコメントが散見されていた。
Sランクなのに、負けた事でこの低下。
ランク自体は変動していないが屈辱でしかなかった。
殴った場所からバラバラと破片が崩れていく。
「荒れてるな?ヴァルザード」
「──。何の用だレオニダス。ぶっ殺すぞテメェ」
「急に嚙みついてくんな。」
横目に見てから舌打ちして歩いていく。
「ダンジョン遠征来るのか?」
「…行くに決まってんだろ。じゃねぇと舐められるだろうが」
「ならエレアと会うと良い。アイツも色々と引っ掛かっているからな」
「あ?」
対面して実際に叩き伏せられた相手だ。プライドも相まって素直にはいそうですかとはならなかった。
「まぁ行けばわかる。今相当状況が動いてるからな。俺自身もだいぶ面白い事になってるなって思えるくらいだからな?」
「…くっだらねぇ。俺は群れねぇからな」
そう言いつつ歩いていく。
「ははっ、ありゃ相当荒れてんなぁ」
そう言いつつレオニダスは軽く壊れた所を見てから訓練場を後にする。
──。
真夜中。深夜。
人々が眠り、明日の日差しを待つ最中、並木の中で一塊の集団がいた。
「ぷーっ!」「ふふんっ」
「ぴぃっぴ」「ふるふる」「きゅーっ」
ポヨン、アシス、メロデ、フラワ、ヒヤンはそわそわとしていた。
森の中、5匹で集まって色々と会議するように…そして、その場にキナコがおり、両手を大きく広げていた。
「キッキッキッ!チチチッ!」
数分の間そうやって色々と言い合っているような姿があった──。




