第87話 「セリアという少女」
ヴェインはセリアの調べた身体情報を見ていた。
「…魔力欠乏症だな。」
その様子をルーテリア、ルイネ、ミィ、エルマが聞いていた。
そして何故かキナコは何時もいるのにポヨン、アシス、メロデ、フラワ、ヒヤンはいた。
「…だが変だな。気絶しているのになんでこいつらがいるんだ…?」
ベッドの周りに群がって乗っかったりしていた。
「んでだ、なんでおとぎ話みたいに──」
「ヴェイン先生。総量はGランクを基準とした場合、どれほどかわかりませんの?」
ルーテリアの質問に肩を竦める。
「予想確認されてる時点で大体1%がGランクだ。データ自体は少ないが…」
セリアの方を見つつコーヒーを飲む。
「…それ以下。皆無に等しい」
「…はい?」
「えっ、皆無って無いとかいう…?」
「あぁ、状況から考えれば打倒だ。」
カルテを置きつつ椅子に座る。
「魔法一発、レベル1にも満たない魔法を使って倒れるんだ。Gランク以下の魔力と仮定するしかない」
「あ、あの…それならなんでキナコちゃんたちはずっと…?」
ヴェインは腕を組みつつ「引っ掛かるのはそこだ」と言いつつ見る。
本来契約獣を扱う時、多少の魔力を消費して使役する。
その為、使役者が気絶すればすぐ粒子化して消え、元に戻るはず…なのだが。
「…ピンピンしてるな。自立してるというかなんというか」
それぞれがセリアの上で遊んだり寛いだり顔をのぞき込んだりと、まるでおとぎ話の姫のような状態になっている。
「まぁともかく、あんまり酷使はしない方が良い」
「でもそれやと、ダンジョン遠征とかだいぶ辛いよな…」
「…ん。それの為に練習してた」
「まぁどうであれ、セリア本人が使うのはやめた方が良いだろうな」
一行が頷いていると「入るぞ」と言いつつローレファルスが来る。
「来たか。」
そう言いながらパッとカルテを見せる。
「──ルーテリア、どういう指示をしたんだ?」
「以前から詠唱無しで種火を使用していたのを思い出しましたの」
「は…?まさかあれからあれ以外使っていないのか?」
「えぇ。魔導焜炉に着火する時の火だけですわ」
コトッとコーヒーを置きつつ「よく生きて来れたな…」とヴェインも言う。
「んー…まぁ、魔法が扱えるというのはわかったが…推定G以下か…」
「そうなんです。やからうちら、せめて自己防衛おもてやったんやけど…」
「…火が弾けて花みたいにする程度で、すぐ倒れた」
「…まぁ本人に確認しながらになるな。とりあえず」
そう言って踵を返して扉の方へ行く。
「セリアに魔法の独自使用は極力させない方向にした方が良いだろう」
ローレファルスは「起きたら説明しておいてくれ」とヴェインに託して歩いていく。
「──説明ねぇ。」
ふとヴェインが見るといつの間にか周りの契約獣たちまでセリアにもたれて寝たりしていた。
──。
夢を見ていた。
桜の綺麗な道すがら、ぽつりぽつりと灯って照らす火が。
「…綺麗」
私は歩いて並木の間を風景を楽しむようにして一歩、また一歩と踏みしめていた。
少し歩くと小山があり、そこにまで並木が繋がっており…大きな桜の木が頂上に聳え立っていた。
「…好きか?ここは」
誰かに言われる。私の知っているような声。
「すごく。…好き」
「そうか。なら桜を植えよう。この大きな木のように育つ、”セリア”を」
「…セリア…」
私の名前、お母さん、お父さんが……そして…誰かが付けてくれた…名前。
「…ねぇ、この桜。すごくあったかい」
小さな手で幹に触れて、それがすごく心地良くて、手の感触が、幸せを運ぶようなそんな雰囲気があった。
「セリアはね。優しい、暖かな存在。きっと、満開になれるよ」
「…うん。満開になる」
私はそう言って顔を見る。
綺麗な人。すごくすごく綺麗。でも、顔は思い出せない。
白い存在、暖かくて、何かを預けれると思う存在。
「──セリア。辛くても、苦しくても、一生懸命に。」
満開なれ──。
「お師匠様っ──!」
ビクッと起きると何かが乗っかる重みがあると同時に覗き込むキナコの姿があった。
「…キナコ、皆…?」
ポヨン、アシス、メロデ、ヒヤン、フラワも覗き込んで撫で来たので始めるとルイネさんの声が聞こえる。
「セリア起きたんか?!」
「え、皆さん…!?」
外を見れば暗くなっており、ルイネさんお後ろをヴェイン先生とルーテリアさん、ミィさん、エルマさん、クローディアさんが居た。
「めっちゃ心配したんやで!大丈夫なんかいな!?」
「はっはい。もうだるさもなく大丈夫です?」
「──5時間か。ガッツリ寝たな?」
時計を見てからヴェイン先生が言う。
「あの…なんで私…?」
「あんたが炎輪使ってぶっ倒れたんよ」
「あぁ…それで…」
段々と記憶が戻って来た。確かに輪っかの火を作って投げた後に記憶が飛んでいた。
「それと、ローレファルスから通達だ。セリア・レイン。魔法使用は講師がいる時以外は種火のみで何とかしてほしい、だそうだ」
「わ、わかりました」
私がそう言いつつ皆を撫でるとそれぞれが喜んで一鳴きする。




