第81話 「安らぐ場所」
あれから何度もエルマさんの特訓に付き合い、夜頃にやっと帰ってきて”禊”をしている最中。
「ふぅ、今日も頑張りましたねぇ…」
私達は研究棟にあるお風呂場でゆっくりとしているといきなり扉が開く。
「セリアちゃんってここにいる!?」
「「「「!?」」」」
私達がビクッと一斉に出入口の方へ視線を向けるとそこには一糸纏わぬ姿で白い猫耳や長い尻尾を生やしたツインテールの女性がいた。
そしてその大きな声と音でビクッとしたキナコが洗面器の中で淵に隠れるようにして体を伏せる。
「え、えーと…私ですけど…?」
「君なんだー!♪へぇ可愛いー!♪」
私が彼女にぺたぺたと顔や肩などを触られたりして困惑してるとルイネさんが彼女の肩を持って引きはがそうとする。
「ちょっ、離れぇやって──力つよっ?!」
「──その耳と尻尾ジョルティア・シリンスさんですの…?」
「あ、知ってくれてる!うれしー!」
とりあえずやっとの思いで私からジョルティアさんを引き剝がしたルイネさんは半ばグッタリしながら様子を見ていた。
「──てことで改めて!ジョルティア・シリンスだよっ♪」
「あ、セリア・レインです。ご丁寧にどうも」
ペコっとしてると「丁寧ちゃうやろ全然…」と疲れ気味にツッコミをルイネさんがいれてくる。
「──それでそれで、団体対抗戦1年生部門一位だったね♪ 今日はそんな一年生に会いに来た感じだよ♪」
「な、なるほど…?」
エルマさんが首を傾げているとミィさんが口を開く。
「…2年生なのに来たの?」
「そだよそだよ♪ みんなここで同棲してるんでしょ♪」
「同棲というより、ローレファルス先生の命の下、同居をさせてもらっている状態ですわね」
「えぇいいなぁ!楽しそうーっ…!」
「~…勢いすっご。…って2年なら、一回仲介いるんじゃ…?」
クローディアさんがそう言うとビクッとジョルティアさんの肩が跳ねる。
「…たぶん反応的に通達無し接触」
「こ、細かい事は良いじゃん♪ほらきっと先生たち優しいからさ!きっとだい、だだ大丈夫だよ!」
「あぁ、過去にもなんかあったなこの反応…声震えすぎやろ」
「まままさか!全く持ってないもんね♪」
「あ、ローレファルス先生」
そう言った瞬間飛び退くように「ひにゃぁっ!?」と声を出してジョルティアさんが奥に行くと同時にばざんっ!と湯舟から飛沫が飛ぶ。
「ごめんなさ──っていないじゃん?!」
「…けほっ。鼻入った。」
「…あ、キナコ、大丈夫ですか?!」
水飛沫で洗面器の中にいたキナコまで落っこちるという状態だったのを急いで引き上げて洗面器を戻して入れてあげる。
──結局湯舟に一緒に入る事になりつつ、ずっとピコピコと尻尾が警戒した様子で小刻みに震えるジョルティアさんがそこにいた。
「──…うぅ…。ごめんなさい」
そうちょっと弱々しく言うも私以外の全員が肯定するように見せると渋々と言った様子で耐えている様子だった。
「ま、まだ入らないといけない…?」
「あはは…猫さんは水苦手ですもんね…?」
そう言いながら撫でると震えていた尻尾がぴたりと止まり、私を見上げる形になる。
「…うぅ…ママみたいぃ…」
「ママ…?」
私が首を傾げると何故か皆さん納得するように軽く頷く。
キナコが呆れた様子で「チチチ」と小さく不満そうな声を出すのをゆっくり撫でて落ち着かせる。
「うぅ~…ごめんなさいぃ…」
何故かキナコとジョルティアさんが喋るようになっている様子で見ているとふと疑問が浮かぶ。
「ジョルティアさん、キナコの言ってる言葉がわかるんですか?」
「ん?えーと…言葉は全く…?ただ怒ってるとかそういうのが分かる感じかな…?さっきもめっちゃ怒られてて…」
そう言うと耳がぺたぁとイカ耳になりつつ落ち込んだ様子で言う。
「まぁ飛び跳ねた時に落とされましたからね…」
苦笑しながら言うとそうだそうだ!と言う風に「ぴィっ!」と鳴くと「だからごめんなさいってぇ…!」とジョルティアさんが言う光景を見ていた。
「とりあえず、来ても良いですけど、まずはちゃんと皆さんがびっくりしないように来ましょうね?」
優しく撫でながら顔を見ると段々とうるうるした目で「うぅ…わかったぁ」と言う。
「ほんま猫みたいな感じやな…」
「──何気に既に仲良くなりかけてる」
段々と私もジョルティアさんの撫で方がわかりつつ、猫さんを意識して撫でるとくるくるという甘える猫のような喉声が聞こえる。
「ふふっ。気持ちいいですか?」
「水嫌いだけど…これされるなら…うん、いいかもぉ…」
その様子を見ていたキナコもしてほしそうに両手を広げてたので同じように撫でてあげると嬉しそうにする。
「ねぇ。あれ2年よね。なんでセリアにめっちゃ懐いてるの…?」
「クローディア?2年言うても見た目猫やろ?ほな動物って事はセリアの周りおったらあぁなるねん」
「…大きい猫が増えた。」
「一応上級生なのですえれどね…これを見ると猫ですわね」
──一通り撫で終えてお風呂を上がって服を着ようとするもジョルティアさんは「めんどくさい!」と言いつつ髪の毛が濡れたまま行く気満々だった。
「ジョルティアさん、ダメですよ。ほら、来てください」
「うぐっ……はぁーい」
私が呼ぶと素直に来て椅子に座りつつ完全に私に任せる様子だった。
キナコは既に拭き終わって机の上でタオルに座りながらジョルティアさんを見つめる。
「ふふっ。仲間って思われたのかもしれないですね?ジョルティアさん」
「え、リスの仲間?やった♪ 流石に初めての部類のお友達だ♪」
尻尾が揺れながらキナコも同じようにゆらゆらと揺らす姿を見つつ、私はジョルティアさんの長い髪の毛を丁寧にタオルで水気を取っていく。
「あ、グルーミングみたいにもしますね?」
「え?良いの?やったー♪」
すっかりされるがままなジョルティアさんを見つつ櫛などで髪の毛を梳かしたりしていく。
「それで、まだ聞いていなかったですわね。ジョルティアさん、何故ここに来ましたの?」
「ん?視察だよ。SSランク倒した子ってどんな子かなーって」
「頼まれたとかなん?」
「個人的に気になったから来ただけだよ?」
私が手入れをしている間、心地よさそうに足をぷらぷらとさせる。
「でもなんか思ってたよりもすっごい優しそう♪ 完全初見だけどもう既に私は好きだよ♪」
クローディアさんは軽く水を飲みつつその様子を見ていた。
「猫…気に入る…?…え、まさか入り浸るとか言わないよね?これ」
「さ、さぁ…流石に学年が違うので…たぶん、無いかと…思いますがぁ…」
エルマとクローディアは一抹の不安を軽く感じながらもその日は上機嫌でジョルティアは帰って行った。




