第74話 「お疲れ様」
その後回復を施されたルーテリアは、準決勝を上がるも、エレアとの戦闘では先手を打たれ何かを発動する前に一瞬で決着が着き、4組は団体戦1位、代表戦2位という戦績に収まった。
取材をする為に多数の記者が私達を取り囲み、「偉業を成した今のお気持ちは!」「あれらは計算の上ですか!」「練習をする時のコツは!」など多種多様な質問責めを潜り抜け、一度学園の食堂へと赴いていた。
──。
「早速優待券を使って、全員一か所に集まってもらった訳だが…。まずは主役の契約獣を呼ぶとしよう」
ゼクスさんがそう言うと、魂結びの呼子石を皆で扱い、呼び出す。
「──それでは、代表戦2位、団体戦1位を祝して、乾杯」
「「「乾杯!!」」」
各々が契約獣たちと楽しむようにして食べたりしている中、私はいつものメンバーに囲まれつつ、お茶を飲んでいた。
「あ”~~、うっま!勝利の美酒ってほんまええなぁ!♪」
「…酒じゃなくて炭酸ジュース」
ミィさんのツッコミに「細かい事はええねん」と言いながら頭をわしゃわしゃとする。
「ルーテリアさんもお疲れ様です。まさかあんな綺麗なのを出来るようになってたなんて…」
「ふふっ、セリアさんとの生活のお陰かもしれませんわね。私も以前なら出来るとは微塵も思わなかった事ですもの」
クローディアさんがお惣菜を飲み込みつつ首を傾げる。
「歴が長いとあんなふうになるって事?」
「わ、私も強くなれるんでしょうか…」
「…クローディアとエルマもたぶんできる」
「にわかには信じ難いのだけれど…まぁ、そう言うって事は知らずうちにってやつなんでしょうね…」
そう言うとエマさんがメモ帳を片手に歩いてくる。
「いたいた。お疲れ様です。同級生として取材を一応しても?」
「あ、はい。お疲れ様ですエマさん。折角なら一緒に食べませんか?」
エマさんは頷きつつも「軽く楽しませてもらいながらだから大丈夫よ」と言いながらご飯を食べているキナコたちを見て軽くメモ帳に記入していく。
「早速だけど、あの複数魔法ってセリアが出してたの?」
「あぁいえ、私はあんな事を出来る魔力は無いので、みんなが変わりにしてくれたんですよ」
「代わりに…。どれも戦闘向きじゃないはずなんだけど…、思い返すと完全に戦闘向きな動きだったのよね」
「──あ、そうそう。さっき控室でも見てたあの袋の中、もう一度見せてくれない?」
私は頷いて「良いですよ?」と言いながら巾着袋を開けて見せる。
「…殻が割れて中身が見える…。でも土に入ってるわけでもないし…何この種?」
「それがよくわからなくて。キナコが私にくれてたものなので」
「キナコって、そのリスの事…でいいのよね?」
私が頷くと、エマさんはキナコをじーっと見る。
そんな様子をキナコも見て「何?」と言うように木の実を両手で持ちながら首を傾げる。
「…んくっ。霊華幻桜のかも、って言ってた」
「あぁ…あの高級なね。でもあれって種見た事ないんだけれど…?というか、それなら魔力封入ガラス瓶は使わなくていいの?」
「そこが割と謎なんよな。なんか袋に入ってるだけで消えもせえへんし」
「自然は不思議な事もいっぱいありますからね。私達が見つけてないだけで、そういうものなのかもしれないですね?」
「まぁ納得は完全にはできないけれど…そうなのかもね」
エマさんはそう言ってメモ帳にサラサラと書き込み、パタンと閉じる。
「他にも聞いてみるわ。また後日に取材するかもしれないけれど」
「わかりました。エマさんも根を詰め過ぎないようにしてくださいね」
「──…わかった。楽しんでちょうだい」
そう言って歩いていくと丁度、入口の方からガーバント先生とローレファルス先生が歩いて来た。
「非常に興味深いパーティ模様だな」
その声に反応して「お疲れ様です」とガーバント先生たちに返す。
「諸君、ご苦労様。それと、団体戦1位入賞おめでとう。と言いたい所だが、行事の一つを好成績で通過したに過ぎない。これからも頑張ってくれ」
ローレファルス先生がそう言うと4組の皆でコクッと頷く。
「──所で、ルーテリア、ルイネ、ミィ。対抗戦の時に使ってたもの、記述は無かったが、関係ない物と思っていたのか?」
「えぇ。あれは私たちが独自でしていたものですもの」
「勝手に個人でやっとったもんやしなぁ。セリアがどうとかじゃないって思っとったし…?」
「…改良も、考えてしてただけだし」
ローレファルス先生は「ふむ…」と言いつつ顎に手を当てる。
「まぁ、良いんじゃないか?担任としては独自で道を作る姿を見るのは初めてじゃない光景だ。セリアに結び付けるのも無理があるだろう」
「それはそうだが…。はぁ、こんな祝いの席での追及は無粋か」
「あっ、それならローレファルス先生も一緒に食事しませんか?」
「私はまだ業務が…」
「ローレファルス、多少は乗ってやっても良いと思うぞ?」
「──……そう、だな。わかった。少しだけ乗るとしよう」
私達はローレファルス先生とガーバント先生を加え、みんなで一緒にご飯を食べ合いつつ和気あいあいと会話をしていく。
──時間が過ぎ、途中で先生たちは業務に戻りつつも4組の皆さんは以前よりも契約獣たちと仲良くなった様子で、パーティはお開きとなり、後日に疲れを残さない為に早めの解散となった。
「ふぅ…やっぱりこういうのが落ち着きますね~」
私は何時ものように淹れたお茶を皆で頂きながら、大きくゆっくりと深呼吸をしていた。
「あ、あの…セリアさん」
エルマさんの方を見ると、口を噤んだ様子で申し訳なさそうにしていた。
「どうしたんですか…?」
「あの…良かったらその、キナコちゃんみたいにフォレスを出し続けたいなって…」
「ん-…と言っても、私もよくわからないですからね…。キナコ、何かわかりますか?」
私が撫でると「ぴ?」という不思議そうに首を傾げる。
「あ、あはは…わからなさそうですね…?」
「みたいですね…。お力になれなくてすみません」
「あ、いえ。出来たらいいなぁと思ってたくらいなので…!」
エルマさんは慌てて手をパタパタとさせて申し訳なさそうにする。
「まぁ、キナコ見とったら思うけど、契約獣自体が一緒にずっとおりたいとか思ったらおれるんちゃうん?」
「い、一緒に…ずっと…ですか。」
「…それだと説明がつかない」
「ん?なんでなん?」
「…最初に召喚した時、セリアのは全員帰りたくなさそうだったから」
「あ~…それ言われると根拠ないわ…」
「でしたら、研究棟にいる時は随時出してあげる、というのをしてみては如何ですの?」
「それなら迷惑もかかりませんね!」
「唯一契約獣貰ってない私がいるんだけど…?」
「…なら、接して慣れたらいい」
「そんなんで契約できるものなの…」
「それ言うたらうちかて最初おらんかったし、何とかなるて♪」
クローディアさんがジト目で見つつも「はいはい」と言いつつお茶を飲み干す。
「なら、明日はお休みですし、出せるだけ出してあげましょうか」
私がそう言うと、皆がコクっと頷き、キナコはぐりぐりと私の手に頭をこすりつけるようにして、なでなでを所望していた。




