第73話 「氷の狼」
気が付くと、溢れんばかりの歓声が耳を劈く勢いで広がっており、皆が私にぎゅーっと抱き着いていた。
「決まりましたッ!!この学園始まって以来の偉業ッ!!最大ランクAでのクラスでSSを退かせ、一位をもぎ取りましたぁあッ!」
「偉業ではありますが、是非今回の一年生のを見て二年生、三年生も頑張ってほしいものですね~?」
そういうイリスさんの声は穏やかでありつつも圧がありそうな中、コメットさんの声が更に轟く。
「番狂わせのダークホース、学園史上最大の下剋上を成した今回の対抗団体戦!一年生の部門一位は、4組となりましたッ!!」
────。
私達は対抗戦を終えて控室に戻ると、一番最初にルイネさんが目の前にいた。
「セリアああああっ!?やればできるやーんっ!?」
そういう声にびっくりして私の頭の上にキナコやメロデ、ヒヤンによってもふもふになりながらルイネさんに抱き着かれる。
「あわっ、ルイネさん!?頑張ったのは私じゃなくてみんなで!?」
そんな光景をフラワとアシスが少し離れて傍観する所をミィさんがサムズアップしていた。
「とはいえ、あんな隠し玉があったとはな。セリア」
ルーテリアさんがルイネさんを引き剥がすと、少し表情が柔らかくなったゼクスさんがいた。
「あっはは…私も実は知らなくて」
ギルフォードさんはそういう私を見て眼鏡を直す。
「突発的に発現したという事か?」
「あ、はい…キナコから貰ってた種がたぶん光って?」
そう言って今まで溜めていた巾着の中身を見てみると。
「あれ…?」
中を見るとどんぐりのような種の殻が割れており、ベリーのようなのはキナコが噛んだような感じになっており、半分が食べられていた。
「え、えーと…割れたり色々してますね…?」
まだ外には染みていないが、内布が汚れているのを見せる。
「…割れたりしてる…発芽?」
ミィさんがそれを見ると首を傾げる。
「ん-。なんやろな、この種…?」
「──。とはいえ、今回はある意味セリアの功績…といえば本人は納得しないだろう。」
「まぁ…私だけなら絶対できなかったですし…?」
そう言っていると「なら!」とギャレットさんが手を上げる。
「その契約獣も一緒にの方が良いってんなら、契約獣主体のパーティとか!」
「それなら是非…!」
「ふむ…まぁメルフィス講師も親睦を深めろ、と何度も言っていたからな」
ゼクスさんはそう言いつつ向き直る。
「とはいえ、まだ単独での対抗戦がある以上、それを見届けてからだ」
それを聞いて皆さんが頷き、ルーテリアさんに目を向ける。
「えぇ。出来うる限り、頑張って参りますわ?」
──。
対抗戦は続き、2・3年生と続いていく。
1年が偉業を成した、という事もあり活気に満ちた中、戦闘を行い一歩も引かぬ攻防一体が中継され続け──。
夜、代表戦が執り行われようとしていた。
──。
「続いて!代表戦に参ります!」
「ここまで数々の名場面を出してくださいましたね。とはいえ、失敗も目立ちましたが、今後に期待です~」
そのイリスの言葉に「成長の余地ありですね!」と言ってから更に続ける。
「──ではそれぞれ準備が整ったようですので、ご入場ください!」
その言葉の中、代表者が中央へと一人、また一人と歩いていく。
「──1年の組み分けが決まりました!」
モニターに広がる組み分けは──。
「第一ブロック!ルーテリア・ラフテイルVSヴァルザード・フォン・レグナス、第二ブロック!レオニダス・ノルディンVSエレア・セレスティア!」
次の瞬間、それぞれの前に門が聳え立ち、ガチャリという音と共に開く。
「それでは、同時中継致します!」
モニターにそれぞれの映像が表示される。
私達は控室でルーテリアさんの勇姿を見届けていた。
──別の空間、一対一の闘技場空間へと、それぞれは赴いていた。
「水と氷ねぇ…。確かに相性は最悪だが…」
ゴゥッ!と片手に炎を纏わせながら私を見る。
「んなもん関係ねぇ。出力で蒸発させてやるよAランクさんよ?」
シルヴァンを横に呼び寄せつつ、軽く深呼吸をする。
「あら、油断大敵でしてよ?」
「──…殺す。」
殺意を向けられた瞬間、シルヴァンに飛び乗り、魔法を詠唱する。
「逃がさねぇぞお嬢様よぉッ!!重圧の領域!」
刹那シルヴァンの体が止まり、私自身も重力に苛まれる。
「ッ…!機動力を…ッ…!」
「ご名答。一発で消し炭にしてやっからよぉ、動くんじゃねぇぞ?」
複数の魔法陣が展開されながらヴァルザードは歩いてくる。
(迎え撃つしかありませんんわね…とはいえ、シルヴァンとのはまだ未完成…それでも、やるしかありませんわ…)
シルヴァンにトントンっと手でやってから、お互いに目を見て、頷く。
「終わりだ?散れAランク。────炎竜波」
赤い炎で出来た巨大な竜の頭部が表れ、炎を蓄積させる──。
「シルヴァン…信じていますわよ──ッ!」
刹那、巨大な爆炎のようなブレスがルーテリアへと放たれる。
その光景をヴァルザードは手をポケットに入れつつ見ていた。
「ッケ、クソ雑魚が」
──炎が消えるが、そこに跡形もなかったのだが、アナウンスが流れない。
「──…?」
ヴァルザードは疑問に思いながら首傾げていたが、ぼんやりとあまりの熱量の蜃気楼の中、それが立っていた。
「…なんだ?その見た目は」
氷のドレス、肩には狼を模した頭部のような見た目の肩当てを携え、ティアラのような装飾を付けた印象的なセミブロンドの存在がいた。
「…氷狼の騎士。初めて出来ましたわ?」
ニコッと笑うと、ルーテリアの後方に氷が咲き乱れる。
「…へぇ。隠し玉って事か…。なら、俺をもっと楽しませろよ?Aランク…焦熱線ッ!」
何発も撃ち込みながらも、瞬時に氷の盾が正面から受け流すようにして展開され、軌道を逸らす。
その光景を見た瞬間、再度重力で機動力を制限させつつも、肩当ての狼が吠えると、氷を地面から押し出して機動力を復活させながら攻撃を寸前で避けていく。
(ッ…反動が…あまり長期戦はできませんわね…!)
「ほらほらどうしたAランクお嬢様よォッ!避けてるだけじゃガス欠になんぞオラァッ!!」
熱線を何発も撃ち込みながらそう言って更に追い打ちをしていく。
「あら、お得意の戦術兵器級の召喚は致しませんの…ッ!」
「生憎場所的に出せなくてな?だがそんくらいハンデだ。テメェにならそんなもん使わずともどうだってなるからなぁッ!」
魔力を消費しながらドンドンと攻撃を避け続け、いつしか穴だらけの氷が何本も乱立していた。
そして一発が肩当ての無い方を貫通し、ルーテリアが吹っ飛ぶ。
「鬼ごっこは終わりか?お嬢様よォ?」
中央に倒れた私の前に歩いてくる。
「ッ…!──…えぇ。…やっと。準備が終わりましたわ」
「…は?」
刹那、キラッと周りの氷柱たちが輝く。
「目暗まし…ッ!?」
ヴァルザードは火の魔力を真下に叩き付けようと片方に収束させる。
「──氷狼の断罪」
グッっと握り込んだ瞬間、全ての氷柱が一斉にヴァルザード目掛けて大小問わずして射出され、一撃、また一撃と入っていく。
「ッ!?がッくっそがッ!」
魔力を練った先から次々に回りの氷柱がそれを削り取るようにして雪崩れ込んでいく。
「水流…!」
更にそれを加速させるようにヴァルザードの真下から大量の水を噴出させ、その中に閉じ込めながらも外側から何度も何度も氷柱が叩き込まれていく。
バリィンッ!!!
水流が凍結し、中で身動きが取れないようになりながらもヴァルザードのいる中心が赤熱していく。
「小賢しいぞこのアマ…がッ?!」
氷牢を弾き飛ばして叩き込もうとした瞬間、一番大きい氷柱がヴァルザードを背後から襲い、上空に吹っ飛ばす。
「…咲きなさい。私の魔力を全部使って──。」
肩当ての狼が吠えると、ヴァルザードを中心に氷が無数に集まり、凍結させる。
「…クソアマ…がッ…」
パキンッ、バリィンッ!
と砕け散るとダイヤモンドのような氷たちが舞いつつ、地面にヴァルザードが落ち、叩き付けられると同時に生命結界石が割れ、結界が広がる。
『戦闘不能を確認。ヴァルザード・フォン・レグナス リタイア』
その言葉が流れると、ルーテリアも膝をつき倒れ込むようにして座ると同時に装甲が弾け飛ぶ。
(以前までの私なら、ここまでシルヴァンの氷を引き出せませんでしたわね……)
「はぁ…はぁ…ッ。やり…ましたわよ。」




