第72話 「皆と一緒なら」
「…見つけましたよ。副リーダー、セリアさん」
ニコっと3組のリーダー、エレア・セレスティアがセリアを見上げる。
「……!わたっ?!」
そんな見つかったセリアは、乗っていた木にしがみつくようにしてリスと一緒にいた。
その拍子に「あっ!」と声を発したと思うと両手で抱える程度の銃のようなものが地面に落ちてくる。
(物理的に私を見下す姿…本当に…。)
「──…私に傷を与えた事、素直に賞賛は致します。正直、侮っていましたから」
そう言いながらゆっくりと浮かんで行きつつ光の剣を携えた状態で近寄っていく。
「ですが、あなたは見た所、宙にも浮かべない様子…慈悲を持って断罪してあげますね。副リーダー、セリア・レイン」
ブンッっと光剣を振り上げるとリスが「ぴィッ!」と威嚇してくる。
振り下ろした時、寸前の所で手を放して「ひッ…!」と小さい悲鳴を残して地面へと落下していく。
その様子を見て視線を逸らして「終わりですね」と呟く──。
…光がセリアが落ちた先から広がるまでは。
「…?」
セリアが落ちたであろう衝撃音が聞こえないその場へ視線を向けると。
「…へ?え…?」
腰から袋のようなものが光っており、空中に浮遊する形でリスを抱き抱えていた。
(…魔法が使えないんじゃなかったんですか?)
「えっ─私、浮いて…?!あだっ…!」
ふと力が抜けると尻もちをつく形で地面に落ちる。
その様子を見てあの戦闘向きではない小動物たちが近寄って周りを囲う。
「…本当に。虚偽報告も大概にしてほしいですね」
そう言いつつ払うようにして光剣を霧散させると、一つの魔法陣が表れる。
「断罪を受けなさい。──光線」
グルンッと魔法陣が回転すると光の柱が射出されるその瞬間、セリア本人は目を瞑るがまた袋から違う色の光が迸る。
バキィンッ!!!
ピシュンッ!!!
「──…は?」
貫通力の高い光線をいきなり出てきた氷の壁のようなものが弾き飛ばし、反射するようにしてエレアの頬を掠める。
──。
巾着が黄色く光ったと思えば浮遊、青く光ったと思ったら氷の壁が表れ、私をまもるようにして展開された。
「…氷…ヒヤンが助けてくれたんですか…?」
そう言うと「ぷーッ!」と言いながら地団太を踏むようにして私の前に出る。
「わ、ちょ、みんな、危ないですよ…!」
そう言うのもつかの間、キナコを筆頭にフラワ、アシス、メロデ、ポヨンも前に出て私を庇うようにして前に立つ。
キナコが「ぴィッ!」と一鳴きすると臨戦態勢になるようにして皆が軽く姿勢を落として構える。
「…本当に…本当に…────ッ。」
何かをエレアさんが呟いたと思ったら周りから複数の光の魔法陣が浮かび上がって私の上空を埋める。
「ひッ…!?」
「光の雨!!!」
一瞬煌めいたかと思った瞬間、幾重にも降り注ぐ光から身を塞ぐようにして青い光が巾着から放たれたかと思うと、守るようにしてドームが出来上がる。
ガガガガガガンッ!!!
夥しい量の光線が私達を襲おうと降り注ぐが、氷のドームはそれらを受け止めていく。
次に茶の光が広がったかと思うと地面がボコリとへこむようにして私たちを移動させるように地面が動き出す。
「うごいて!?土…アシス!?」
次にオレンジの光が放たれた瞬間、スッと甘い香りが広がり、半ばパニックになっていた私の思考を一瞬で戻す。
「この匂い…ポヨンですか…?みんな、手を貸してくれて…?」
次に緑の光が光った瞬間、上空で夥しい攻撃の雨が一瞬途切れる。
「うぐ…──ッ?!」
エレアさんの声が響く場所を見ると、どこからともなく丸太が物理的に飛んできて横殴りにエレアさんを吹っ飛ばす光景が見える。
「今のって…フラワですか…?でもみんな、そんな力、一回も…?」
私が困惑していると皆が一鳴きしてこちらを見る。
「…やりましょう!みんな、お願いします!」
私がそう言うと更に胸を張るようにして皆が一鳴きする。
──。
「ぐッ…ッ!!」
(まずい、この丸太…重ッ…?!マナがッ…練れなッ…?!)
そのまま板挟みになる寸前で空間魔法の単一で発動できる寸勁転移で瞬間的に目視できる範囲に回避すると後方で丸太が岩に当たって砕け散る音が響く。
「けほッ…!かはッ…!」
腹部を圧迫され、しかも本来の丸太よりも高密度なソレがまるで魔法を発動させまいと抉るようにしてきた。
ただの丸太、だがその威力は丸太ではなく、完全に兵器の領域と体がアラートを出していた。
(G相手にここまで屈辱を…ッ!)
呼吸が安定せず、よろける体を起こしてあのセリアのいた場所へと目をやる。
──。
「なんとッ!?GランクがSSランクを吹っ飛ばしたああああ?!」
その中継は学年対抗戦の会場でも広がっていた。
「お、おい、あれGランクだよな!?ランク詐欺じゃないよな?!」
「思いっきりGだって書いてただろ?!」
「魔法今ので何個も使ったよな!」
会場はざわざわとしたりしながらも、大盛り上がりになっている中、困惑がやはり勝った雰囲気が漂っていた。
「か、かか解説のイリスさん!何が起こっているんでしょうか!」
「──あれらは、私達も見た事がありませんね。ただ──。」
「ただ…?」
「あのセリアさんの契約獣たちの能力と考えると、合点は行きます。」
「で、ですが!あんな能力はあの契約獣には無いはずでは…?!」
コメットがそう言うと「本来は」と言いつつイリスが頷く。
「ですが、あの土壇場で出来るようになったが正しいのかもしれませんね~。」
──。
皆で歩いていくと、エレアさんがよろけるようにして木によりかかって肩で息をしていた。
「…エレアさん。私単体では今回ほぼ何もできていません…でも。」
そう言うとキナコを筆頭に皆が前に出る。
「私たちなら、なんとかできると思いますから…エレアさんに、勝ちます…!」
私がそう宣言するとエレアさんは俯いて肩震わせる。
「──。ふふッ…アッはは…」
「…本当に。…──本当にッ…」
「…?え、エレア…さん…?」
「──天の剣」
上空にとんでもない巨大な光の剣がずるりと切っ先を向けて私達を捉える。
(──……妬ましいッ。)
エレアさんが何かを呟いた瞬間に手を振り下ろす。
「なっ…!?」
私が驚くとキナコが走ってきて巾着の中に頭を突っ込む。
「ちょ、キナコ?!」
私が支えてあげるようにするとベリーのようなものを取り出して口を汚しながらガリッっと噛む。
刹那、空中でピタリと巨大な切っ先が止まり、桜の枝のようなものがパラパラと広がっていき──。
パキンッ!
一際大きな音が広がって爆散するようにして弾け飛ぶ。
次に目を開けると、空には大輪の桜吹雪がばらばらと広がっていた。
「…綺麗…。あっ…エレアさん…!」
一瞬で我に返ってエレアさんのいた方向を見ると、ふらっと倒れるようにして地面に突っ伏す。
「エレアさん…!」
私は走って行って抱き抱える。
「大丈夫ですか、エレアさん…!怪我が…!」
「…なんで…」
「そ、そりより速く…!」
パキンッっとランク戦の時にも聞こえた破裂音が響く。
「…覚えましたよ。──セリア・レイン」
その声と共に粒子になって転送される。
『戦闘不能を確認。エレア・セレスティア リタイア』
大輪の花びらが広がる中、私の体も粒子が広がると同時くらいにキナコたちが飛び込んできて抱きとめるようにして、私は浮遊感に襲われた──。




