第71話 「圧倒的戦力差」
「エレア様、報告します。人数はわかりませんが、4組は散会したようで痕跡が分かれていました」
「そうですか。でしたら虱潰しにやっていけば勝つのは時間の問題ですね」
最高でもAランク。それが4組。
ましてや、あの中にはGランクまでいて、対してこちらは最低ランクがE。
──勝敗を考えるまでもない。
だが、制御能力が異常値という項目…そこだけは気掛かりだが、そこだけを考えれば勝利自体は揺るぎない。
「とはいえ、ゼクスさんの召喚能力は厄介ですね。影に不審な動きがあれば、即座に攻撃を」
彼らは了承してそれぞれ動いていく中、私はゆっくり歩き出す。
そうやっているとすぐに発見の報告が上がり、殲滅を順番に開始していく。
「こちら3名撃破」
「こちらも3名撃破しました」
そう言って数名が離脱した事をアナウンスされる中、エレア本人は4組の最大の脅威であるゼクス、ギルフォード、ルーテリアの3名を片隅で警戒していく。
(Aとはいえ、あの3人はそれぞれ強味がハッキリしている。出力で勝ったとしても、数で来られては厄介ですね…)
この雰囲気からして3人は行動を別にして通信をしながら連携をしてくるか、ゼクスだけ単独で2名と補助一人の3人か。
どちらにせよ、脅威なのは変わらないが、そこだけが強さと言っても過言ではない。
だが─。
「──…おかしいですね。」
そろそろ4組が動いてきてもおかしくない状況にもかかわらず、一切動きを見せなかった。
「──…動きはありましたか?」
「それが、あれ以降一切の動きが途絶えまして…」
「魔力探知にも引っ掛かりません…」
「魔力探知にも…?」
魔力探知に乗らないという事は、マナコアが駆動していない。
それこそ絶命していると同義であるソレはもはや隠密というものではなかった。
「…魔力探知を阻害する何かを持っている可能性があります。違和感のあるところは全て攻撃での確認をしても構いません」
敬礼して散り散りに去っていく。
(攻撃をせずに隠密に徹している…召喚でさえもしていれば微量に出るはずの魔力反応が無い…という事は…)
「…遺跡内ですか」
この場所は遺跡ステージ、崩れているとはいえ地下が存在しないとは考え難い上に、専門家でもなければ地中の中を探知は出来ない。
「召集します。1から3班は遺跡側に向かいます」
そうやって通信魔法で伝達後、遺跡本体側の方へと歩き出す。
──遺跡付近に到着する頃には陣形を組んだまま歩いていく。
「エレア様、少しお話が」
そう言う彼はAランクでありつつ、頭脳に長けた数少ない優秀と呼べる存在の一人、ジュリアン・エリオット。今回の副リーダーだ。
「どうしました?」
「少し狙撃を警戒した方が良いかと。前回の戦術を使う可能性があります」
「警戒はしています。ですが、わざわざ言うという事は改良されてるかもと?」
「はい。無策でないことは前半戦で分かっています。そこで火力を上げるか隠密性を上げてどこかで潜伏して見張っている可能性が」
確かに一理ある。あの戦闘向きのレオニダスを一撃で退場させる威力という事はそれ以上を警戒しても損はしない。
ましてや1週間のインターバル中に量産が整っていたとするなら死角だらけの遺跡は危険地帯となっている。
「──…でしたら、一度薙ぎ払いましょうか。隠密ができないように」
その言葉を聞いて少し後ろへ全員が引く。
「…審判を与えましょう。屠られるか、生き残るか──。」
「──裁きの光」
詠唱し、圧縮した光の光線が幾重にも重なり、眼前の遺跡という存在に向けて大量に降り注いでいく。
『戦闘不能を確認。──』
アナウンスが流れる。読みは合っていた…が。
「…あまりにも少ないですね。」
「─アナウンスに出たのは4名…仮にスリーマンセルとして、半壊を免れたのがいますね」
「─となると、やはり地下ですか」
「その認識で間違いないかと」
エレアが歩き出すと近衛隊のように周りに広がって陣形が組み上がり、前進していく
周りには複数の穴が広がっており、その威力を物語っていた。
──が、遺跡付近に差し掛かった瞬間、地面が抜けて前衛が2名ほど落下し、退場アナウンスが流れる。
「…古典的なスパイクトラップ…小賢しい」
ジュリアンは内部を見つつ分析する。
「先ほどの薙ぎ払いで解除仕切れていなかったみたいですね。」
少しエレアが悲しそうな顔をすると周りは「聖女様、そんな事は…!」とフォローをする。
「ですが、解除のために撃ちながら進むのは視野に入れた方がいいですね」
「──えぇ。それでは、お願いします」
敬礼をして眼前に初級魔法を放ちながら前衛が進んでいく。
想定通り、罠は複数存在し、そのどれもが解除されながら移動出来ていく。
エレアと一部は外で待ちつつ、ジュリアンが先行する形で内部へと入る。
内部は先ほどの薙ぎ払いもあってか、相当崩れており、中に存在していればただでは済まない事が確認できた。
「…おかしい、何故気配がしない…──!」
ジュリアンがいきなり「外へ!速く!」と言うと同時に。
ジュリアンが入った瞬間、壁が押し出される形で押し潰される。
『戦闘不能を確認。副リーダー、ジュリアン・エリオット、リタイア』
冷徹に流れるアナウンスは先行部隊を全滅させたアナウンスだった。
「…やってくれますね。4組の方々…。」
マナ探知は障害物を挟む程に探知しにくくなる。
という事は、外のトラップ自体はカモフラージュ、効果があれば良い程度で置かれた物だったのだ。
「退避。死角という死角を…薙ぎ払いましょう。」
「──罪人たちを許してはいけません。」
その言葉を言うと敬礼して全員が「はっ!御心のままに!」と言って臨戦態勢に入る。
攻撃する瞬間、いきなり周りからマナの反応が溢れかえる。
そのまま戦闘が始まるが、結果は歴然。
数は多いが出力は低い。ここも想定通りだ。
ガァウッ!!
影の召喚獣や契約獣たちが複数来るが、エレアは「しゃがんでください」と一声出すと全員が伏せる。
「──次元断絶」
空間がズレるようにして広範囲の周りにいる周囲にいた者たちの身体がずり落ちるようにして…戻った瞬間、砕け散るようにして吹き飛ぶ。
───。
「行け!」
ゼクスの号令の下、一斉に攻撃を開始する。
ギルフォード、ルーテリア、二人の契約獣が先行し、他も続いて雪崩れ込むようにして攻撃や妨害支援を打ち込んでいく。
「凍てつきなさい。吹雪!」
「砕けろ、隕石落とし!!」
吹雪によって加速した上空からの岩石は途轍もない威力を発揮し、周りを削り取るが、空間魔法によってエレア一行だけが周りで残る。
そんなルーテリアとギルフォード二人の広範囲攻撃を軸に攻撃を打ち込む中、守備を全力投入し、向こうも応戦しながらSSであるエレアの光魔法によって次々に仲間が消えていく。
刹那、畳みかけるようにして進軍した瞬間、エレアの周りがしゃがみ込んだその瞬間──。
空間がズレるようにして広範囲の周りにいる全ての体がずり落ちるにようにして…戻った瞬間、砕け散るようにして吹き飛ぶ。
「ッ…!?」
眼前に見える存在、いや。見えない存在までも含めて切り飛ばしたのだ。
『戦闘不能を確認。ギルフォードヴァレンタイン リタイア』
「シルヴァンッ…!」
ルーテリアは間一髪避けるが、変わりにシルヴァンが犠牲になる形で粒子に塗れて霧散する中、自身は地面に這いつくばるようにして転げ落ちる。
「…位置はわかりました」
眼前に居るエレアがそう呟くと、パシュンッっと空間を横切るようにして消える。
「──!暗黒─!」
「光剣」
光の剣でゼクスの後ろに回った瞬間、貫く形でリーダーを切り飛ばす。
「…ッ…クッ…!」
「4組の方々、正直侮っていました。ですが、主力が倒れた事でもう終わりですね?」
「…フッ」
(何がおかしいの…)
刹那、パツンッ!!と何かが横切る。
「!?」
「…探知できない…よな…っ」
『戦闘不能を確認。リーダー ゼクス・ルーメン リタイア』
(どこから…!?)
周りを見ても一切気配はない。それどころか一切飛んできた方向が分からなかった。
「…セリア・レイン…制御が異常値というのはこういう事ですか…」
それを考えて全方位に光の壁を作り出して次の攻撃を跳ね返す算段を付けた瞬間、痛みが足に来る。
「?!」
そこには光の壁があったにも関わらず、狙撃による一撃が貫通して自らの足を通り抜けた根拠があった。
「…私に攻撃を浴びせるなんて…」
そっと空間魔法を利用する形で空中に浮く。
「──…ふふっ。良いでしょう。ですが、傷をつけるべきではありませんでしたね」
傷がつく方角からの攻撃、即ち、あの巨木が狙撃位置だと割り出す。
「転送陣」
地面に開け、殲滅すべき副リーダーの所へとワープし、出た瞬間に斬撃が飛んでくる。
「…岩槍!」
「鎌鼬!」
「二人同時とは…」
「「──ッ!」」
予め想定した通り、光壁が二つの攻撃をいなすようにして弾き飛ばす。
「ッ!アホちゃうんかあの壁…!」
「…貫けない。」
「終わりですよ。4組の方々──。」
その瞬間、動物の嘶きのような「ぴィッ!!」という声が響く。
「──…は?」
周りから木々が飛んでくる上に、マナコアの制御が上手く行かなくなる。
(戦闘向きでないと資料にはありましたが…妨害系…ですか。…小癪な。)
だがその実力差は歴然、いくら束になろうとも、SSランクの前では無意味に等しいように薙ぎ払う。
「…っ…こりゃちょっと無理やわ…」
「…。ご、めん」
『戦闘不能を確認。ミィ・ラシール ルイネ・セフィル リタイア』
「さて、先ほどで地上にいた方々はやりましたが…」
眼前を見ると、離れた位置でぷるぷると震えつつ低ランクの契約獣が4匹。
(鳥、鹿、兎、小人…なんとも戦闘不向きな…。でも)
「…見つけましたよ。副リーダー、セリアさん」
ニコっと木の上にいたセリア・レインを見据える。




