第7話 「手料理をお友達に」
ガーバント先生に教えられた管理室で手続きを済ませ、私たちは調理室へ向かう。
「学園って広いですね……。」
「慣れたら何とかなるで。」
「……迷う。」
「ミィさんもですか?」
「……うん。」
「単純にミィの場合は他興味ないからやろ」
「…そうとも言う。」
そんなミィさんを見て苦笑しつつ、調理室の道中、そこには食堂の方へ歩いていく同級生の方々3人と目が合う
「……Gの?」
「あいつ調理室まで使うのか?」
「許可証あるの?」
「正式にガーバント先生から許可を頂いておりますわ。」
ルーテリアさんはすっと私の前へ出て、腕を組みながら言った。
「あ、えーと…ルーテリア様。そんなGと一緒に…」
「あら、私の行動に問題でもありまして?」
「い、いえ……失礼しました。」
三人は視線を逸らし、そのまま食堂の方へ歩いていく。
「なんやのあいつら」
その光景を見送りつつ、ミィさんに袖を引っ張られる。
「…セリア、ごはん。」
「あ、はい。すぐに作りますね」
4人で調理室に入りつつ、私は料理道具を見ていく。
「色々ありますけど…若干刃に劣化が見れますね…。ちょっとだけお時間をください」
そういって砥石を探し、無かったので陶器の底を念入りに洗って砥石代わりにして研いでいく。
「はぁ~…器用やなぁ…。そんなんで研げるんや」
「本当は砥石そのものが欲しいですけどね」
「セリアさんの村にはありましたの?」
「はい。一家に荒いのと細かいので一つずつありましたね」
「…鍛冶屋みたい。」
「流石にそこまでではないですけどね?」
簡易的に研いだ後、水で改めて野菜なども含め、包丁も洗い調理をするために火をつける所からしていく。
「…ふぅ」
そっと両手で包み。
ぽっ
炎を灯す。
調理室の少し開いた扉の外。
ガーバントは腕を組み、音を立てないよう静かに中を見つめていた。
(……やはり詠唱がない。)
セリアは誰かと話すように自然な動作で火を灯した。
詠唱。
魔法陣。
補助触媒。
そのどれも存在しない。
小さな青い炎は鍋底だけを静かに温め続ける。
揺れない。
大きくもならない。
小さくもならない。
(偶然ではない。)
(制御ではない。……固定しているように見える。)
「ん?セリア、今詠唱した?」
「へ?何か言いました?」
「…詠唱、無い」
「~?詠唱…ですか?」
「…まさか無詠唱でできますの?」
「いつもこうやって火を起こしてたので…?」
そう言いつつ自前の味噌を水に溶きながら菜箸で整えていく。
「なぁルーテリア。セリアってもしかして無詠唱でできるんが普通やと思ってない?」
「あの雰囲気からすればそうですわね。」
「…測定不可、確かあった。」
「そう言えばなんか最初に部屋で言っとったなそんな事…」
「ふんふふん~♪」
うちらがそんな相談しとる時も、当の本人はめっちゃ楽しそうにしながら料理作っとるし、今聞くのものなぁと思いつつ見守る事決めてとりあえず静観する事にした。
小さな青い炎は鍋底だけを静かに温め続けている。
「後はこれもこうやって…」
使ってよさそうなものと自前の野菜を組み合わせ、ソースを新たに作り味噌田楽を作り、お肉を香ばしく焼く。
サラダを盛り付け、芽を取った芋は肉と一緒にじっくり煮込む。
その間に、お米も炊き上げていく。
「お待たせしました。故郷の味を再現したものですけどね」
作った品々を炊いたばかりのごはんと一緒に並べていく
「…これはまた。割と豪華ですわね」
「…いただきます。」
ミィさんは早速一口食べる。
「…。」
先に率先して食べた後、黙々と食べ進めていく。
「いただきます♪ んまっ、めっちゃご飯進むやんこれ!」
「頂きますわ。 ───これは驚きですわね。優しい味ですわ。」
「ふふっ。気に入って頂けて良かったです」
私も皆さんと一緒に食事を楽しみ、気付けば全員のお皿が綺麗に空になっていました。
「ふぅ…めっちゃ旨かったわ♪」
「すごく美味しくありましたわ」
ルーテリアさんは口元をハンカチで拭きつつ言う
「……苦しい。」
気付けば、ミィさんは誰よりもたくさん食べていた。
「いっぱい食べてくれて作り手としては嬉しいですけどね」
お茶をそっと皆さんに出す。
「…朝のお茶。これ好き。」
「これもめっちゃ旨いな?」
「紅茶とは色々違いますのね。でも、すごく落ち着く味ですわ」
私は微笑みつつ湯呑を傾け、ほっと一息つく。
その後、洗い物を終えた四人は午後の授業へ向かっていく。
ガーバントは誰もいなくなった調理室を静かに見つめていた。
鍋が置かれていた場所は、まるで最初から誰も使っていなかったかのように綺麗に片付けられていた。
(……やはり違う。)
火力調整ではない。
維持でもない。
固定。
教本にも、論文にも存在しない魔法制御。
(報告書だけでは分からなかったが……。)
「測定不可…か。」
その意味を、ガーバントは少しずつ理解し始めていた。




