第6話 「実技試験」
キーンコーンカーンコーン。
鐘が鳴ってすぐ、私の所にミィさんが歩いてくる。
「…次、移動。」
「あ、はい。行きましょうかミィさん…って引っ張ったら危ないですよ…!?」
私は半ば拉致される形でずるずると連れられて行く中、前の席にいたルーテリアさんとルイネさんとも合流する。
「ほな、移動しよか。実技試験やってな?」
「演習場へ向かいますわよ。」
そんな光景を見ながら周囲はヒソヒソとする。
「またAランク組と一緒だぞ…」
「いったいなんでだ…?」
「パシリとかにしては距離感近いしな…」
私はミィさんに手を引かれつつ演習場へ。
運動ができる広い場所に他の皆さんも集まっており、私は最初にあったランク別の席順の事もあり、後ろの方へ。
(ここからでも問題なく見れるくらい視力がよくて助かりました。)
そう思っていると前にガーバント先生がホワイトボートを持ってきて立つ。
「次は身体能力測定を行う。」
「魔法使いに身体能力など必要ないと思う者もいるだろう。」
「だが、それは三流の考えだ。」
「魔法は常に使えるとは限らん。」
「魔力切れ。」
「対魔法結界。」
「魔物との接近戦。」
「そして逃走。」
「その全てに肉体は必要になる。」
そう言いつつボードに書いていく。
「本学園には十一の学科が存在する。」
「騎士科。」
「魔法科。」
「治癒科。」
「錬金科。」
「魔道具工学科。」
「魔物学科。」
「戦略科。」
「指揮官科。」
「召喚術科。」
「呪術研究科。」
「そして一部のみが知る特殊科。」
「以上の事を身体測定をした後、おすすめとして各自に提示する。勿論、決めるのはお前たち次第のため、確定されたものではない」
そうして始まる身体測定。
50m走、持久走、握力、跳躍、バランス、剣の素振りとボードに書かれ、順番にそれぞれが項目をやっていく。
(ミカヅキ村も山にありましたからね。体力には自信はあります!)
まずは50m走。3人ずつの出走という形でした。
最初にルーテリアさん達上位の人たちから。
「…ふぅ。」
「始め…ッ!」
ルーテリアさんは相当速く、Aの中でもダントツでトップを搔っ攫う。
「ふむ。流石に鍛えているな。…次。」
ガーバント先生はそれぞれの記録を入れていく中、次の出走者を呼ぶ。
「ほなうちの得意分野やし、気張って行こか…!」
一瞬で速度を上げ、他の追従を許さぬぶっちぎりの一位。
「ま、こんなもんやな?」
「ふむ。身体能力は一つ抜けているな。…次」
そうやって次々と終わっていき、最後に私の出番が来ました。
「ふぅ…。…よしっ。」
息を整えて開始地点に立ちます。
「では位置について、よい。始めッ!」
(わっ、平たい所だとこんなに速くなるんですね…!)
私は山道を何度も往復してたので、何時もより速度が出しやすい事に少し感動していました。
そんな光景を見て、周りは。
「…おいマジかよ。Gだろ」
「ルーテリア様より身体能力高いのか…?」
ガーバントは順位を書き終える。
「(……学年二位。魔法ではなく純粋な身体能力か。)」
順位はルイネさん、私、ルーテリアさんという順位でした。
「…っ。まだまだですわね。私も。」
ですがその横で。
「……けほっ。」
ミィさんだけあまりにも顔面蒼白になって膝をついていました。
次に持久走。
(いやぁ。山道に比べると平坦なので全然いつまでもできますね~)
涼しい顔で走っていると前の方にミィさんが見えてくる。
「……むり。うぷっ…。」
「へ?!ミィさん?!」
途中でその光景を見かねたガーバント先生はミィさんを棄権という形で中止させ、レーンから外していました。
「………。」
「おーい…。生きとるかぁ~…?」
ツンツン。
「…。アカン、ピクリとも動かんわ」
「保健室へ運びますわ!」
「あの、ミィさん…大丈夫ですか?」
私は覗き込んで安否を確認したところ…。
「…あと五分。」
「…寝とるやないかいっ!?」
頭を叩いてツッコみをされ、「…痛い。」とジト目でルイネさんを見るミィさん。
そんなミィさんを他所に次々に測定していきます。
握力や跳躍は割と上位くらいで、基本は上位に入っていました。
「では次、バランス感覚を見るぞ。平均台で余裕そうなら縄の上でやってもらう。」
そういって次々に5人ずつでやっていきます。
最初にルーテリアさん達。
「…ふぅ」
「おっと…結構ゆれるなぁ…。」
ゆらゆらと揺れる縄の上で二人とも立っています。
「…あっと…ん。」
ミィさんはふらつきながらもなんとか平均台でやっていました。
「では次」
(縄梯子みたいなものでしょうか…?井戸の中の掃除によく使ってましたが…?)
そう思いつつ、縄の上に足をかけて合図を待ちます。
「では各自、始め」
ゆらゆらと揺れる縄の上に立ちすぐにわかる。
(あ、これ揺れなくても大丈夫そうですね」
私は何となく目を閉じて呼吸を整える。
(やっぱりこういうふわふわっとした感覚だと、波の上にいるみたいですね…)
ガーバントは思わず眉をひそめる。
(目を閉じた…?)
縄は風もないのに小さく揺れている。
だが、その上に立つセリアだけは微動だにしない。
まるで板張りの床に立っているかのようだった。
(……どういう体幹をしている。)
「そこまで」
その合図と共に私はスッと降りて深呼吸をする。
その後の剣での実技は案の定素人同然で全然言われた通りにできませんでしたけど…。
「放課後に纏めてそれぞれの適正を配る。各自の体力は常々知っておくように」
そう告げ、授業が終わり、お昼になりました。
「…やっと終わった。…お腹すいた。」
「昼やしなぁ。食堂買いに行こか?」
「…ん-。作れないでしょうか。料理」
「ん…?セリアが作るんか?」
「あ、はい。ここに来る前に故郷で野菜を貰ってたので、寮に置いてるんです」
「…食べたい。」
「基本は学食が基本ですわよ。でも野菜でしたら確かにそのままだと腐りますわね…?」
「ほな調理室もあるみたいやし、そこでセリアの手料理皆で食べへん?」
「ふふっ。それなら腕によりをかけないとですね!」
三人が調理室へ向かおうとした時。
「待て。」
振り返るとガーバントがいた。
「学園の調理室は許可制だ。」
「あ……そうなんですね。」
「私が許可を出す。」
四人が少し驚く。
「食材を持ち込むなら管理簿への記入だけしておけ。」
「火の扱いには気を付けろ。」
「ありがとうございます!」
セリアは深々と頭を下げる。
ガーバントはそれだけ言って踵を返す。
(……もう一度、あの炎を見てみるか。)




