第65話 「2組VS4組」
レオニダスは地形に降り立った後、周りを見る。
「さてと……」
視線だけをゆっくりと動かすと木々。岩場。開けた場所。
場所的には少し小山の頂上付近に出たようだが、水が流れる音が響いていた。
「……森林ステージ…場所的には攻撃には向いてない感じか」
そう呟きながら、足元の土を軽く踏む。
「レオニダスさん、あの…どういう作戦で行きますか…?」
「場所的には水が流れてるのもあって攻めにはあまり向いていない場所だが…奇襲系なら強い地形だ」
実際、高台では視界は広がるのもあり、ルート取りは容易だったが、目標が。
「まずは半々で分けて行くぞ」
全員がレオニダスの指示の下、2組はそれぞれ動き出す。
動いていると2組のもう一人のリーダー、アリアンナが来る。
鋭く知性的な銀眼、ポニテにした漆黒の髪男装麗人風の見た目をした彼女が通ると、他の女子の目がちらほらとそちらに行く。
「レオニダスさん。斥候は先に行きましたが相手の位置がどこか特定するまでの間はどうしますか?」
「うちのクラスは戦闘向きが多いからな、準備運動がてら体を動かしておく程度で良いだろう」
アリアンナは頷いて少し前に出る。
歩いている最中、他生徒たちが何か言っていた。
「向こうはSランクいないんだろ?じゃあ楽勝じゃん」
「1組と3組の時はSSがドカンとひっくり返したんだから、Sランクがいたらいけると思うが」
「そんな対策も無しにするわけないでしょ…これだから男子は」
「何を。お前だって──!」
そう話しているのを見て「騒ぐな。気が付かれる」とレオニダスは溜息交じりに言う。
数分すると、斥候部隊が4組らしき影を見つけたという情報が来る。
「方角は?」
「北東に800m程度かと」
「ふむ…ならば幅を取ったうえで包囲する形で行こう。向こうは平均してる分突出したのはいないはずだ」
そう言うレオニダスに疑問を浮かべるようにしてアリアンナが言う。
「もし突出した生徒がいた場合はどうしましょう?」
「その時は集中砲火だ。それが戦力の中心の可能性があるからな」
その指示に頷きつつ一行は間隔を開けて進軍する。
──。
程なくして影が見えるが…。
「…なんだこれ」
なんと森の中に岩の壁が複数ある事が確認されていた。
口々に「こっちにもあった」と斥候部隊からの発言が集まる。
「ただの土壁のようだが…」
奇妙な事に、それぞれが一枚ではなく、複数点在する形で広がっており、壁を隔てるにしては不格好なものだった。
「…目印じゃね?」
「は?こんな目印あるか?」
「低ランクの知識じゃそりゃこの程度でしかないと思うが」
そんな声が聞こえる中、レオニダス自身は嫌な気配がずっとしていた。
「…何をしようとしている。4組の連中は──」
そう言っていると斥候からまた情報が来る。
「馬車が来ます!車輪は無かったですが!」
「「「は?」」」
そう言い終わるが速いか、ドドドドドという音が響く。
「な、なんだ…!?」
音のする方を見ると、何やら契約獣が走る形で何か筒状の物を乗せた馬車のようなのに乗る生徒たちが数組いた。
「迎撃用意ッ!」
そう言うとクラスの前衛陣が前に出て後衛組が魔法を詠唱して放つ。
「双水刃!」
「鎌鼬!」
「岩槍!」
放ったそれらの攻撃を浴びせると土壁に隠れるようにして移動していきなり方向転換をする。
かと思った瞬間、何かが向こうから弾丸のように撃ち込まれる。
「ぐあっ!?」
「なんだ!?」
着弾した瞬間、周りに流水がそこを起点に溢れだし、二発目が来た瞬間それらはガッチリと氷へと変換される。
「なっ、合わせ技だと…?!」
刹那、周りには植物が一気に蔦を走らせて他を拘束していく。
「何が起こっている…!」
周りには複数の馬車のようなもの。
いや、筒から撃たれている所を見るとあれは…
「…戦車。この土壇場で戦車を作ったのかあいつら…!」
そう叫ぶとご名答と言うようにして更に攻撃が放たれる。
防御をするも、ここは人数が多すぎて範囲攻撃をするわけにもいかず、レオニダスも打開策を考えていた。
「突破口を開くぞ。前方をなぎ倒す!──氷竜の息吹!」
前方に向かって陣を作り、退路となる道を無理矢理に切り開く。
「た、助かった!」
「お前ら行くぞ!」
「クソっ、なんなんだよアイツら小細工ばっかで…!」
それぞれが魔法を利用して罠を切ったりして移動を開始するが。
「くそっ。つかず離れずでずっと追ってくる!」
そう一部が言うとアリアンナが挟むように言う。
「レオニダスさん。二手に分かれて撃破しましょう。分散しないとまともに戦えません…!」
軽く頷くとレオニダスは全員に通達する。
「全員散会、各個撃破をする。引っ張っている契約獣を足止めすれば止まる!」
「「「了!」」」
そう言って散会し、それぞれが各個撃破をしに行く。
──。
「作戦通り来ましたわよ!」
「なら!移動しながら嫌がらせ攻撃をして下がりましょう!」
「おっけー!じゃあうちらがちゃちゃ入れる番やな!行くでライボル!」
雷鳴のように一鳴きしてから軽く離れて、接近してきた生徒に対して雷光攻撃を同時に放つ。
「うぐっ痺れ!?」
「コイツ、小癪な!?」
「ほなうちらは逃げさせてもらうでー!」
ルイネさんが注意を惹きつけて上空に飛んで空の太陽の光で目暗ましさせつつ、私達の所に帰ってくる。
「んで、こっからどうするんやったっけ!」
「シルヴァンが走っている間は攻撃は最小限に致しますわ。セリアさん、私がマナ供給をしている間、制御は頼みましたわよ!」
「わかりました!と言っても1回しか練習できなかったですが!」
「セリアやったらいけるいける。ほな、このまま誘導すんで!」
そう言いつつ誘導先に場所まで散会した生徒たちを導くようにして土壁を経由して攻撃されないようにしながら動いていく。
程なくして、皆さんがいる場所へと誘導できていく。
「揺れますわよ!」
その言葉に「はい!」と言いつつ皆を抱きかかえて落ちないようにしながら必死に捕まる。
シルヴァンちゃんが飛ぶと、地面に空いた大穴を飛び越えて向こうの平地まで着地すると同時に衝撃が来る。
「待てお前ら…!?」
追って来た生徒たちは丁度死角だったのもあり、落下すると同時に妨害組の攻撃が始まる。
「「「微重圧!」」」
数人が広範囲に重量魔法を放つと、空中に投げ出されてしまった生徒たちが倍の速度で叩き付けられた瞬間、パリンッと生命結界石が砕けて転送される。
その瞬間ゼクスさんの使役する動物たちが一斉に襲い掛かって後ろの留まった人物たちも刈り取る形で倒す。
──。
「…やってくれたな。4組」
レオニダスが担当した生徒たちは範囲攻撃によって倒し、転送させた後、通信が入っていた。
「追っていた4分の1が罠に引っかかったか」
そう考えているとアリアンナから連絡が来る。
「こちらも制圧完了。ですが何機いるかまでは聞きそびれました」
「そうか。なら、全面的に火力押しで叩き潰す方向で動く。そちらは後方から潰してくれ」
「了。」
そう言ってレオニダスが踵を返し座標を決める。
「重力反転…ッ!」
重力魔法で自身の重力を反転し、上空に打ち上げるようにして指定された方角に一瞬で飛び込んでいく。
──。
「そろそろか。来るぞ」
ギルフォードさんがそう言うと上空に飛ぶ人影が見えた。
「全員散会!広範囲が来る!」
ゼクスさんの号令もあり、準備していた私達は一斉に戦車に乗ってソリの形で散り散りになろうとした瞬間。
ギラリと上空を覆う魔法が広がる。
「セリアさん。切り離しますわ!シルヴァン!」
そう言った瞬間、手綱が外れ、私達の”本命”の魔力移動へと切り替える。
「──。隼瀬なりて、結ぶ刹那。恐み恐みも白す…!」
私はイメージを広げて、ルーテリアさんの肩に手を置いて焦りや切羽詰まった雰囲気をひしひしと受けながら、宥める様にして彼女の魔力を広げるようにする。
一度だけ練習の時に、私は他人の広がる魔力を預けてもらう形で広げる事ができるというのがわかっていた。
上空から巨大な無数の氷が飛ぶ中を私達は滑るようにして移動し、シルヴァンちゃんが氷の壁を張るようにして移動していく。
「クッソ速いなソレ!?」
攻撃を回避しつつ横を並走しながらルイネさんが言う。
「魔力消費がすごいですわ…ッ」
「せやろなぁ!?」
「とはいえッ…長くは持ちませんわね。これ…はっ…!」
実際、2週間で出来たのは暴れる程移動ができるをコンセプトの為、消費も凄い事になっていた。
「とはいえ、移動しながら杭を打たないと作戦は破綻致しますわ。やりますわよ…ッ!」
「やな!先導して誘導はするから、うちに付いて来ぃ!」
私にしがみ付くようにしてポヨン、ヒヤン、メロデ、アシス、フラワ、キナコは必死に耐えつつも、ルーテリアさんの魔力が乱れないように私は意識を集中する。
──。
「くそッ。なんだあの速さは…!」
砕氷の雨を避ける程の機動力を持つアレは、当初予定してたよりも倍以上の速度で動くソレはとてもじゃないが礫系では当てれない。
追いかける程にシュンシュンと避けるその姿を追いかけつつも、範囲を広げる。
「氷竜の息吹…!」
「──…ッ!?」
放った瞬間、アリアンナの雷光が見えた時には、もう攻撃の手を止める事が出来なかった。
向こうもこちらを認識した時には避けれない状態であり、更に標的が加速して通り抜け、仲間内で攻撃誘導されてしまう。
『戦闘不能を確認。アリアンナ・フォン・ヴァルハイト、リタイア』
「…ッ!すまない…。だが…!」
切り替えて更に攻撃しようとした時。
パスンッ…。パリィンッ!!!
何かがレオニダスの視界を横切ったかと思ったら、生命結界石が砕け散る音が響き渡った。
『戦闘不能を確認。レオニダス・ノルディン、リタイア』




