第58話 「そこにいる」
「――鏡を使えれば色々楽なんですが。」
「鏡?」
「はい。光をそこに集めると更に明るさが上がるので、そこからぱーっと他のを出せば?」
「ふむ…。となると――」
私のふんわりしたのをギルフォードさんが解釈してゼクスさんに伝えていく。
不思議と時間が経つにつれて皆さんが意見をしていく。
そうしてゼクスさんが改めて纏めている間にルイネさんが肘でとんとんとしてくる。
「なぁなぁセリア、めっちゃなんかええ感じやな?他のクラスより絶対に雰囲気良い感じやん?」
「ふふっ、そうだと良いですね。喧嘩するよりもそう言った方が楽しんで挑めますからね」
「一応戦いやねんけどなぁ。セリアが言うとなんかすっごい緩く思えるんよなぁ」
「…セリアの良い所。研究棟でもそう。」
「あれは皆さんがルイネさんやミィさん達が気にかけてくれるからですよ?」
そう話しているとルーテリアさんも来る。
「実際問題、セリアさんが居る所が雰囲気的に柔らかくなるのはありますわね」
そう言われてもそう思っていない私だけ「そうなんですか?」と首を傾げるも、ルイネさんとミィさんも頷いていた。
「なんやろなぁ。結構不思議なんよね。な?エルマ?」
そう言いながら手を引かれて「わっ!?」と小さく言ってエルマさんが引っ張られてくる。
「な、何がですか…?!」
「セリアがおるとこ柔らかくなるよな?って話やで~」
「あ、あぁそうですね…?ご飯食べてる時とか、ふわふわって感じがして…?」
同調するように「せやんなぁっ♪」と満足気にルイネさんがエルマさんに絡む。
「…ルイネは大袈裟」
「いうてミィもセリア大好きやん」
「…否定はしない」
そう言っているとゼクスさんが言う。
「とりあえず纏まった。演習場を借りて軽く合わせるなどをする。ポイントボーダーに到達している人物は午後に同行しろ」
そう言って立ちが上がり、ゼクスさんは歩いていく。
「なら、一度自由時間だな。各自準備しておくように」
そう言ってギルフォードさんも歩いていく。
「あぁ、行っちゃいましたね…?」
「…喉乾いた」
「なら、キナコにもごはんあげたいですし、食堂に行きましょうか?」
「でしたら、軽くお茶でも致しましょうか」
「は、はい。是非…!」
「なら決まりやな!ほな食堂しゅっぱーつ♪ クローディアも来るんやろ、はよこっち来ぃ」
「は?私は――…あぁ、はいはい」
私達は食堂の方へと歩いていく。
各々が注文してから戻ってきて、私の付近に座る。
「そう言うたらここGランクの席やけどもうなんか普通にうちらおるな?」
「セリアさんがここまでしか来れませんもの。とはいえ悪い気は全くしませんわね」
「…割と初期からだから、ここが落ち着く」
実際に皆さんでお食事に行くという時は毎回この席に座って皆さんと食べていた記憶が蘇る。
そうしている最中も、キナコにも手渡しでご飯をあげたりしながら微笑む。
「え…最初からずっといるの?」
そのクローディアさんの言葉にルイネさんは「そやでぇ?」と返答する。
「なんやろなぁ。最初の頃て不思議な子や思ってたくらいやったよね?」
「…一緒になって更に不思議な子になった」
「ミィさんがそれを言うと違和感ですわね…?」
「…心外」
そう言う3人を見てエルマさんが「あっは、ははは…」と苦笑する。
「エルマさんも最初は困惑してましたね?」
「は、はい…。その、今でも緊張しますが…以前よりは…?」
「ふふっ、馴染んでくれて嬉しいです♪」
そう話している中、ちらちらと目線が来ていますが、私が気が付いてみるとサッと目線そ逸らされる。
「そういえば優待券があれば皆さんも来てくれますかね…?」
「うん、そうやって思うのはセリアくらいやと思うけどええと思うで?」
そう言われながら頭をポンポンとするルイネさんに私は首を傾げる。
「…セリア、黒パンとこれ、交換」
私は「あ、はい」と言いながらお肉を少しとパンをひとかけ交換する。
「物凄い見られてるけど本当に気にせずやるのほんっと…――。」
「そのうちに慣れますわ?」
ミィさんが貰った黒パンをシチューの中にぽとっと入れてふやかしていると、出入口の方が何やら騒がしくなってくる。
「何か騒がしいですけど、何でしょうか…?」
そう言いながら見ていると普段この食堂で見ない方が来ていた。
「綺麗…」
「まるで女神様ね」
「エレア様、尊い…」
そんな声が出つつ、間から来るのは透き通った深紅、膝まで届く見事なプラチナブロンドのストレートヘア―でニコニコとした雰囲気の方が来る。
それを見た途端、尻尾を膨らませてキナコが見る。
「…?キナコ、どうしたんですか…?」
撫でている間も「ぴィ…」と小さく唸るようにして見続ける。
そうしていると目の端の方できょろきょろと誰かを探すといった雰囲気でこちらを見る。
「あら、こんな所で――」
値踏みをするように私達をその方は見ていた。
「どうも。一緒に食べますか?」
私が笑顔で言うと「ふふっ」と小さく彼女は笑う。
「いえ、今回は見に来ただけですので?」
その間もキナコは毛を逆立てた状態でずっとさっきまで食べていたのを無視して見続けている。
「…?」
彼女はそんなキナコを見ると更に「ぴィ…」と小さく唸る。
「あらあら、嫌われちゃったみたいですね?」
ニコニコとしながらそういう彼女は口元を手でお上品に隠す。
「えぇ。動物は独特の感性を持ちますものね?」
「うふふっ、本当にね。不思議だわ?」
ルーテリアさんと彼女はお互いにニコニコとしながらそう言う中、「あっ」と私は小さく気が付く。
「そういえば、自己紹介してませんね。セリア・レインです」
「あら、ご丁寧に。私はエレア・セレスティア。セレス神聖国の大公家です。」
「わぁ…行った事ない所。私は田舎の方のミカヅキ村という所の出身なんです♪」
「ミカヅキ村…――知らない場所ですね?」
「あはは、知名度が無いんですよね。皆さん知らない場所って言ってるので」
そう言うと小さく微笑むようにして「まぁまぁ」とエレアさんは言う。
「…では、私はそろそろ。」
「あ、はい。またお時間がありましたら一緒にご飯でも食べましょう♪」
ニコっと微笑んで踵を返してエレアさんは長いロングの髪を揺らしながら歩いていく。
私がその光景を見送った後に「綺麗な方でしたねぇ」と言いながらキナコを撫でるも、肝心のキナコはまだ落ち着かない様子で私の指を叩く。
「なんか…うん。セリアって…なんかほんまセリアよな?」
「なんですかソレ?」
首を傾げながら私は結局答えを教えられないまま食事を再開した。




