第53話 「職員室の仮説」
授業が終わると、生徒を返して今回の成果をまとめた資料を片手にクラウスは職員室の扉を開ける。
「いやぁ、面白い結果が取れましたよ~♪」
中に入ると出払っており、クラウス一人だったが「おやまぁ。いないですかっと」と言いながらお構いなしに鼻歌交じりに自分の席に行き、ドカッと座る。
「セリア・レインねぇ…確かに船の要素は抜けてたな。感覚としては面白い着眼点だ」
そうボソッと呟きながら早速今回の授業を纏めるために紙に書き写していく。
「いや、そもそも船上で立つ事をすれば感覚が研ぎ澄まされる?」
「てことは制御技術ってバランス鍛えるのか?」
「いやそんな事例一回も無いな。てか無いだけで相関性が無いとは言い切れないし、無関係のように見えて実はこういう事例も――」
「おやおや、随分と楽しそうですね?クラウス」
「いやぁ、楽しいも何もこんなの初めてなんで絶対今後に役に立つって思って――…?」
パッとクラウスが声のある方に椅子を回して見ると、そこには学園長のユージーンが居り、あまりのびっくり加減に少し体制を崩す。
「いつの間に!?」
「はっはっはっ、楽しそうな鼻歌が聞こえたものでね。何かあったのかい?」
「あぁ-はい。それがめっちゃ良い結果が出てですね!」
そう言いながらクラウスは水を得た魚のように今回の授業結果を言う。
「――てことがあって!その中でもそのセリアってGランクの子がローレファルスをかるーく超えて秒殺レベルで乗りこなしてて♪」
ユージーンはその光景をお茶を飲みながらふむふむと聞いていく。
「なるほど。という事は、そのセリアという生徒が思ったよりも適性があった。という事です?」
「今は一個目なんでその可能性は高いっすけどね。逆に言えば制御能力を軸にした魔道具を渡して軒並み使えるなら全般強いって証明にもなりますし♪」
「はっはっはっ。クラウス、凄く楽しそうだね?」
「こんな生徒いるとか魔道具工学を担当して初めてっすからね♪」
「なら、今後の授業方針も確定できそうだね?」
そう言うとクラウスは「はいっす」と言いながら報告書を書き上げて、席を立つ。
「喉乾いたー…。久しぶりに甘いのー飲みたいなぁ」
そんな事を言いつつ、スススーとローレファルスの机に行ってココアの袋をピッと取りながら淹れに行く。
パッと見た時には既にユージーンはおらず、湯呑も無かったが、何時もの事なので気にせずお湯を沸かす。
――お湯を入れて混ぜてる時に丁度ローレファルスが帰ってくる。
「あ、どうもーローレファルスさん」
「帰ってたのか…ってまた黙って私のを…」
「良いじゃないっすかーたまになんですから~」
そう言いながら飲むと「うん超甘い!」と言いながら自分の席に戻る。
「あ、そうそうローレファルスさん。これ」
そう言って今回の授業の資料を渡すと「どれどれ」と言いながら受け取って見ていく。
「…この議事録は虚言ではないのか?」
「全部本当っすよー。一分以内に乗りこなしてました」
「…長年の調書が秒で崩されるのは色々来るのだが」
「とか言いつつ、研究者なんてそんなもんかと」
少し口を尖らせつつ「一応私の長所なんだが…」と呟きつつも自分の席に戻り改めて資料を見る。
「とはいえ、Gだからと侮ってはいけないな。私もまだまだ、か」
「割とストイックっすよねローレファルスさん。あ、どうぞ」
そう言いながらクラウスはコトッといつも飲んでいる甘いココアをもう一個作り、ローレファルスに渡す。
「改めて自身の慢心に気が付いただけ。それ以上でも以下でもないさ」
そう言いながらも受け取り、飲む。
「できれば冷たくしてくれると嬉しかったんだが」
「そこはお得意の氷の結晶を量産するので調整してもらって♪」
「あれはストレスが溜まった時の癖だ。」
そう言いながらも指先から氷を魔法で生成してココアに入れる。
「――あ、そうだ。研究棟でセリアと同じことさせてる組いるっすけど、アレは?」
「経過報告の事か?」
「はい。ある意味クローディア処罰を延期に賛同した身として聞いておきたいなーと?」
「…それを言われると弱いな…はぁ。」
そう言いながら机にしまっている報告書を開いてまとめた資料を見せる。
「健康状態は良好、7日以上既にいる3人は魔法の感覚が少し変わったと言っていたな」
「ほぉほぉ…所作でそこまで変わるもんなんすねぇ…」
そう言いながらパラパラと見ていく。
「めっちゃ日常的っすね。このミィに関してはご飯とか寝た時にぐっすりとかあるし…」
「あぁ。私も正直言えば意味は解らんが、実際に結果は出ているのが現状だ」
「となると、更なる実験を今後?」
「するつもりだが、そろそろ行事も迫ってきてるしな」
それを聞くと「あぁーありましたねぇ」と頷く。
「年間行事の一つ、学年対抗戦…。今回は粒がそろっている。Sランクの問題児、1クラスのヴァルザードと、同じくSのヴィクトリアに、2のSのレオニダスと、3クラスのSS、エレア…。」
「唯一4クラスだけいないんすね。そうなると」
「あぁ。今回はな」
「てなると、今回のは荒れそうっすねぇ…」
「とはいえ、私は今回に関しては少し面白そうになると思っているがな?」
そう言うローレファルスをクラウスはポケットに手を入れながら首を傾げる。
「それはなんでなんです?流石に直観とかそんなんじゃないっすよね?」
「今回の議事録を見てだな」
そう言いながら資料を新たにファイルから出していく。
「ん?…これって、体験してる子らのです?」
そこにあったのは以前のランク仮定の時のデータと、以前ランク戦での戦闘を纏めたものだった。
「…ん?あれ、精度とか増えてません?でも誤差のような…。」
「以前まではマナコア自体は成長しないと仮定していたが、それ以外が伸びるかもしれない、と私は仮定した」
「は~…てことは…もしかしたらSに勝つかも、みたいな?」
「私はあると思っている」
「…じゃあ全員帰って来た辺りでこれ見せてみます?」
「メルフィス辺りは嬉々としてセリア組を指名するだろうな」
「はははっ、違いない♪」




