第51話 「明日の準備」
鑑定が終わった頃、私はテレサさんにお礼を言って合流する。
「お待たせしました。さぁ、今日の晩御飯の仕込みも兼ねて行きましょうか」
「おー…待ってた~」
「ミィ、待っとる間ずっとお腹減ったーて言うてたもんな?」
「なんなら…その、一番セリアさんの料理気に入ってますからね…?」
「えぇ本当に。興味を普段示さないのに、珍しいですわね?」
「…食は大切。」
「ふふっ。それならまずは採れたての山の幸を早速帰って調理しないとですね?」
そう言いつつ私達は研究棟に戻る。
そんな中、クローディアは正直言ってセリアと言う存在がますますわからなくなっていた。
ランクを気にしない、なんなら受け入れている。
それでもなぜかあんなふうに迫害どころかグループの中心にいる。
そして…。
(はぁ…なんで付いて行っちゃうかな…)
そう思いつつ「クローディアさんも、行きますよ~」と言うセリアの声に肩をすくめながら歩き始めた。
その頃、クラウスは明日の授業に使う魔道具を職員室で見ていた。
「ん-。試験的とはいえ、危ないかなぁ」
「クラウスなんだ、それ」
ヴェインがポケットに手を突っ込みながらコーヒー片手に来る。
「ん?あぁ、移動用のボードを作っててね。一般流通してるホバーボードより練習用に使えるかなって調整してるんだけど…めっちゃ暴れ馬になっちゃってさ?」
「暴れ馬…ねぇ?そんなになのか?」
「すくなくとも、Aでもだいぶ乗りこなすのに時間かかるくらいには微調整必要になってなぁ」
「…で、それを授業で?」
「制御技術だけ卓越してるってなってたGがいたでしょ。アレができるなら他の低ランクもやる気になるかなぁって」
「そういう博打系するから爆発事故多発するんじゃ…?」
「良いだろ。安全には配慮してるんだから。だからほら、実験する時にはランクでも使ってる生命結界石も渡すしな?」
溜息をつきながらヴェインはコーヒーを飲む。
「でなくとも、この前の魔力暴走事件の犯人がクローディアだってわかったとはいえまだ一週間経ってないんだから自嘲はしろ」
「自嘲してちゃあこの分野で、配属されてないよっと」
カチャカチャと内部構造をいじりつつ、実際に起動実験を軽くして動くかを試す。
「まぁそう言うと思ったが…」
そう言っていると紅茶を飲みながらイリスが見に来る。
「でしたら、まずはクラウスさんが一番手ですね~?」
「大丈夫だ。一回やって爆破した」
「あらあら」
とニコニコしながらサムズアップするクラウスを見るイリスという光景を見るヴェイン。
「…割とドSだよなイリスって」
「そんな事はないですよ~?」
「人畜無害に見える奴ほど怖いとはよく言うよ」
「ヴェインさん?」
「じゃあ俺は仕事戻るわー」
そう言いながらコーヒー片手にヴェインは足早に歩いていく。
「ふふっ、恥ずかしがりですね~?」
「逃げただけだと思うぞ~?」
「あら、クラウスさん。なんと?」
「イエナニモナイデス」
そうしていると予鈴が鳴る。
「さて、そろそろ2年生の授業に行ってきますね~?」
「おう行ってらっしゃーい。」
そう言って軽く見送ってからクラウスは作成中の魔道具に目をやり、ゴーグルをつけ直し、口笛を吹きながら作業をしていく。
「さてと。改良改良。願わくば学園生の底上げーっとぉ」
カチャカチャとまた触っていると、ローレファルスが来る。
「ん、まだそれを改造してたのか」
顔を向けずに先に回路の調整だけしていく。
「あ、どうもローレファルスさん。えぇ、明日の授業に使おうと思ってて」
「明日…二時限目のか?」
「はい。丁度あのセリアっていう子の制御がどれくらいかわかりますしね?」
ローレファルスは甘いココアを飲みつつ、少し考える。
「ん-…なら、安全面は配慮するだろうから任せるが、収穫した資料はこっちにも回してほしい。研究棟のと重ね合わせたくてな」
「了解ですっと。よし、こんな感じかな」
そう言いながらゴーグルを上げて一息つく。
「じゃあ早速、ローレファルスさん、お得意の精密制御でやってくれませんかね!」
「自分でしろクラウス」
「自分でやって失敗したからですよ。それに利用者は多い方が調整しやすいですし?」
「…それらしいこと言って、調子が良いな全く」
溜息交じりにローレファルスは「はいはい」と頷く。
「よし決まりっすね。じゃあ早速行きましょうか!」
「苺パフェを所望する」
「大盛り用意しまっす」
少し口を尖らせつつもココアを飲み干し、ローレファルスはクラウスと一緒に試験区域に行く。
「とはいえ、今回は出来る限り魔力を持ち込んだ形のじゃないんで、そこは込めなくて良いです」
「ふむ…という事は、魔道具にマナを持たせるという方法か?」
パチンっと指を鳴らしつつクラウスは「そういう事ッ」と言いながら微笑む。
「周りの性能も上がるし、なんならランク云々で今のご時世人手不足っすからねぇ」
「あぁ。年々強いのが少しずつだが増えているからな」
「ニュース記事でなんか負傷者も増えてるとか何とか出てましたしねぇ」
頷きつつ、ローレファルスは片手間にマテリアルプレートを開く。
「今回の一年は粒ぞろいだが、その分問題児も多いからな」
「あぁ…いましたねぇ、Sで厄介なの」
頷きつつローレファルスはスクロールする。
「こっちとしては出来る限り下の燻っている奴らも育ってもらわないと困るからな」
「ははっ。じゃあそれこそガジェット関連なんとかしないとですね?」
そう言いながら、改良したフローティングボードを持って二人で試験区域の扉を潜る。




