第50話 「新たに加えて」
授業が終わり、食事終えた午後の事。
私達は依頼をすべく受付嬢さんのいる学園施設を訪れていた。
低ランク窓口の看板のある区域に行くと、ちらちらと何度か見ている受付嬢さんがいた。
「あ、いらっしゃいませー!本日はどういった依頼を受けますかー?」
明るい琥珀色の瞳に、栗色のショートボブで小さくサイドを編み込んだ姿が特徴の受付嬢さん、テレサさんが担当してくれる。
「始めまして。えーと…採取や猫探しとかの簡単な依頼ってありますか?」
「ん-、そういう系統ですかぁ…となるとー…」
そう言いながらファイリングされたのをパラパラと捲り、一枚の紙を出してくれる。
「丁度最近、食用キノコが足りないから納品してくれというのがありますね」
「食用キノコですかぁ…」
「とはいえ、キノコは似た見た目が多くて中毒を起こすものや毒があるものなどを持ってくる人もおり、そういった知識が無いと…」
「なら私、山育ちで知識もあるので良いでしょうか?」
「そうなんですか?失礼ですけど、どこ出身です?」
「ミカヅキ村という小さい所ですね」
「ミカヅキ村…聞いた事ない地名…」
相変わらずの私の出身地の知名度が無いのを肌で感じつつ苦笑する。
「ん-…まぁ山育ちなら大丈夫でしょう!わかりました受理しますね!」
判子を押してもらい、私はお礼を伝えて早速キノコ採取に向かう。
勿論、私、ルーテリアさん、ルイネさん、ミィさん、エルマさん、そしてクローディアさんの計6人で。
――付近の並木が立つ山。
5月に入りたてという事もあり、1月が経ったという実感が森中に入ると広がっていた。
「…山。」
「いや感想まんま過ぎるやろ」
「…花。」
「直球な感想しかないな?!エルマにお手本見せてもらい!」
「え、えぇっ!?あ、あぁー…じゃあ…。」
そう言いつつエルマさんはきょろきょろと周りを見て少し考える。
「あっ。風が通り抜けると五月特有の甘い蜜の乗った風がふわりと鼻孔を通り抜けて、澄んだ空気が美味しいですね…。とか…」
「おぉ~…」
ぱちぱちとルイネさんとミィさんが手を叩く。
「案外エルマさんは詩人が向いているかもしれませんわね?」
「し、詩人ですか?!」
「ふふっ。確かに、エルマさん色々な本とか読んでますもんね。きっとなれますよ、詩人家さん」
「そ、そうかなぁ…えへへ」
少し照れるエルマさんを見つつ私達は森の道を歩いていく最中、クローディアさんが言う。
「それで、どうやってキノコを見つける気…?」
「はい。フラワの力を借りようかなと」
「フラワ…?」
私は魂結びの呼子石を利用して、フラワに呼び掛ける。
すると、すぐにアシスを乗っけたまま出てきてすりすりと私にくっつく。
「ふふっ。今日はよろしくお願いしますね?」
キナコも手を上げて挨拶するとフラワとアシスは任せて言うように胸を張る。
「食べられるキノコが欲しいんですけど、ありますか?前に食べてもらったあの野菜サラダにも入っていたのですが」
その様子を見つつクローディアさんは「そんなんで本当にできるの…」と半信半疑といった雰囲気で言う。
「というか、人間の言葉なんてわかるの?精霊でしょ。」
フラワとアシスは首を一度傾げると少し足踏みをしてから踵を返して歩いていく。
キナコも「ぴっ」と鳴いて私の頭の上に乗っかるのを見てから早速フラワ達に付いていってみる。
割と獣道がありつつ、ミィさんが道を補強する形で切り開いていく。
「…ルイネ、おんぶ」
「まぁうん。その変わりに道作るんは頼むで?」
「…ん。善処する」
――そんな事を言いつつ20分程。
「はぁ…はぁ…。本当に、こんな山道に、あるんでしょう、ねぇ…!」
クローディアさんが息を上げながら半ば絞り出すように言う。
「はい。一応この先みたいですね?」
「てかあんたのスタミナ化け物なの…、Gよね…!?」
「山育ちで往復は何回もしてたので、これくらいでしたらへっちゃらですよ♪」
皆さんも歩いて少し疲労の色が見えてきた頃、とある大きな木の所でフラワ達が止まると「きゃんっ!」っとフラワが鳴く。
「あ、到着したみたいですね」
そう言うと「言ってる事わかるの…?」と言いつつクローディアさんもその方向を見る。
「すごい…い、いっぱいキノコがあります…!」
そこにはキノコが群生しており、依頼の品である白いキノコも自生していました。
「本当に野生の勘はすごいですわね」
「全くやな。動物さまさまって感じやわ」
「…研究棟用も、取りたい」
「なら少し多めに採取していきましょうか?」
そう言いつつ籠を置いて虫食いなどが無いかを指の感覚で探りつつ取っていく。
「…何してるの?なんか触っては離してみたいなの」
「虫食いが無いかを調べてるんです。このキノコ自体美味しいですから、虫さんも食べて栄養補給するので」
「探知とかしなくてもわかるものなの…それ」
「元々私は魔力量が無くてできませんからね。ほぼほぼ直観です」
そう言いつつキノコを採っていく。
「…直観…。魔法も使わずよく生きて来れたわね…」
「皆さんが言う魔法みたいなのは…えーと…種火くらいですかね?よくしてたのは」
「え、それだけで生活なんて出来るの…?」
「はい。それに昔はそれすらも出来ずに、火起こしも手作業でしたので」
「火起こしを…手作業…」
そうこう言いつつ、ある程度キノコが集まり、ひと段落ついた頃。
「これくらいで良いですね。だいぶ取っちゃいましたけど」
「…今晩のもある。楽しみ」
「とはいえまた1時間足らずで採取まで終わりましたわね?」
「せやったら果物とか探して食べながら帰るとかどうかな?」
「あ、良いですね。アシスとフラワも一緒に食べたいですしね?」
そう言いながらアシスとフラワを撫でると双方嬉しそうにする。
「じゃあ、キナコ、果物の匂いとかってわかりますか?」
スンスンとキナコが周りの匂いを嗅いでいくとくるくると手の中で回ってピタッとある一点を見て立ち止まる。
「あっちですね。行ってみましょうか」
「そんな都合よく果物なんて…――」
数分後、実際に赤い林檎の果実が生った木があった。
「――…本当にあった。」
「ほな人数分取ってくるわ。跳躍風!」
ルイネさんは木々に飛び乗って綺麗な果実を何個か取ってくる。
「こんなんでええかな?」
「~…んー…綺麗そうなので大丈夫かと」
「なら、切り分けた方が食べやすいですわね。お皿もこちらで作りますわ?」
そう言ってルーテリアさんは魔法陣を形成していく。
「水盾、氷冷却」
ルーテリアさんは色々と魔法を組み合わせて、氷の器やまな板や包丁を作っていく。
「そんな魔法あったっけ…」
「今掛け合わせただけですわ。」
クローディアさんは言葉を失いながらも、それらを見て、みんなで軽い昼食を食べた後、テレサさんのいる受付へと帰る。
「――あ、おかえりなさいませ!速かったですね!」
そう言って向か入れてくれるテレサさんに鑑定をしてもらうためにどさっと出す。
「…は、え…?!こんな量どこから!?」
「契約獣さんに頼んだんです」
「な、なるほど…。わ、わかりました!今すぐ鑑定します!」
――その様子を見てクローディアは色々と納得せざる得なかった。
(これがコイツの秘密…いや、人柄って言った方が正しいのかも…ね)




