第49話 「自業自得」
「それ仕置きになるんです?」
ルイネさんが言うとローレファルス先生が「さあな」と答える。
「少なくとも、セリアと同じ生活をしろ。というのは本人にとっては一番だろう」
「…同じ…生活…?」
クローディアさんがそう言いつつ私達を見る。
「…どのみち、言えば友達は消える。」
ミィさんが若干辛辣な事を言うと、うぐっとクローディアが噛み締め、目線を逸らす。
「まぁ…今後しない保証もありませんものね。監視下に入れるという名目なら私も構いませんわよ」
「理解が速くて助かるよ、ルーテリア」
ローレファルス先生はカップを傾け、残ったココアを飲み干す。
「話は以上だ。クローディアも早急に纏めて研究棟に行くように」
「は、はい…」
そう言って私達は準備室を出て廊下を並んで歩き始める。
「色々言われると思いますけど、これからよろしくお願いしますね、クローディアさん」
「…。」
返事はなかったけれど、仲良くなれたら嬉しいなと思いつつ、私は今日の晩御飯を作るべく、食材を提供してもらうべくガーバント先生の案内を受けに行く。
――時間は過ぎ、研究棟。
新たな人物、クローディアが同席する事になりつつもセリアを含む6人は食事を共にしていた。
「…今日のも、美味しい」
「あ、あのセリアさん。これすごく美味しいです…!」
「ありがとうございますエルマさん。肉じゃが、気に入ってくれて嬉しいです」
そんな事を交わしつつ、クローディアもこの異質とも呼べる空間で食事をしていた。
味自体は整っており、いつも食べるオーク肉のデミグラスハンバーグや、角ウサギのローストのような味とは異なる献立の料理は、あの時のカレー程度しか味わっていないのもあってか、今回のセリアの食事も染み渡るような不思議な感覚があった。
「まぁ、うちは先生が決めてセリアが納得したんやったらなんも言わんけど。次なんかあったらタダじゃおかんからな」
「…ッ…。え、えぇ…」
何時もの演じる気概もなく、素の状態で頷く。
「確かに、そうですわね。ただ。本来の目的は軽く聞きましたけれど…嫉妬でしたの?」
「…そう、かも」
箸をきゅっと握りつつ茶碗を置く。
「…今でも、ありえないと思っているし、分かり合えないとも思っている…でも」
「でも、なんや?」
「…今でも不正してるんじゃって思ってる」
その答えをセリアは真っすぐ見ながら聞く。
「不正…ですか…」
「…えぇ。Gじゃどう頑張っても人間らしい事を出来るわけがないもの」
「…みたいですね。こちらの定義では」
部屋内の沈黙が広がると、息が詰まりそうになるが、続いてセリアが言う。
「だから、今度一緒に行きましょう。依頼」
「…は?」
「一緒に行って、見てもらった方がわかりやすいですしね?」
「一緒に…って…」
「…黙らせるならその方が速い」
「うちらもボディーガードで行っとるだけやったしなぁ…手伝ったゆうても爪の先程度やし」
「な、ならまた採取依頼とか…?」
「良いかもしれませんわね。静かな分、気分転換にもなりますわ?」
そう話し合い、あれよあれよと次の依頼を同行する事になる。
そして何時ものセリアの日課としての《《瞑想》》を軽く教えてもらい、風呂場と眠る直前にして就寝する。
翌日、いつもとは比べ物にならない程早起きさせられ、掃除をさせられる。
そして、茶を飲んでから学園に行く。
道中、私が入った事により視線が集まる…いや、刺繍が変わったのが原因か。
「あれ、アイツ…Fだったか?」
「いや昨日Dだったはずだけど…」
「問題でもおこしたのか…?」
そんな陰口がチクチクと周りから来るのを肌身に感じつつ、教室へ行く。
そんな事を思いながら朝のHRの事、担任のガーバントが言う。
「以前の爆破事件の騒動があったが、それについて話がある」
そう言って私に話をするように振ってくる。
「………」
無言のまま前に行き、全員を見わたしていく。
Dランクだった自分を見ていたクラスメイトや、昨日まで普通に話していた相手。自分が見下していた低ランクの生徒、そしてセリア、担任であるガーバント。
「…あの爆破事故の原因…。私が…やりました」
その言葉を言うと教室がざわざわとしていく。
「…最低。」
「被害者面してんじゃねぇぞ犯罪者」
「FランクじゃなくGなんじゃね?」
「退学案件だろこんなの」
そんな声が響く中「お前ら静かにしろ」とガーバントが割り込む形になる。
「…俺は許さねぇよ。お前のせいで、死にかけたんだからな」
そう言うのは、当時実際に増強され、魔力暴走を起こしてしまったCランクの男子生徒。
「…ごめん」
「ごめんで済んだら世話ねぇんだよッ!」
怒鳴る男子生徒と自身の間に入り仲裁する形でガーバントが言う。
「言いたい事もあると思うが、学園の方針としては改善を促す方向に行った」
「でも…!」
「言いたい事はわかる。が、同じ立場になった時に、切り捨てられたらどうする」
「…ッ」
男子生徒は舌打ちをしつつドカッと椅子に座る。
「処分としては学園内ではFランクとして降格、および監視対象となった。思う所は各自あると思うが、一度矛を収めてくれ」
ざわざわとした雰囲気はあるものの、渋々と言った雰囲気で静かになっていく。
私は席に戻され…いや、Fランクの位置づけの場所に配属され、座ることになった。
授業中もヒソヒソと声が聞こえる中、自分自身が言っていたであろう言葉がそのまま帰ってきているようだった。
――時刻は昼間に差し掛かり、食事の時間となる。
「…」
私は食堂へセリア達と赴くと、今までDの所に行こうとした時に足が止まり、Fの場所へと歩む先を変える。
その道中わざと肩をぶつけられ、よろけて体制が崩れてしまう。
「ふんっ。Fが。邪魔なんだよ」
そう言われて下唇を噛み締めつつ、立ち上がろうとした時に手が目の前に見える。
「…行きましょう。クローディアさん」
(なんでこいつだけは…)
そう思いつつ見ていると手を取られて思ったより意外と力があり、持ち上げられる形で立たされる。
そのまま食事の内容を見れば一目瞭然。
Dではありえないような大雑把な品々が並んでいた。
食べれば腹持ちだけある蒸し芋と、魚の生臭さが目立つ干物がそこにはあった。
(これが低ランク…。人の扱いじゃないランク…それなのに…)
「ん-、これ硬いですけど、非常食として加工したりすれば美味しくできそうですね…?」
と言いながら乾燥魔豆の硬焼きパンを何ごとも無いように食べつつ言う。
「…たぶん余るから持って帰ろう」
「前作って貰ったフレンチトーストも美味かったもんな。ちょっと気になるかも」
「なら、一度口利きしてみましょうか」
「はい。なら向こうで色々アレンジしてみましょう!」
「な、なら下準備とか手伝いますね…!」
そんな事を言いつつ食事を時折交換したりしながら談笑する姿は、私にとってはあまりにも――。




