第47話 「通り掛かり」
私達は一度みんなに戻ってもらい、皆と遊んでいる最中に具材があまりないと思い出したので、ローレファルス先生の所へ行こうとしていた。
「カレーの時にいっぱい使っちゃいましたからね」
「け、結構ありましたもんね量…?」
「…食材無いのは死活問題。」
あははと私は大袈裟に言うミィさんを見つつ歩いていると手の中で収まっているキナコが首を傾げながらある方向を見る。
「ん?どうしました?」
私はその方向を辿るように見ていく。
そこには前に「借りるぞ」と言って私を見ていたヴァルザードさんが何かとある女性と喋っていた。
「――相変わらず澄ました顔しやがって。」
ヴァルザードが吐き捨てるように彼女に言う。
優しそうな雰囲気を漂わせる彼女は白金の刺繍をされた、透き通った深紅の瞳を持つ膝まで届く見事なプラチナブロンドのストレートヘアの彼女は慈悲深いような雰囲気を漂わせていた。
「そんな、澄ました顔だなんて…」
彼女には取り巻きが複数人おり、執事やメイドのように後ろについており、慕われている様子ですが…。
キナコは二人を見ると毛を逆立てながら小さく「チチチ」と威嚇するようにしながら私の手に擦り寄る。
「…セリア。寄らない方が良い。」
「え? でも職員室はこちらですよ?」
「べ、別の道から行きましょ、セリアさん。」
「えぇ…?」
私は自体が呑み込めないままエルマさんとミィさんに言われるように職員室を目指すため、少し迂回する道を通る。
「あら…?あの方は…?」
「…アイツか」
「お知り合いですか?」
小首を傾げて言う彼女に舌打ちをしつつ見る。
「別に顔を見た程度だ」
「…へぇ。思うに、景品、とかでしょうか?あなたの事ですし」
「景品?Gが?ふざけんな、舐めてんのか」
そうやって睨みつけると困った表情で「とんでもない」と手を少し大げさに振る。
「あまりにもあなたの反応が初対面ではなかったので、総合的に考えてそうかなと推測しただけですよ。悪気があったわけでないの。ごめんなさい」
「…ッチ、気に食わねぇな本当に」
「お気を悪くさせてしまったならすみません。それでは私はそろそろ向かう所がございますのでこれで」
優雅にお辞儀をして歩いていく。
「やはりエレア様は聖女だわ…」
「高貴で慈悲深い…まるで女神だ」
「エレア様、万歳…!」
そんな声がヤツが歩いていった後に金魚のフンのようについていく奴らから聞こえる。
「…クソが」
そう言ってヴァルザードも踵を返してポケットに手を入れながら歩いていく。
――職員室前。
私達は迂回して、ちょっと時間をかけてからそこに向かうと、出入口付近にいるクローディアさんを見つける。
「あ、クローディアさん!」
その言葉にビクっとしてこちらを向く姿を見ながら手を振って歩いていく。
「クローディアさん、こんなところでどうしたんですか?」
「……別に。少し先生に用があって来ただけよ」
「そうなんですね。私もローレファルス先生にお願いがあって来たんです」
「…そう。」
ふと手の上のキナコを見ると、さっきみたいに威嚇はしていないで、首を傾げている。
「あ、キナコも人見知りしなくなってきてますね。良かった」
ミィさんがジトっとした目で私を見てきましたが私は首を傾げる。
「なら折角ですし、一緒に行きましょうか」
「え、なんで一緒に…?」
「職員室とかって入りにくいですから、それなら複数の方が入りやすいかなと」
私は出入口にコンコンっとノックすると「あ、ちょっと…!」と言うクローディアさんが止める前にガラガラと扉が開く。
そこにはガーバント先生が丁度出る所という様子で資料を片手に私達を見る。
「どうしたお前たち。というより、また珍しい組み合わせだな…?」
「あ、ガーバント先生、お疲れ様です。」
「ど、…どうも。」
「…セリアの付き添い」
「お、同じく…です」
「あの、前にカレーをした時に具材を色々使っちゃって、補充して貰えないかなとローレファルス先生にお願いしに来たんです」
「あぁ…結構な量を作ったみたいだしな。人数も相まって全部平らげたが…」
ガーバント先生が「ふむ、わかった」と言いつつ踵を返そうとする。
「あ、クローディアの方は何か用か?」
「………。いえ、な、何も」
「…?そうか」
そう言ってローレファルス先生に報告をしに行く。
丁度食事?をしていた様子で、片手にチョコを持った状態で来る。
「食材だったな。と言っても研究棟は本来今日までだが…」
「あ…す、すみません。つい」
そう言うと「いや、それは良いんだ」とローレファルス先生は続ける。
「それよりも、そこは後でするとして…クローディアは何故職員室に?」
「……」
少し黙ってから目線を背ける。
「…通りかかっただけです」
「え…?でも用があるって…」
「聞き間違えたんじゃない…?それじゃ」
そう言ってクローディアさんは踵を返して歩いていく。
「あ、あれ…?さっき言ってたような…?」
「…ふーん。」
「ミィさん…?」
目を閉じながら「…何でもない」と軽く溜息を吐くように言う。
「とりあえず、研究棟の利用についてだが、本来生活スペースとしては使っていないのを実験という名目でしている状態だ」
「な、なるほど…」
「正直これ以上は成果として出ていないと継続は難しいが…体験した身としては何か変化はあったか?」
そう言いながらミィさんとエルマさんの方を見る。
「…早起きになった。体も快調」
「え、えっと…私は途中からでしたが…その、ちょっとだけ落ち着けるように…?」
「ふむ…快調になって、落ち着けるようになった…か」
そう言いつつ軽くローレファルス先生は目を瞑る。
「そ、その…理由としては弱いです…よね?」
私がそう言うと「いや」とローレファルス先生は否定する。
「実験に参加したのはルーテリアとルイネもだっただろう。総合しなければ成果が出たかどうかはわからない。探して呼んで来てくれるか?」
「はい…!わかりました!」
私達はマテリアルプレートを片手に連絡を取ろうとしてみたり、受付嬢さんの所にいないかなと思い、一度職員室前から離れるのでした。




