第44話 「彼女を呼んで」
早速ローレファルス先生に言うと少し考えつつ、ガーバント先生も腕を組んで一緒に聞いていた。
「――…クローディアと一緒に食事をしたい…か。」
「…~…どうする?」
ガーバント先生とローレファルス先生は何か悩むような雰囲気で考える。
「ダメ…でしょうか?」
「…いや、構わない。夕食に招待で良いのだな?」
私がそれに「はい」と頷くと指を一本立てる。
「なら私も同席させてもらう。ガーバントも来るか?」
「えっ」
「どうせ暇だろう。まだテスト期間でも無いし」
「いやそうだが…」
「という事で私達2人も追加でなら許可をしよう。
「是非!二人も来てくれるともっと美味しくなりますから!」
そうして了承も得て、私はとりあえず放課後に向けての仕込みをする為に料理を覚えたいと言っていたエルマさんと先に研究棟の調理室へと向かう。
――程なくしてクローディアは依頼をこなし、ボーダーポイントの半分を稼ぎ終え、水を飲んで少し休憩していた頃、マテリアルプレートに通知が入る。
「……。研究棟に来い…?」
一瞬脳裏に事件の犯人としてバレたのかと、背筋に悪寒が走る。
(…ッ、私の学園生活もここまで…か)
それもこれも、あのセリアと言う存在のせい…。
そう思うもすぐに結論が出てしまう。
――自分自身が捲いた種だ。
そんな事を思いつつもポケットにマテリアルプレートを入れつつ研究棟に歩みを進める。
――――。
向かった先、研究棟には、想像通り教師が居た。ローレファルスとガーバントだ。
「…どうも」
クローディアはなんと言われるかと思いつつ俯くとガーバントが言う。
「来たか。まぁ中に入れ」
連れられ、そのまま中に入る。
「…?」
この香ばしい匂いはなんだと思い、前を見るとそこには想像していた人物が居たが…していたことは想像していないものだった。
「あ、もうすぐ出来るので待っててくださいね」
そこに居たセリアとエルマたちは鍋で料理をしている様子で、横のテーブルには複数の椅子。そしてルーテリア、ルイネ、ミィ、その横にいつもセリアと一緒にいるリスがいる。
(コイツは何を言っているんだ…。)
困惑した様子が顔に出ていたのかローレファルスが言う。
「困惑すると思うが、セリアの頼みでな。食事をしたいそうだ」
「は…?」
そのあまりにも謎の回答に素の困惑を投げかけてしまう。
「とりあえず椅子に行くぞ」
ガーバントが先導しつつ3人がいるテーブルへとクローディアたちは向かう。
――困惑で言葉が出ないまま座っていると、程なくして料理が運ばれてくる。
「お待たせしました。具沢山の特性カレーです。エルマさんも手伝ったんですよ?」
そうして出されたのはごろっと具材が何個も入った香ばしいカレーライスが一皿渡される。
「…えっと」
困惑するクローディアを他所に「いただきます」とセリアを含めた5名は何事もなく一口食べる。
「んっ。美味しくできました♪」
「食べ応えあるのに結構溶けてるから食べやすいわこれ」
「えぇ。スプーンですぐ崩せて食べやすいですわね?」
「こんなのが…出来るんだ…。私初めてなのに…」
「はい、キナコにもお野菜あげますね?」
そう言いながら専用のを別で作ったのか、そのリスに渡していた。
ミィは無言で黙々と食べており、ローレファルスとガーバントも程なくして「いただきます」と手を付ける。
「~~…なんだこれ。食堂のAランク料理よりも美味いんだが…。」
ガーバントがそう言うとローレファルスも頷く。
「Sにも負けないレベルなのだが…提供してるのはBランクで使っているような食材だぞ…?」
その様子を見てからクローディアも恐る恐る一口食べる。
いつもすること。いつも食堂で食べる動作と一緒。そのはずなのに――。
「……?…。」
「お口に合いましたか?クローディアさん」
セリアはハンカチを渡しながら笑顔でそう言う。
「なんで……。」
「涙が出てたので」
その言葉に「涙…?」と思いながら自身の頬に指をあてると確かに濡れていた。
「なんで…なんで泣いて…」
理由が分からない。
味が美味しいからなのか。それとも――。
自分では全く分からなかった。
涙を拭うも、とめどなく涙が溢れてしまい、自身の感情という感情がわからなくなっていく。
――少し泣きつつ、声を殺すかのようにカレーを口の中に放り込んで食べていく。
「ふふっ。お口に合ってよかったです。ね、エルマさん」
「は、はい。作るの大変でしたけど…食べてもらうのって、その…嬉しいですね…?」
「はい。だから私も腕を振るうんです♪」
ローレファルスはその二人を見ながら一口また食べる。
「んくっ…。村でもそうだったのか?」
「はい。よく町の人たちに振舞ったり、振舞ってもらったり、持ちつ持たれつで支え合ってましたね」
「持ちつ持たれつ…ね」
ガーバントがそう呟きつつ食べ進める。
「…セリア。おかわり」
「あ、うちもー」
「わかりました。ルーテリアさんはどうしますか?」
「っ……す、少しだけお願い致しますわ?」
少し目線を逸らしつつ咳払いをしてそう言う。
「わかりました♪」
「あ、え、えと。じゃあ私が入れてきます」
「ありがとうございますエルマさん」
そういう会話をしながら、特に食事中、クローディアは咎められることなく食べ終える。
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
合わせたように5人がそう言うと、ローレファルスとガーバントも遅れて言う。
「…ごちそうさま」
クローディアも小さく言うと食器が片付けられていく。
「それで…何故呼ばれたのでしょうか…?」
本題とばかりにクローディアが言うとガーバントが反応する。
「これだけだ」
「はい…?」
「セリアが料理を振舞いたいと言ったからだな。特にそれ以上はない」
「それ以上はない…って…え?」
それ以上は本当になく、「またいらしてくださいね」とセリアに言われ、困惑するまま解放される。
「本当に…変な…やつ…」
また何故か目元が熱くなるのを堪え、自身の寮へと歩いていった。
――――。
私達は食事を終えた後、ローレファルス先生とガーバント先生とも別れ、少し時間を空けてからお風呂に浸かっていた。
「ふぅ…キナコも今日はいっぱい食べましたね?」
手の平に乗っかりつつ寛ぐように尻尾だけを動かす。
「…クローディアさん、喜んでくれたみたいでよかったですね?」
「ほんま、セリアって無条件にあぁいうのするよなぁ…?」
「へ?」
お湯を手ですくって肩にかけつつルイネさんが言う。
「だって、なんかしらあったら普通あぁやって招待せえへんしな」
「?何かされていましたっけ…?」
「…そのままでええよ。セリアは」
私は首を傾げながらも、ゆっくりと湯舟で深呼吸をした――。




