第42話 「疑いの客観視」
「…ん?」
ニコニコしながら完了書を見て疑問符が浮かびつつ固まるクレアさんを前に私はミィさんを背負ったルイネさんと受付に来ていた。
「……ん、んん”っ。え、えぇーと。完了されたんですね~?」
咳払いをしながらクレアさんは私を見て首を傾げるようにして聞く。
「はい。依頼主さんにも凄いと褒めて頂きました♪」
「なら…8点加算しておきますね?」
「良いんですか…?5点かなと思ったのですが…?」
「好評評価でお墨付きまで記述されていますので~?」
私は内心良いのかな?と思いつつも感謝を告げて素直にポイント加算をして貰う。
その所にルーテリアさんとエルマさんも丁度来る。
「あ、二人ともお疲れ様です!見てください!貯まりましたよ50ポイント!」
私はテストで結果を出た子供のようにポイントが貯まっているマテリアルプレートの画面を見せる。
「相当速く本当に貯め切りましたわね…?」
「皆さんが応援してくれたからです♪」
「すごかったでぇ…普段うちらがしてる掃除よりスムーズやったもん」
「…天性。」
「実際セリアさん、日課でも速いですもんね…」
えへへと私は褒められてる様子で頬を赤らめて嬉しい様子が表情から漏れてしまう。
「Gランクが1週間たたずに50ポイント?」
「不正だなありゃ」
「体でも使ったんじゃないの?”見た目だけは”良い部類だし?」
「なら適当に言えば良い思いできるかもな」
5人が集まって仲睦まじく話している姿を見ながら適当な事を周りが言っているのをクローディアは聞いていた。
(…以前なら賛同していたかもしれない自分が滑稽ね)
そんな自虐を入れつつも同列の低ランクが集う受付嬢のテレサの所を見る。
「依頼成功ですね。では5点の加算を致しますね!」
「ちょっと待て。なんでだよ。アイツはそれ以上貰ってたろ」
「え?!で、でも規定で決まってて…?!それに評価が高いのが前提ですし…?」
「評価が高くないって言いたいのか?」
「あいやーそのーそうではなくてぇ…?!」
そうゴネている所にリリア―ヌが歩いてくる。
「どうされましたか?何かもめているようでしたが」
「どうもこうも。なんであのGランクにはポイント加算を上乗せしてこっちにはしないんだって聞いてんだ。不正だろ!」
「不正…と。では《《それ》》を判断した私の責任でもありますので、是非、裏で思う存分口論を致しましょうか?」
淡々と言うリリア―ヌにうぐっと縮こまってしまう生徒は渋々と言った雰囲気で加算だけしてもらって歩いていく。
それを見て肩の荷が降りるような雰囲気で少し大げさともいえる様子で肩を落とす。
「ふぅぅぅ…。助かりましたーリリア―ヌさぁん!」
「はいはいわかりましたから。仕事に戻ってください」
「わっかりました!てことで次の方どうぞーっ!」
何事もなかったかのように受付嬢の仕事を再開する。
(あの堅物と有名な受付嬢が…ね。という事は…信じたくないけれど、本当なのかも…しれないのか…)
そんな事を思いながら自身にもランク相応のボーダーというものはある為、適当な点数稼ぎの依頼を遂行しようと張り出されていた依頼を見る。
「きっと男に媚び売ったり売春でもしたのかね」
「Gならペットとしては持って来いだもんな」
「Sランクの慰み者かぁ。嫌だねぇそんなの」
聞いていれば自身が疑ってたのをまるで誇張するかのような根も葉もないことを口走っているような生徒の声までクローディア本人の耳には聞こえていた。
(…本当に…。以前の私を見せられてる気分…。腹立たしい)
そしてふとクローディアは思った。あれ?なぜこんな感情に…?と。
(…これが”嫉妬”だというなら…なんて滑稽で、胸糞悪いのか…)
そんな事を思いつつふと見ると男子生徒が2人でセリアの方に歩いていくのを見つけた。
「――ふふ。もうミィさんったら」
私はお手洗いに行っているルーテリアさん、ルイネさん、エルマさんをミィさんと一緒に今日の晩御飯について喋りながらベンチに座って待っていた。
「よぉGランク」
「へ…?あ、はい…どうも…?」
私がそう返すとまじまじと顔を見られる。
「へぇ。確かに面は良いな?俺にも遊ばせてくれねぇか?」
「遊ぶ…?」
私がそう言っているとスッとミィさんが横から男子生徒の肩をトントンとする。
「…下種。」
「…Bランクに向かって何言ってんだ…?」
「…いつでもここから撃てる。勝ち目はない」
ふと手元を見ればブックの封が開き、パラパラと本が捲れていた。
「…ッ…てめぇ」
「…それ以上セリアに近づいたら校則無視して撃つ。…離れて。」
有無を言わさぬ雰囲気に気圧され男子生徒が反撃に出ようとしつつもパッと見ると血相を変えたようにして踵を返す。
「…ッ。覚えてろよ。行こうぜ」
そんな事を言いながら私は何が何だかわからない状態のまま歩いていくのを見送ると丁度ルーテリアさん達が帰ってくる。
「何かありましたの?」
「…害虫駆除。」
そう言いながらブックをパタンっと閉じて封をまたする。
「え、えーと…すみません。いきなり遊ぶと言われて何がなんだか…?」
「あぁそう言う事か…うん。気にせんでええよセリア」
「そ、それよりだ、大丈夫でしたか二人とも…?!あの方たちBランクでしたが…!」
「そこは大丈夫なのですが…。それよりミィさん。喧嘩はしない方が良いと思うんですが…?」
「…喧嘩じゃない。牽制」
「そこだけはうちも同感や。セリアは危機感がまるで無いからな」
「え、えぇ…」
私はよくわからないまま歩いていき、食堂へと向かう。
――その様子を一部始終見ていたクローディアは依頼を受けるのをやめ、何故か食堂へと歩いていた。




