第41話 「ランクの抱えるもの」
翌日の事、私は残り8点分の依頼をするべく今日はミィさん、ルイネさんと一緒に学園の案内所に来ていた。
施設に入るとすぐに揉めているような声が響く。
「俺はAランクだぞ。何故これが受けれない」
その生徒に対しておっとりとした雰囲気の受付嬢さんが対応していた。
「えぇ、ですから強さの提示をされていませんので。まずは1つ下の依頼からお願い致します」
ニコニコとした雰囲気なのに何か圧があるようなそんな雰囲気に気圧されつつ渋々と言った様子で男子生徒が舌打ちして歩いていく。
「…――。さて、お次の方、ぞうぞ~」
咳払いをして私達の番になる。
「あのー、大丈夫でした?」
彼女は艶やかな深紅のウェーブロングを上品にハーフアップで纏め、柔らかな翡翠色の瞳で笑顔を見せる。
「ふふっ。ご心配ありがとうございます。ですが、大丈夫ですよセリアさん」
「あれ、なんで私の名前を?」
「リリアーヌさんが興味深そうに話していらっしゃったので。主に困惑した様子で」
「せやろなぁ…。なんかおもろい反応ちょくちょくしとったし…」
「…ん。」
「えぇ…私そんなに変ですか…?」
何故かミィさんにサムズアップをされ、ルイネさんに肩をぽんぽんとされる。
「改めまして。クレア・ルージュです。――ところで、本日はどういった要件でしょうか?」
クレアさんはそう言いつつ微笑む。
「えーと、低ランクの依頼を受けたいのですが…」
「でしたらテレサさんの担当ですけど…また遅刻していますね。リリアさんも手を焼いていますし…」
少し考えつつ「仕方ありませんね」と言いつつ、低級依頼のを出してくれる。
「今回は受付出来るのが私しか居ないので対応させて頂きますね。」
「ありがとうございます…!」
私は感謝をしつつ、本日入った低級の依頼を見ていく中、一つふと目に入る。
「~…館内掃除ですか…。面積はどれくらいなんでしょうか…」
「こちらの施設なら確か、この学園の図書室程度だったかと」
「めっちゃ広いやん…?!」
「ならこれで!」
「即決やな?!」
「畏まりました。では、こちらの掃除依頼を受理致しますね~?」
そう言って判子を押して控えを貰い、私達は依頼の場所へと足を運んだ。
向かった先はボロボロになった廃墟の館で、不動産の人からの依頼で館内を掃除してほしい、という内容のもの。
そこの玄関先で私達は依頼主に話を聞いていた。
「面積的には一日で終わるとは思っていませんので数日をかけて頂いて構いません。また、所々壊れていまして、少し危ないので気を付けて頂ければ。」
「わかりました。では気を付けて掃除してきますね!」
私達はお辞儀してから早速館内に入る。
「…埃っぽい」
「まずはハンカチで口元を隠して…水回りとかからやっていきましょうか?」
頷きつつ向かうと相当昔のまま放置されていたのか、どこも汚れが溜まっている様子だった。
「めっちゃギシギシ鳴るねんけど…床抜けそうやなぁ」
「上からドンと踏むんじゃなくてすり足で動くと抑えれますよ」
「…そういえばセリアの足音、他より小さい…。というより聞いた事ない」
「あ、それ思った。なんか静かやねんなセリアの歩く時の音」
「普段からの習慣ですね。こればっかりは癖というかなんというか…」
そんな事を言いつつ水場付近に到着したころに懐にいるキナコが起きて出てくる。
「あ、おはようございます。今日はお掃除ですよ」
私はキナコを撫でてから水が出るかなどを点検してから、掃除を開始していく。
「さて、腕が鳴りますね。折角なのでみんなでしましょうか!」
その頃、学園では。
「…セリア・レインが不正をしている?」
ギルフォードはゼクスと共にニナが持ってきた情報を聞いていた。
「はい。少なくとも決定的な言質はありませんが、周りの数名からの報告ではそうでている様子です」
少し考え事をする様子でゼクスは言う。
「そうなればルーテリア嬢が真っ先に疑われるはずだが…聞いた事が無いな」
「…ランク差別だろう。」
ギルフォードは冷静に眼鏡を拭いてからかけ直す。
「恐らくは。ただ依頼を最近しているそうですが、その内容が少し」
ニナは二人が見るのを確認してから続ける。
「何でも、異常に採取が速く、高品質。しかも猫なども1時間以内で届けたり、畑を二日かかる量を数時間で終わらせたりと、ランクを偽ったのではないか、不正をしたのではないか、と囁かれている様子です」
「Gランクなのに良好な功績と、クリアの時間…か。確かに疑われる部分はあるが」
そう言いつつニナが配ったプリントを見る。
「時間的に考えれば出来るが…相当魔力を使う。Gランクでは到底無理だな」
「…裏は取れているのか?」
「それが、現場に居たという人物は本人たち以外おらず。依頼人に関しても機密管理の為と門前払いを喰らいましたし」
「となると…実質不正をしていたか別の事でしていたかは謎という事か…」
そう言いつつも少し考える中「それと、少し別案件で気になる事が」とニナが続ける。
「実はSランクのヴァルザードがセリア達に接触したという報告が」
「ふむ…どんな内容だ?」
「それが、セリアが彼に面を貸せと言う所をルーテリアさんが間に入って止め、舌打ちして歩いていった。というのを」
「ヴァルザード・フォン・レグナス…あまりいい噂を聞かないSランクの生徒だな」
「はい。一応同級生ですが別クラスなのであまり関わりはありませんが少し気になったので」
「…少なくとも、セリアは容姿は一応は整っている。おそらく戦利品か何かという事で連れて行こうとしたのだろう」
その言葉にゼクスはフンッと鼻を鳴らす。
「野蛮な。ランク差を盾に好き勝手に…」
「全てのS以上がそうとは限らない。それにSランクは問題児認定されている人物だからな…」
口論をしようとするもゼクスは深呼吸を一つして咳払いをする所にニナが言う。
「…どうしますか?」
「危険だが、情報は集めてほしい。頼めるか」
「わかりました」
――時間が経ち、夕方付近。館ではセリア達は最後の仕上げをしていた。
キナコたちにも手伝ってもらったり、壊れそうな所を避けて掃除をしていく。
「ふぅ。やっと終わりました…!」
「マジで一日で仕上げよった…。」
「…日課の力」
「そうかもしれませんね。では、お腹もすきましたし、早速依頼主さんに伝えましょうか?」
「…ん。」
歩いていく時に「…お昼のサンドイッチ、またほしい」と強請られつつも私はミィさんを軽く撫でて依頼主に完了報告を言いに行く。
ポヨン、ヒヤン、フラワ、アシス、メロデも一緒にやってましたが疲れて一度帰ってしまい、私の懐では疲れたといわんばかりにキナコが尻尾だけ出してだらーんとしていました。




