第40話 「考えるということ」
――ルーテリアは歩いていくと、手を振ってセリア達が迎える。
「お疲れ様ですルーテリアさん!すごかったですね!」
ふふっと笑いつつルーテリアさんは「大袈裟ですわ?」と腕を組みながら胸を張る。
「あれがAランクの戦い方…つ、強さも密度も全然違いました…」
「私自身は議題も新たに生まれた結果でしたわね」
「あぁ…それはうち自体も思った」
「へ…?そ、そう…なんですか…?」
「セリア見とるとな。めっちゃ出てくるんよ…」
「私を見ていると…?」
首を傾げながら私はよくわからないままも、「そういえば」とルーテリアさんが言う。
「ミィさん。嫌そうにしつつ見せていたランク戦は…?」
「…バックレようとしてたのに。」
小さく「チッ」と言いつつも溜息交じりにミィさんが言う
「まぁ初戦は流石にやっとき。面倒なんはわかるけど」
「…はぁ、仕方ない…1時間後。」
「ならミィさんのも応援しないとですね」
「そういえば、エルマは?」
「わ、私ですか?」
ビクッとしつつもマテリアルプレートを見る。
「私は…無いですね…?」
「なら、丁度時間も空いてますし、ご飯食べましょうか」
「お、ええな!ミィはあんま食い過ぎたら眠たなるから程々にな?」
「…そこまで子供じゃない」
「どの口が言うとんねん。この前食い過ぎて思いっきり歩きながら寝とったくせに」
ミィさんはその言葉に唇を尖らせながらも皆で一緒に食事をするべく学園施設の料理を食べに行く。
そんな所をクローディアは見ていた。セリアを中心に広がっているような輪を。
(ランク戦も始まって…まだセリアは一切戦った事が無い…。)
(でも、あの受付嬢の人が毎回驚いたりしているのを見ると、やっぱり何か特出したのがあるのか…不正…か…)
そう思いつつも今までの言動を見るに、”不正”という単語がこれほど似合わない存在もいないという謎の納得感のようなものが、腹立たしいが生まれてきていた。
そんな事を思いながら廊下の方へと歩むと前からニナが来て、横に立たれる。
「魔導室での爆発事故、何か知ってる?」
「な…。急に、何です…か」
心臓が鳴る。魔力増幅陣の工作をしたのがバレたんじゃないかと早鐘を打つ。
「いえ。容疑者を洗い流してるだけです。これでも情報やなので」
「そ、そう…ですか」
「それで、何か知ってる?」
「いえ…魔力暴走が起きた近場ではなかったので何とも…」
「…どうも」
それだけ言って歩いていった。
だがしかし、情報屋が動いているという事は、何か漏れているのかもしれない。そんな悪寒が脳裏を過っていた。
――軽い食事をしつつも1時間後、ミィのランク戦の時間となる。
「…行ってくる」
肩を落としながらミィさんが歩いていくのを見送る。
「物凄く嫌そうでしたねミィさん」
「面倒くさがりやしなぁ…特に体動かすんは」
そう言いつつ私達はミィさんのランク戦を見るべく、観客席に向かい並んで座る。
「――ミィ・ラシール!対して相手は、ロヴォル・ビアンテ!」
両者が並んで握手してから初期位置に立つ。
ミィは片手に携える形で魔道書喰いの使い魔のブックを持ちつつ、対するロヴォルは空間喰らいの浮遊蟲というクラゲのような害虫を使役する存在。
「それでは!両者共、不正無く、正々堂々と。魔力制限、解除。――『交戦』!」
同時に観客が湧く中、開始の合図が鳴る。
「…物理が効かない害悪クラゲ…面倒。」
そう言いつつも、ブックを広げると、魔法陣が展開される。
そんなクラゲを用いるロヴォルも魔法を展開する。
「じわじわ潰してやるぜ…!残像!姿隠し!」
ロヴォルは残像を残して後方へ下がりつつ周囲に溶け込み、クラゲを前にしてくる。
「…。」
片目だけを瞑って歩くミィは魔法陣を展開させるだけさせて周りを警戒する。
(空間喰らいの浮遊蟲は重力魔法で圧殺するしか対策方法が無い。なら放置が適切。感じ的にもじわじわと潰す方向…という事は…一番離れた所で見守るタイプ…なら)
「日除け」
思考を巡らせながら歩きつつ、自身の顔を暗くして目線がわからないようにする。
「…。(砂目潰し、泥濘、岩槍)」
ブックの”魔法を記録しておける”という特性を最大限活かし、同時に陣が起動、周りにブラフと攻撃を分散させ、放つと同時にクラゲが前に来て物理である土の攻撃をすり抜けながら毒を放とうとしてくる。
「…影踏み」
同時進行で放たれた毒をスッと自身の影に潜り込むようにして入る。
「…これで終わり…?!」
ロヴォルがそう言う時に後ろから岩の槍が放たれる。
「…影が出来れば場所は関係ない。(時差、岩石弾)」
咄嗟に攻撃を避けたロヴォルの先に、通常は上から叩きつけるその魔法だが、なんと下から競り上がる形で地面にハンマーのように逃げ場を消すように叩き付けられ、一瞬で生命結界石が砕けてバリアが展開される。
「そこまで!勝者、ミィ・ラシール!」
歓声が広がる中、私は手をパチパチと小さくしながら「ミィさんが勝ちました!」と言いながら手を振っていた。
「……疲れた。寝たい。」
――とぼとぼと歩いてくるミィさんを皆で迎える。
「お疲れ様ですミィさん!凄かったです♪」
「…ん。セリア、背負って。眠い」
私が了承しながら背中を向けるとぼそっと全体重を乗っけてミィさんが背負われる。
そのセリアの頭の上でミィの頭をぽんぽんとキナコがする。まるで「よく頑張った!」という風に。
「一応これで何とかランク戦は大丈夫そうやな」
「えぇ。インターバルで連続出場はできませんものね」
「Cランクのミィさんであの強さ…わ、私にもランク戦が来たら…」
そんな不安がるエルマさんの背中をばしっと叩き「いたいですっ!?」と声を出す中ルイネさんが言う。
「先の事考えてても意味ないやろ♪まず自分が出来る事からやり♪」
「まずは自身が出来る事を考えて組み合わせれば良いんですのよ」
背中のジンジンとした痛みで少し涙目になりつつエルマさんが頷く。
「なら今日は頑張った皆さんの為に、頑張って料理しないとですね」
「…お肉。田楽。」
背中で体を預けるミィさんがぼそっと耳元で言う。
「ふふっ。作りましょうかそれも」
そんな事を言いつつ、私達は廊下を歩いていく。
その頃、自身の空間魔法で持ち込んだハンバーガーにかぶり付きつつ、職員室ではローレファルスがセリアの日常を受ける4人のノートを見ていた。
(睡眠改善に食生活的に日々の怠さが軽減…。ただ健康になっただけか…?)
そんな事を思っているとプリントを抱えたガーバントが来る。
「また頬に付いてるぞ。」
チラッと声のする方を見てからごくっと飲み込みつつ。
「頼んだ。両手が塞がっている」
「俺はお前の召使いか」
そんな事を言いため息を出しつつもティッシュでさっと拭き取る。
「よきに計らいたまえガーバント」
「へいへい…。それで、アイツらのノートか。何かわかったか?」
ハンバーガーの残りをパクつきながら言う。
「簡単に言えば修行らしい事は何もしていない。夜の食事が改善されてよく寝て朝起きて掃除、祈りに似た何か、お茶がベースになっているな。」
「…普通だな?」
「普通なんだが。一つ思った事があった」
「というと?」
「毎回《《瞑想》》をしている。風呂場、部屋。合計30分程度だ」
「そんな瞑想一個で…」
残りのハンバーガーを食べ終えつつ言う。
「…いや。強ち的外れでもない。制御には精神を落ち着かせる事が最も重要だからな」




