第4話 「日課の行動」
二人が帰った後、部屋が急に静かになる。
「……。」
「……。」
(どうしよう、何か話した方がいいのでしょうか…)
そんな事を思いつつミィさんを見ると、本を片手に読書をしている様子。
(話しかけると逆に邪魔になりそうですね…。じゃあまずは神棚を作らないと!)
そう思い、持ってきた荷物の中から簡易の神棚を作る用に持ってきた木材一式を取り出す。
「あの、ミィさん。一番高い棚の上を使ってもいいですか?」
「…ん。」
了承も得たので、早速神棚を設置しようと椅子に登って視線が上がった先に…
「わわっ!?骨です?!」
そこには白骨化した動物の骨が置かれていた。
驚いてバランスを崩しかけるが、自前の体幹でどうにか踏みとどまる。
「……耐えた。」
「それより、骨ですよ!?」
「…私物。ぬいぐるみ」
「ぬ、ぬいぐるみ……?」
顔や反応を見るに嘘ではなさそうです。
「…あ、じゃあ…ちょっとだけ横失礼しますね…?」
私は壊さないようにそーっと動かして神棚を設置し、お札を入れた神社用封筒を立てかける。
「よし。これで設置完了です」
その後は特にお話をする事もなく、寝る前に禊をする為にお風呂に入りたいのですが…。
「あのー…。禊をしたいのですけど、お風呂って場所分かります?」
「…端末。見ればわかる」
「使い方がわからないんです…。」
「…こっち。」
ミィさんはパタンと本を閉じてベッドから降りると、そのままお風呂まで案内してくれた。
「施設の中にこんなにおっきなお風呂があるんですね…。」
「…どんなお風呂使ってたの。」
「故郷では温泉を引いた露天風呂だったので……。」
「…変。」
どうやらここにはそういった文化はないようで、不思議がられました。
「あの、せっかくなので一緒に入りませんか?」
「…ん。構わない」
その後は一緒に入り、静かに湯舟につかる。
「…ふぅ。独特の匂いがないのはなんだか新鮮です…」
「…匂い?…何か入れてたの?」
「入れてたというか入ってたと言いますか…」
「…元からなんだ。」
それ以上は特に何も言わずにぼーっとした様子でお風呂に入り、寝巻用の白装束を着てお風呂から上がる。
「おやすみなさい。ミィさん」
「…ん。」
それからいつも通り神棚へ一礼し、静かに呼吸を整え瞑想を10分。
師匠から教わった十年近く続く日課。
それを終えてから、私は布団へ潜り込んだ。
明日からはきっと忙しくなる。
そう思いながら、私は静かに眠りへ落ちていった。
翌日、まだ朝日が昇り切っておらず、暗さが際立つ朝5時。
パチッと目が開く。
そしてまずは布団を畳み、部屋の掃除をそっとし始めます。
荷物から雑巾を取り出し、水で濡らす。
机。
棚。
窓枠。
一つ一つ丁寧に拭いていく。
「ふぅ、こんなところでしょうか…」
そう呟いた後、神棚の前で姿勢を正す。
二度柏手を打ち、
静かに目を閉じる。
朝の静けさの中、
心だけが少しずつ落ち着いていく。
(今日も無事に一日を過ごせますように)
その後、お茶を淹れる為に昨日、教えてもらった方法で給湯室へ。
「えーと…ここですね」
自前で持ってきた茶葉やヤカンを包みから広げる。
茶葉を並べ、ヤカンへ水を注ぐ。
指先へ魔力を集め――
ぽっ。
ゆっくりと集中し、蒼い火を灯す。
「……さて。」
あとは沸くのを待つだけ。
何時も通りにお茶を炊きだし、湯呑や水筒に淹れ、部屋へと持っていく。
「…ふぅ。」
自室で一息つく頃、ミィさんの方を見るとまだ寝ている様子でした。
「…ふふっ。まだ六時ですもんね。」
小さく笑いながら湯呑を口へ運ぶ。
ふわり。
茶葉の香りが部屋いっぱいに広がる。
「……。」
「……くん。」
布団が少しだけ動いた。
「……いい匂い。」
むくり、とミィさんが上半身だけ起こす。
「起こしちゃいましたか?」
「……飲み物。」
「お茶ですよ?」
「……飲みたい。」
「あぁ、良いですよ」
微笑んで返事をしつつ、もう一つ湯呑を用意し、ヤカンに残ったお茶を淹れて渡す。
ミィさんは貰って一口を飲み。
「…。」
更に一口飲む。
「…毎日欲しい。」
「ふふっ。気に入っていただけたならよかったです。まだたくさんありますから、毎朝淹れますね。」
「…ん。」
私たちはゆったりとお茶を飲み、ゆったりとした時間が流れていた、その時。
コンコンッ!
「おーい!セリアちゃん、ミィちゃん!起きてるー?」
ドアの向こうから、ルイネさんの元気な声が響く。
「あ、はい!今開けますね」
扉を開けると、ばっちり制服を着こなしたルイネさんとルーテリアさんが立っていた。
「おはようさん!初日から遅刻したらあかんでーって呼びに来たけど……えらい優雅な朝やな?」
茶器が並ぶ部屋を見て、ルイネさんが目を丸くする。
「おはようございます。お茶、お二人も飲みますか?」
「いやいや、もう行く時間ですわよ!……まったく、大物ですわね」
呆れたように笑うルーテリアさんに急かされながら、私は慌てて真新しい制服へと着替え、髪飾りとして組紐を付ける。
「それじゃあ、出発ですね!」
賑やかな友人たちと共に、私の学園生活が幕を開けようとしていた。




