第30話 「影響の先には」
朝の職員室、例の魔力暴走による爆破を仕向けた人物を特定するべく、状況をまとめた資料を教師たちは見ていた。
「それで、集まったのがこれ…と」
クラウスが椅子に座りつつ資料をパラパラ拝見する中、メルフィスが頷く。
「うむ。夜目が効く奴らが言ってたから間違いないのだ」
「でも、シルエットしかわからないのでしたら、色々と候補がいらっしゃいますねぇ」
「あぁ、イリスの言うのももっともだが…ローレファルスの方は?」
「調査はしたが出歩いた者は割と多いらしい。まぁ入学早々というのもあるからだとは思うけれど…」
「けど?」
「…きな臭いと思っているのは呪術、闇、幻術、空間魔法を主軸にしているものだ」
イリスも筆記用具をチェスの駒のように指先で転がしながら言う。
「雷だと軌跡がわかってしまうものね?」
「そこでミィなどがいるが、研究棟から出た記録が無い。ここは除外しても良いだろう」
クラウスは髪をめくって次のも見ていく。
「となると…この生徒達がメインか…。A~Bクラスは外出記録が無いな…。ってことはC~Gか」
イリスがペンをとんっと起きつつ。
「場所的に以前の講義の際に居た場所を覚えての場合…狙われたのはセリア本人か、その周囲に居た人物でしょうねぇ。」
ガーバントが頷く。
「たぶん、うちのクラスだな。となると絞れるが…。」
そう言うとクラウスは「そう言うと思って絞っておいた」と言い出す。
「位置、魔法系統、外出記録、この三つのうち2つ以上が一致したのがこの四人だ」
4人上げられた。
「クローディア・バロウズ。シノ・アリアドネ。ヴァン・アルスター。ニナ・メルクリウス。この4人か…。」
クラウスはその言葉を聞いて更に細くを続ける。
「あぁ。それぞれ得意とする系統はクローディアは水、呪術。シノは呪術、召喚。ニナは水、補助で幻術。ヴァンは空間。それぞれ他も含めれば2つ以上は合致する」
メルフィスが一言挟む。
「ならヴァンは外しても良いと思うぞ?」
「その理由は?」
「あれは干渉せずにのらりくらりする感じだったのだ。こういう事をしてリスクを犯す価値が無いのだ」
「メルフィスの以外とそういう勘は当たるからな。…となると…残るは3人か」
――時間が過ぎ、教室にて。
「――今日のHRは以上だ。それと、ニナ・メルクリウス、クローディア・バロウズ、シノ・アリアドネ。3人は後で職員室に来るように。じゃあ今日の授業を始める。6ページを開け」
そう言って一限目が始まる。
そんな中、クローディア本人は授業の内容があまり入ってきていなかった。
(バレた…?こんな早くに…。でも黙っておけば……)
そんな事を考えると、最悪の《《退学》》という結果が脳裏を過る。
「…ッ」
(たかが嫌がらせ程度で私がなんでこんなに…)
自分自身でも自業自得というのもわかっていた。だからこそ、恐怖や怒りが膨れていた。
(私は……ただ、あいつの化けの皮を剥がしたかっただけなのに……)
――授業が終わり、二限目に入る前の休憩時間。
セリアは黒板に書かれたものをノートを取り終えてから仕舞う。
「ん?」
「…じーっ」
「はなっ!?ミィさんいつの間に?!」
「…最後の方を書いてる時」
「授業終わってすぐじゃないですか…!?」
「…そうとも言う」
そんな事を言いつつ次の授業の準備をする時、ふと視線に気が付く。
そこにはクローディアさんがおり、目が合った瞬間にスッと背けられる。
「…?」
「…見てた」
「何か用事ですかね…?」
「…気にしないで良い」
私は「えぇ…?」と困惑しつつ言われた通りに次の授業の準備に戻る。
いつものような強気な雰囲気ではなかったような気がしていた。
むしろ、私の目には何かに怯えているように見えた。
――時間は過ぎ、呼ばれた2人が昼休みに職員室に居た。
「では、昨日の夜22時、2人は何をしていたか教えてもらえるか?」
ガーバントがニナ、クローディア、シノにそれぞれ言っていた。
ピンクベージュのボブカットのニナは丸眼鏡をかけ直しつつ言う。
「その時なら、丁度資料作成してましたね…?同室の子を見て頂ければ机に向かってたのを証言してくれると思います」
「ふむ…わかった」
ガーバントがメモを取り、次にシノを見る。
「――…。小説を執筆してました。同室のに聞けばわかるかと…」
少しダウナーな雰囲気を漂わせる彼女は、どうにも嘘をついている様子はなかった。
対してクローディアを見ると少し怯えてる様子だった。
(落ち着け……ただの聞き取りよ。)
「え、えぇと…私は…」
と必死に自分へ言い聞かせながら自身に言い聞かせ、証言を紡ぐ。
「え、えぇと……私は部屋にいました」
と答えた瞬間、ガーバント先生がペンを止めて顔を見てくる。
「証人は?」
「…………」
言葉が止まるとガーバント先生が更に問い詰めてくる。
「答えられないか?」
「部屋にいましたけど…ちょっと不眠気味で…少しだけ外の空気を吸っていました」
「同室の子は?」
「い、居たと思います…。その時はあんまり気にして無くて…」
「……。そうか」
ガーバント先生はそう言ってメモに目を落とす。
「…わかった。じゃあ、一度お前たちは戻れ」
頷いてそれぞれが職員室を出て行く姿をガーバントは見つつ、メモを見る。
「…これは黒っぽいな」
――――――。
廊下を歩く最中、ふと見ると他の子がランク差別が行われていた。
「おい、Dランク、お前何ぶつかってきてんだ?」
「え、えっと…その、す、すみません…!」
「あーあ、汚れちまったよ…。」
そう言って手を出す。
「え、これは…」
「金だよ金。汚れ落とすためのな。そうだな、30銀で許してやるよ」
「えっ。そんなぼったくり…うっ…!」
胸倉を掴まれて苦しそうにし、渋々差し出し落とされる。
「げほっ…げほっ…」
「さっさと出せよのろまが」
そう言って歩いていく背中を見て拳を握る。
(…これがこの世界。これが現実…だから、この一応まともな部類のDは落とせない…)
それを他所に行こうとした時「うごぁっ!?」と吹っ飛ぶ音が聞こえる。
そちらを見るとルイネがカツアゲをしていた人物を投げ飛ばして地面に背負い投げで叩き伏せていた。
「なにカツアゲしとんねんお前ら、ちっさい奴らやのぉほんま」
そう言いつつピッと奪ったお金をルーテリアさんがが「任しましたわ」とセリアに渡す。
「はい!私届けてきますね…!」
受け取った銀貨を何の躊躇もなく両手で抱えて男子生徒に駆け寄る。
「大丈夫ですか?どうぞ」
「え…なんで……G…?」
「それより、お怪我とかは無いですか?」
「あ……うん…」
男子生徒はお金を受け取り、セリアを見上げていた。
「なら良かったです。では」
小さく手を振ってルイネ達の所に合流する。
「あの、さっきの方たちは…?」
「あぁあいつら?ちょっと締めたら顔面蒼白で逃げたわ」
「そんな乱暴な…」
「時には乱暴にするのも必要な事ですのよ。セリア」
「…大丈夫。馬鹿には届いてない」
「え、えっと…たぶん大丈夫だと思います…?」
そうそう、ルイネさんは頷く。
「それになセリア?あぁいうやつらにはあれぐらいせんと分からへんのよ」
「で、でも…怖がらせただけだと同じ事をすると思うのですが…」
「…馬鹿は死んでも治らない。」
その言葉に「そんな辛辣な」と流石に苦笑しながら5人は歩いていく。
(……助けた…?あの一行が…見ず知らずの同級生を…?)
クローディアの中で確実に、何かが変わろうとしていたのかは、本人にもわからなかった。




