第28話 「戦術の本質」
まさかの結果にクローディア本人は唖然としていた。
本来ならばランク合計が高いギルフォードが勝つものだと思っていたからだ。
そうしているイリスの言葉が響く。
「次の班、前へ。」
その言葉と共に次の組の2班が行く。
クローディアの所のA1、B2人、C1人、D1人の班 VS B3人C2人の班というマッチアップだった。
そして、最初と同様まずは作戦会議から始まった。
「改めて、Aランクのゼクス・ルーメンだ。属性は闇、召喚を主軸だ。今まで倒した魔物を模倣して使役する。」
落ち着いた雰囲気で言う彼はルーテリアと一緒のAランクだ。
「え、えっと…クローディア・バロウズです!水と呪術を基本使えます…!」
クローディアはいつも通り、従順な生徒を演じる。
「俺はガルムだ。タンクなら任せな。基本は土を使うぜ」
面倒見が良さそうな彼はBランク、基本的にどの場所でも友人を作れるタイプだ。
「ニナ・フローレス。水と治癒を専行してるわ。」
彼女はBランク、防御に寄った立ち回りを得意とする人物だ。
「ヴァン・アルスターです。空間系を専行してて偵察とかを得意としてます」
彼はCランク、参謀的な立ち位置にいつもいるあまり目立たない人物だ。
自己紹介が終わると一言ゼクスが言う。
「旗は一本そこで影の軍勢に持たせようと思う。その方が落ち着いて動けるだろうしな」
「良い考えですね…!」
(……本当に良い考え。無駄がない…でも、皆"最適解"しか探していない)
私が同調しているとふとガルムが言う。
「それは良いんだけどよ。さっきもあのGのセリアの発言が勝利に導いたってイリス先生も言ってたわけだし、ほかの意見も聞かね?」
「ふむ…一理あるか。では順番に」
ニナから順番に言っていく。
「なら使える所は取ってみたら?旗を造形とか。」
指をパチンっと鳴らしてガルムが言う。
「良いねそれ。俺はそんな細かい所はできんから壁は敵の進路制限だけに使う」
そう言ってるとヴァンが口を挟む。
「影の軍勢を複数出せるならこっちの密偵情報を共有するツールにもできるんじゃ…?」
「可能だ。となれば小さいのでやってみるか…。魔力温存は必要だな」
「じゃあ、私は呪術などで支援に回る方向ですかね…?」
「その方がタンクとしても守りやすくなるしな。ツーマンで行動しつつ、ヴァンは密偵の方が良いか?」
「あぁ、それで共有しながら戦おう。積み状況を作れればその時点で試合を終えれるからな」
「ちなみに、今のこっちが囮って案だと敵に看破された場合の代替案は?」
ゼクスがその言葉に対して軽く頷く。
「なら第二案として影兵を囮に使おう。多大に使うがセーブはしちえる分余裕はある。」
そうして組み立て終えた頃に作戦会議が終わり開始される。
索敵は読み通りに成功し、敵位置を影の軍勢で共有する。
誰一人として指示を聞き返す者はいない。ゼクスが一言命じるたび、それぞれが当然のように自分の役割だけを遂行していく。
その後移動している最中にヴァンが転移で包囲できる位置に誘導するように囮を継続させる。
ガルムが壁を利用して遮断、そこにクローディアの呪術を利用して弱体化を行う。
戦闘が起きるもニナが治癒で継続的に前線維持。
ゼクスが大型のを出して詰ませる。
内容だけ見れば圧倒であり、同時にイリスの声が響く。
「そこまで。勝者、ゼクス率いるチーム」
「ふむ…こちらの班は非常に完成度が高いですね。役割分担が明確でした。」
「誰一人、自分の仕事を奪おうとはしませんでした。」
その言葉に私達はひとつ安心や当然といった雰囲気が漏れる。
「ただし――。」
「完成された組織ほど、想定外に弱い。」
「戦術とは『最善手を選ぶこと』ではありません。」
「最善手が崩れたとき、次善手へ移れることです。」
イリス先生はゼクス達を見渡し、小さく頷く。
「組織としての完成度は、今日一番でしょう。」
その一言に教室が少しざわつく。
(やっぱり強いなぁ……)
私は素直にそう思った。
誰が何をして、誰が守って誰が攻めるのか。
最初から最後まで迷いが無かった。
「ですが。」
教室が静まる。
「彼らは"完成"していました。」
「だからこそ、崩された時の選択肢が少ない。」
「戦術とは。最初の作戦を成功させる学問ではありません。」
「失敗してから勝つ学問です。」
私はふむふむ、と思いつつもふと昔に将棋をお爺さんとして手も足も出なくてちょっと涙目になりつつも頑張って戦術を覚えた事を思い出す。
(負けたから、次は勝ちたいって思えますもんね……)
私がそう思っているとイリス先生が最後に締める。
「一手先を見る者は優秀。」
「二手三手先を見る者は秀才。」
「ですが、負けた盤面から勝ち筋を作れる者だけが指揮官になれます。」
(……難しいお勉強だと思ってましたが、いつも村で言ってた事と繋がってるんですね。)
(確かに、失敗は成功の基ってよくお師匠様も言ってましたし、)
イリス先生は静かに微笑んだ。
「さて。」
「今日の授業はここまで。後日授業の時までにそれぞれの改善点を洗い出しておくと、今回よりも良い結果になるので、日々精進するように」
私達はイリス先生の講義を終えて歩いていく。
「あぁ~…動いたらめっちゃ腹減ったわ」
「…同じく。ルーテリアのやつ半分くらい食べれそう」
「さらっと私の所から横取り宣言しないでくださいまし」
溜息交じりにツッコミを入れるルーテリアさんを見つつついその光景に嬉しくなる。
「ふふっ、ルイネさんとミィさん、大活躍でしたもんね」
「あ、それで言うたらエルマの造形作りもだいぶ良かったんちゃう?」
「えっ、私ですか…?そんな皆が強かっただけで…?!」
「ミィさんだけが造形をしたらあそこまで引っ掛かりませんわ。間違いなく活躍していますわよ」
「…ん。割と大雑把だから」
親指を立てながら誇らしげに言うミィさんに「いや褒めとらんからな!?」と言うルイネさんを横にエルマさんを見る。
「実際、陶芸みたいな発想が出たのも揉みほぐしの単語が出たからですよ?」
「そ、そうなんですか…?……あ、ありがとうございます…」
少し頬を染めて言うエルマさんを見ながら私達は食堂の方へと歩いていく。




