第24話 「想定外」
クローディアは歩きながらイライラした様子で廊下を歩いていた。
「クソ…なんでアイツにできて…ッ」
契約は出来なかった。
あれだけ召喚陣を描いても、一匹も応えてくれなかった。
なのに、あいつの周りには六匹も集まった。
(絶対アイツなんかしてる…なのにGであんな事起きるわけがない…ッ)
そうしていると授業が終わり、セリアが一人になるタイミングを見つける。
このクラスで一番高くて中立なAランクのルーテリアは役員の事で一度教室から出て行った。
Bランクのルイネは荷物持ちをすると一緒に行く。
Cランクのミィは教室のに囲まれてウザそうにしている。
この機会しかないと踏み、セリアの方へと動き出した。
―――。
「…ふぅ、これくらいでしょうか…」
そう言いながら私はノートを直していると。
バシャンッ!
と水が飛んで「ひゃっ!?」びっくりした声を出してしまう。
「あらごめんなさい?練習してたら暴発しちゃった?」
濁ったグレーの瞳を持つ緩くウェーブのかかった小豆色の髪の人がそう言ってくる。
「あぁ…あはは、暴発なら仕方ないですね…?」
(この人、前も食堂でぶつかってきた人だ…?)
そう思いつつ水を手で拭う。
「乾くまで授業大変ね。」
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
私は笑顔で返す。誰でもこういう失敗はありますし、私も失敗した事はいっぱいありますしね。
「ッ(この顔だ。なんでそんなへらへらしてんのGランクなのに。)」
そう言っているとごそごそと内ポケットからキナコが出てくる。
ぴィッ…!
キナコはそのまま毛を逆立てたまま、小さな体でセリアを庇うようにセリアより一歩前へ出る。
キナコと目が合うとゾクリと背筋が冷える。
「……チッ。」
舌打ちだけ残して踵を返した。
私はそんなキナコをなだめるように撫でつつ止める。
「キナコもびっくりしましたね?拭きましょうか。といってもタオルがないので…一度私の服とかで…」
そうしてるとミィさんが寄ってくる。
「…風邪引く。」
「わ、ミィさん、わぷっ!?」
私はミィさんに私の顔を拭いてからキナコをタオルで拭かれつつ半ば強引にそのまま連れ出された。
「あ、あのミィさん?なんでそんなに急いで…?」
私はミィさんに手を引かれつつ聞く。
「…目が笑ってなかった、故意。」
「え、えぇ…さっきは暴発って言ってましたし…」
「……。」
ミィさんは無言で研究棟の方へ私を着替えの為に連れて行く。
―――。
階段の折り返しの部分で一人壁を殴っている人物が一人。
「くそッ。なんなのアイツ!」
(普通なら怖いとかあるでしょ…馬鹿なの?きっと私を見下してるだ…ッ)
「…絶対潰してやる。Gランクが良い気になりやがって…ッ。」
―――。
深夜、セリアが使う場所…爆発ができる場所は魔道具を扱うあそこしかない。
そう思いクローディアは錬金魔導室へと足を向けて歩いていた。
掃除用の搬入口から侵入し、室内へ入った。
「…確かこの辺り…」
手元の魔法で出した小さな明かりを頼りに、セリアが座っていたであろう場所の机の下に増幅陣を刻み込む。
これを使えば、上に乗っかるものが通常よりも過剰に供給される陣だ。
「…本来なら魔力が低いのを強化するものだけど…Gなら…。」
ゆっくりと間違えないように針を利用して掘るようにして木造の机の下に刻み込んでいく。
(ふんっ…少しくらい怪我すれば身の程も弁えて大人しくなるでしょ。)
(底辺レベルの魔力なら死ぬわけじゃない。少し火傷して恥かけば十分。教師にも見放されるだろうし…。)
そうやって陣を刻み終えて、バレないように出て行った。
―――。
後日、予定通り一限目は錬金魔導室での授業となった―――。
「はい、じゃあ。今日は班を作る。それぞれくじ引きを一つ取ってやる。ランクはどうでもいいから怪我したくなければ事故だけは起こすなよー。」
そう言いながらクラウス先生はランクを無視した上でくじを引かせる。
「今回はちょっと危険な奴だ。だから低ランクだけでやったら爆発も普通に起きる」
「つーことで、出来る限り下のランクと高ランクのやつらは組ませる。異論はないな」
有無を言わさぬ雰囲気もあり、渋々ランク混合で班が決められていく。
「あ、一緒ですね。エルマさん。よろしくお願いします」
「あ、セリアさん…。…はい。よろしく…お願いします」
少ししてから高ランクの人物も来る。
「あ、ギルフォードさん、ギャレットさん。今回はよろしくお願いします」
「あぁ、よろしく。本来ならアレだが…教師の意向という事なら仕方ない。授業で事故をしても寝覚めは悪いしな」
「あんまり足引っ張るなよG、F」
エルマさんは「は、はい…」と俯きつつ、私も「はい。出来る限り頑張りますね…!」と返事をして前とは違う席で座った。
だがその行動が一人の計画を予想外にも異例として突き付けていた。
(…今日は班なんて聞いていない…ッ!ま、まずい、Gだからって入れたけど…普通以上なら…ッ?!)
きょろきょろとしつつもクローディアは半決めが決まり、座っていた。
そしてそこに座ったのは全くの別生徒。茶色の刺繍、Dランクの生徒だ。
(まずい…あんなレベルのがやったら爆発する…。でも言えば何で知ってるかって聞かれる…)
そんな葛藤をしていると無慈悲にも実験が始まってしまう。
クラウス先生はそう言って結晶や容器などを出していく。
「今回作ってもらうのは魔力蓄積結晶だ。普段から研究者にも使われてるやつの簡易版だな」
「これを各自に作ってもらう。早々起きないと思うが、過剰供給をすると爆発する恐れがある。くれぐれも気を付けるように」
そう言って班ごとに渡され、組み立てていく。
「防護用の眼鏡は付けたな。一応各自魔力で防御を施しながらやるように。」
そう言って実際に供給が始まる。
それを見る中、唯一知っているクローディアは冷や汗を出していた。
(止めなきゃ。…でも今さら止めたら私が疑われる…ッ。お願いだから成功して…。)
それぞれが話したりしつつ、高ランクが基本的には補助をするという形でそれぞれ進んでいる中。
(Dランクの供給だけでも予定以上……そこへAランクの補助まで入ったら……。)
「よし、入れるぞ」
例のDランクの生徒が魔力を供給する。
パチパチンッ、キィィンッ…。
「…は?なんかメーターが一気に増えて…?」
Aランクの生徒が少し目を開く
「供給を止めろ!」
その声を聴いてクラウス先生が振り返った瞬間。
「ん…?ばっ、入れすぎだ!?伏せろ!二重・岩石盾ッ!」
クラウス先生がそう叫んだ時、カチンッ。という何かが嚙み合ったような音が鳴っていく。
その瞬間、キナコが「ぴっ!」と鳴きながら私の顔にしがみ付く。
「わっ、キナコ…!?」
ガタンッと私は地面にこける形で仰向けに倒れてしまった直後。
カチンッ。
バゴォーーーンッ!!
爆風が盾を砕かんとしながら広がる。
咄嗟に準備をしていたクラウス自身の魔法も完璧ではない。隙間がある。そこから勢いよく吹き出たそれは目の前の生徒達へと容赦なく牙を剥いた。
「ッ…大丈夫か!」
クラウスは
「い、いてぇ…」
「授業中止だ!そこの!ダッシュでヴェイン呼べ!他のやつらで出来る奴は周りの生徒を見ろ!3班のやつはこっちきて動かせ!」
指示を飛ばしつつ爆発地帯に居た人物たちを運んだり、出入口付近に連れて行ったりとしていく。
「……?なんだこれ」
クラウスは壊れた机を見て黒い線を見つけた。
(……これはおそらく…事故じゃ、ねぇな。)
―――。




