第18話 「お手紙を」
目を開けると見知らぬ天井。
「…?」
「ん?起きたか。気分はどうだ?セリア・レイン」
そこにいたのはローレファルス先生とヴェイン先生だった。
「…えと…おはようございます…?」
「ちょっと見るぞ」
私はヴェイン先生に頬を触られて確認される。
「……意識はハッキリしてるな。何があったか覚えてるか?」
「えっと……」
過去を思い出そうとして熱い記憶がよみがえってくる。
「…!あの子は大丈夫ですか…!」
「ん?あの子…?」
「ほら、私より近くにいた子です…!」
「…。お前は何を言ってるんだ…。被害者だぞ一応」
「私はその…大丈夫って聞こえて…」
「ふむ…。まぁ無事だ。火傷は負って気を失っているが、本人は無事だ」
「良かった…。」
安堵していると肩をポンポンと叩かれ、見るとローレファルス先生が何かを持っていた。
「起きてすぐに悪いが、これは?」
そこにあったのは黒く焦げており、袋の文字が見えにくくなったお師匠様から貰ったお守りがあった。
「あっ、お師匠様からもらったお守り…」
その言葉を聞いてローレファルス先生とヴェイン先生は顔を見合わせ、ローレファルス先生が私を見る。
「ふむ…。お守りの効力ってのは聞いてるか?」
「お師匠様が入学前に渡してくれた物です。ただの安全祈願のお守りかと…。」
「安全祈願だと思っていた?」
「じゃあお前はこのお守りの効力を知らねぇ訳だ。」
私が頷きつつ首を傾げると少しの沈黙が満ちる。
「実はこちらでも解析したんだ…が、何が作用したのか分からない。」
「なら製作者本人に聞くしかあるまい。」
「え、お師匠様を連れてくるんですか…?」
ヴェイン先生が白衣のポケットに手を入れつつ口を開く
「その方が一番手っ取り早いしな。渡された本人が知らないんじゃそうするしかないだろう」
「ま、まぁ…はい。」
私は頷きつつ少し怠い上半身を起こしながら少し落ち着かせる為に瞑想をする。
「…。」
(一瞬お師匠様の声が聞こえたような気がしますが…。きっとお守りの念が守ってくれたんですよね。ありがとうございます、お師匠様)
そう思って目を瞑っているとローレファルス先生の声が聞こえる。
「とりあえず、村の場所宛に手紙を書いてもらう。学園に一度来るようにお願いをしてほしい」
「わかりました。」
私はその言葉を聞いてから目を開けて了承する。
「わかりました。でも隣町に一度届けてからになりますけど、大丈夫ですか?」
「直接の場所はわからないのか?」
「いえ、私の村は小型の馬車以外が通れないので」
「そういう事か。なら仕方ないな」
私は用意された紙とペンを受け取りつつ、手紙を考えて執筆していく。
(お師匠様に報告もありますし…何を書きましょうか…)
(ご心配をお掛けしましたって最初に書いた方がいいですよね。)
そう思いながらも執筆をしていき、30分ほどで書き留める。
「…これくらいですかね?」
封筒に入れてローレファルス先生に渡す。
「ふむ、確かに預かった」
そう言ってヴェイン先生は封筒をポケットに入れる。
「とりあえず実験に関してだが、今日は中止して、ここで休むんだ。良いな?セリア」
「わかりました。ローレファルス先生」
それを聞いて頷いてから一夜を保健室で過ごす。
夜の瞑想だけして、軽く目を閉じる。
(おやすみなさい。)
そしてその夜、同時刻のミカヅキ村では。
「くあぁ…。む?」
夜風を浴びつつ、茶を片手に使い魔の一匹である小狐が走ってくる。
「…ふむ。訪問依頼か。まぁあの場所であればそうであろうな」
湯呑を傾けて残りの茶を飲み込む。
「…さて、手紙が来た辺りに向かうとするかの。」
………。――翌朝。アストリア学園都市にて。
目を開けると、何か体が重い…。何か乗っているような…?
「…?」
目を開けるとそこには小さい狐がお腹に乗っていた。
ぴっ。
私が目を開けると前足を片方上げる。
「あ…。お師匠様の…。おはようございます…?」
ぽすぽすと2回飛び跳ねてから降りて出て行く。
「……えーと…確か了承…でしたっけ…?」
答えは聞けず仕舞いでふっと小狐は消える。
「あ、行っちゃいました…。……ん?」
ふと気が付くと昨日まであった鈍痛のようなものが綺麗さっぱり消えていました。
「…あ、これで日課を継続できます…!」
私は早速、ベッドを降りて、日課である掃除からしていきます。
と言っても保健室の部屋の清掃ですが、ヴェイン先生は現状いない様子なので、勝手ながらに清掃を進めていく。
「ふぅ…。こんなものでしょうか」
部屋ではないので少し時間がかかりましたが、何とか清掃を終え、神棚はありませんが、癖のように柏手を打つ。
「…あとはお茶ですが…。」
そうやってきょろきょろとしていると扉が開く。
「ん、起きてたか」
入ってきたのはヴェイン先生だった。
「あ、おはようございます。」
「挨拶は良い。それよりもう動いても良いなら一回健康診断を受けろ」
促されるまま椅子に座りつつ。
「あ、はい…。その、わがままだと思うのですが…」
「なんだ。」
「お茶を作りたいなと…茶葉と給湯室を借りたいのですが…」
「コーヒーしか無いが…それはローレの野郎が言ってた日課の一個か?」
「はい。いつもお茶を飲んでて…」
「…。」
ヴェイン先生は頭を掻きつつ「ちょっと待っとけ」と面倒くさそうな返事をして歩いていく。
程なくして、茶葉をぼそっと持ってくる。
「作ったら検査するからさっさと作れ。」
「ありがとうございます。」
お辞儀してから何時ものようにお茶を炊き出し、湯呑に淹れていく。
「ヴェイン先生も折角なのでどうぞ。」
そっと前に出すと不思議そうに見る。
「俺はコーヒーで良いんだが…まぁ良いか。一応貰っておく」
一緒にお茶を飲んでいく。
「…さて、とりあえず手紙は昨日のうちに手配した。」
「ありがとうございます。お師匠様、元気にしてるかな…。」
ふんっと鼻を鳴らしてからセリア自身の健康診断をするのだった。
(…?あれ?今日のうちに到着ならあの小狐はお師匠様の所ですけど……?)
――。




