第16話 「新たな方向性」
私たちは食事を楽しんでいると食器が落ちた音が響く。
そちらの方を見ると、奥にはつかつかと歩いていくDランクの刺繍が入った女生徒と、立ち尽くすFランクの刺繍が入った女生徒がいた。
「へ?…あっ。ちょっと待っててください」
「へ、あれ?どこ行くん?」
私は軽く断りを入れてから雑巾を厨房の方に頼んで塵取りなどの掃除用具を要求して少し渋られながら?も貰ってくる。
「大丈夫ですか?」
「……え?」
「怪我してませんか?」
「……なんで?」
「ん-…見える部分に怪我はなさそうですね?良かった。」
手などを取って見ていって傷などが無いのを確認してから私は床に散らばった食材を集めて行く。
そんな落ちた食材を見て胸が少し痛んだ。
(せっかく育てられた野菜なのに)
「…」
私は黙って床の野菜を拾う。
周囲からは
「Fだろ。」
「自業自得だ。」
「雑用に任せりゃ良いものを…。」
そんな声が聞こえた。それでも私は手を止めない。
唖然としている彼女の零した物などを私が掃除していると3人も来てくれる。
「ふむ…なるほど。」
「…よし、ほなうちらもしよか」
「ふふ。この程度で目を背けるようでは、《《上位ランク》》の名折れですもの。」
「…賛成。」
床に散らばった食材たちを掃除してから、新しく作ってもらうために受付に行く。
「あの、すみません。あちらで零してしまって。新しく作って頂けませんか?」
「え。あの……規則では再提供は……」
「Aランクの私からもお願いいたします。責任は私が負いますわ。」
そう言って通常のFランクの料金の倍額のお金をさっと出す。
「っ…。わ、わかりました」
「ありがとうございます…!ご迷惑をおかけします…!」
私は厨房の係の人にも感謝を告げ、提供してもらった後、彼女の所に持って行く。
「痛い場所とかは無かったですか?」
「え。…あ、うん…」
彼女は新しく配膳された料理を受け取りながら目を丸くしていた。
「折角ですから、良ければ一緒に食べませんか?」
(……なんで?)
(私、Fランクなのに。)
(さっきまで邪魔って言われてたのに。)
(なんでこの子は……。)
「え、…でも……私はFランクだから迷惑に…」
そう渋っている様子に痺れを切らしたのか、ミィさんがパッと服の端を取る。
「…こっち。」
「まぁまぁ後で話しゃ良いからこっちきぃ」
「え、えっ…?」
「まぁ、ここで遠慮する方が無作法でしてよ?」
その光景を見てからかざわついていた周りの声が次第に少なくなった気がする。
「わ、わかりました…」
「セリア・レインです。こちらはルイネさん、ミィさん、ルーテリアさんです」
軽く3人が挨拶をする。
「…エルマ・カルディナ…です」
「よろしくお願いします、エルマさん!♪」
「……う、うん」
(利用目的…?Gランクが…?でもなんで…?コネ売り…?)
ふと提供された食事を見ると一瞬エルマさんが固まる。
「あ、あの……これ、私が食べられる料理じゃ……」
「手続きは済ませておりますわ。どうぞ安心して召し上がってください。」
「っ……。わかりました」
エルマさんは少しビクッとしてからゆっくりと食べ始める。
「…美味しい。」
「良かったです♪」
少し無言で食事が進む中、エルマさんスプーンが止まり、言葉が紡がれる。
「…なんで誘ってくれたん…ですか?」
「……?」
私は不思議そうに首を傾げた。
「ご飯は皆で食べた方が美味しいですし、凄く楽しいじゃないですか?」
「…楽しい…?」
「はい。私の出身のミカヅキ村でもそうやって机を囲んでみんなで食べてたので」
(何言ってるの…この子)
そうやって食事が終わる頃に午後の予鈴前の通知が来て、私たちは一度別れを告げて次の教室へと移動していく。
「そういえば次の授業はなんでしたっけ…?」
「次はー…治癒学やったかな?」
「ヴェイン教授の講義ですわね。現代ではあまり馴染みのない授業をすると有名のようですわ?」
「なら色々と学べそうですね…!」
そう言って教室に行くと、よれよれの白衣を着た目の下に深いクマがある方がいた。
「席付け一年。出席取るぞ」
それだけ簡素に言って軽く出席点呼を取っていく。
「俺はヴェイン・ハートフィールドだクソガキ共。」
「俺の授業は簡単だ。魔法で治るからと怪我を甘く見るな」
(確かに…!怪我をしたら後遺症もいっぱいあるからとお師匠様も言っていました…!)
「魔法は傷を治す。だが"怪我をしない知識"は治せねぇ。」
「今日はその話だ。」
「んじゃ授業やってく。とりあえず軽く概要からやってく。耳かっぽじって聞けお前ら」
そう言うと人体の構造をチョークで骨格図や筋肉の位置、血管の流れまで迷いなく描かれていく。
(すごい……。絵だけで理解しやすいです。)
そう思いながら見ている一方で、視界の端では目を逸らす生徒もいた。
「まずだ。大前提として、回復魔法の限界とかを認識してもらう」
そう言いつつ手前の席のをチョークで示しながら
「おいそこの。治せるものと治せないのを区分しろ」
Aランクの方にいる男生徒が少し困りつつも言葉を出していく
「えっと…切り傷、火傷、軽度骨折、毒、出血が治せて、欠損した臓器や老化、先天の病気などが治せないものかと」
「その通りだ。一応はまともな事もわかってるやつもいるな」
そう言いながらチョークで書き殴っていく。
「他にも呪い、魔力暴走とかも直せない部類だ。覚えとけ」
「それと高度治療術師は超希少だ。あれば金に困らんが大抵こき使われて終わりだ」
「そこで、そんな個人技がどうのとかじゃなく、もっとお前らでもできる内容で現地ではやる必要がある」
そう言いながら状況を空いた部分に書いていく。
「腕とか足が折れて動けない。さっきも言ったが軽度で治せるが今回は重度だ。どうする?手上げろ」
少し教室がシンとした時に私は一つ村で骨折した人の手当をしているお師匠様の姿を思い出した。
「あ、はいっ!」
「ん?…Gのか。回答しろ」
「添木で固定して骨自体に損傷が行かないようにして背負って持ち運んで安全を確保する。じゃないでしょうか!」
「…ほぉぅ。理由は?」
「そのままだと動いた時に骨がさらに傷ついて治りづらくなるから…かなと?」
「…ふんっ。細かい所はあれだが概ね正解だ。」
そう言いながら書きなぐっていく。
「なんで知ってるんだ?」
「田舎者のくせに。」
「誰かに教わっただけだろ。」
「黙れお前ら。大体合ってるっつったろ納得しろガキ共。」
そう言いながら書き終えてチョークを置く。
「さっきのは応急手当の一つだ。ただこれをするとしないとじゃ生存率に関わる。お前らも妬んでる暇があったら頭回せ。通知表下げんぞ」
その言葉を聞いて更に教室が静まり返る。
「…んじゃ授業進めるぞ。ノート取っとけガキ共」
(口調は強いですけど、すごく優しそうな人ですね…私も頑張って覚えないと)




