第15話 「不思議な存在」
昨日の出来事が頭から離れない。
また気付けば、あの四人を目で探すように追ってしまっていた。
笑って、楽しそうに話している姿。
……どうして。
(私より下のGランクなのに。)
(どうしてあんなに笑えるの。)
(どうしてAランクの人たちが……。)
そう思いながら私も廊下を歩くと。
「まだあのFいるの。」
「そのうち辞めるだろ。」
「はんっ、あんなの魔物の餌にもならねぇよ。」
(…っ。)
ぎゅっと鞄の紐を握りしめて耐えようとしているとふと、人物を見つける。
セリア・レインがその光景を見ていた。
(み、見られた…。)
口元を引き締め、逃げようとした時
「おはようございます。」
「え?」
近くに寄ってきて笑顔で言われ、言ってきた本人は歩いていく。
「…おはよう。」
「おはよーさん。」
「ごきげんよう。」
通り際に3人にも言われ、私の中で何と言われたのか全く処理ができなかった。
(なんで私にも…?)
「…っ…。」
きっと裏で笑ってる。
きっとAランクだから利用されてる。
そうに決まってる…はず…。
そう思えば思うほどその後ろ姿に疑問が尽きなかったが、声を返す事はなくそのまま歩いて行ってしまう。
(観察してみたら…何かわかるかな)
そんな事を思いながら今日一日の予定を心の中で決めて教室へと逃げるように向かう。
そして授業中から私はその異常な雰囲気に首を傾げていた。
今回来ていたのは教師のザハル・クロイス教授。
濁った琥珀色でボサボサの頭をかきつつ説明をしていた。
「じゃー…セリア・レイン」
「はい!」
「この魔導学についてはわかるか?」
「いえ!まだわかりません!」
「……。まぁうん。まだ教えてない所だからな」
そう言いながらチョークで書き込んでいく。
「うわっ、だっさ。基礎学だろ」
「やっぱ劣等生だ。」
「田舎者がよ。」
周りの人たちはそんな事を言っているが本人は楽しそうにしながらぽろっと言う。
「あっ…。ようするに吹き零れると危ないってことですね?」
「……何故わかった?」
「料理でも吹き零れると危ないので、その事に似てからですかね?」
「何故そう思った?」
「鍋も吹き零れると火が消えたり火傷したりします。」
「……。」
黒板を指しながら
「全員聞け。こいつは魔法を料理で理解した。」
「…正解だ。座って良いぞ。」
その言葉に返事をして席に座る。
「言ったように、これらは薬品として外気を含めて熱すると吹き零れて危険になる。これが爆発の原因だ」
淡々と書き込まれながらその周りの誹謗中傷が全く聞こえていないかのようにノートを取る手が止まらない。
笑われても一度も周囲を見ないで教授だけを見ている。
(なんであんなに楽しそうなの…?あんなに周りに言われてるのに…。)
そして次の授業は召喚術に関しての授業。
担任は メルフィス・ブランシェ。
無造作に伸びた純白の髪の毛と野性味のある金眼でハキハキ喋る先生だ。
「おいセリア!この子をどう思う!」
そう言って私たちの天敵である魔眼の氷殻蛇を見せる。
巨大なこの蛇の黄色い魔眼に睨まれると、体内の「マナコア」が一時的に凍結させられ、魔力の巡りが完全に停止するというとんでもない化け物だ。
「ひっ…!」
「や、やば…!」
そんな声が演習場で響く中、当の本人は。
「わぁ…すごく優しそうな雰囲気ですね」
そう言いながらスススッと呼ばれたのもあり近寄る。
「近付くな!」
「噛まれるぞ!」
「目を見るな!」
そんな叫び声を無視するように、セリアはゆっくり歩く。
「始めまして。ヘビさん。セリアです」
微笑みかけながらソレに話しかける。まるで親しい隣人のように。
それに魔眼の氷殻蛇は頭を下げる。
「…は?」
一瞬の静寂の中、キラキラとした目でミレイユ先生が言う。
「おぉ、わかるか!コイツもまんざらでもなさそうだな!♪」
(怖くないの?)
(それとも……怖いっていう感情が無いの?)
「よしよし…。女の子ですかね?優しい瞳の感じがしますし」
「性別まで当てるか!気に入ったぞセリア♪」
私たちは魔物を恐れる。
幼い頃からそう教えられてきた。
目を合わせるな。近付くな。逃げろ。それが常識。
なのに。あの子だけは。
まるで昔から知っている友達を見るように笑っていた。
そう言いながら召喚についての話が進められる。
魔眼の氷殻蛇は戻されて消えた後でも少しの恐怖感が漂う中、セリア一人だけが楽しそうに講義を聞いていた。
それから昼休み。
また4人で座って談笑している。
そんな時、前も肩をぶつけて舌打ちしたクローディア・バロウズさんが絡みに行く姿も見れた。
「あら、まだその子と一緒にいるの?」
「Aランクも随分落ちたものね。」
その言葉にムッとした表情になりかける3名とは裏腹に
「おはようございます。一緒に食べますか?」
笑顔でランクGであるセリアは言う。
「「「…?」」」
「…ッ」
その言葉で一瞬場が凍りつつもまた舌打ちして歩いていく。
「…あのセリアって子、いったい…」
そう思っているとクローディアさんが横を通って肩をぶつけてきてよろけてしまう。
「邪魔。どけ、Fランク」
「…ご、ごめんなさい」
そう言って頭を下げ、見送ってから、パッとセリア達を見る。




