第14話 「研究棟で」
研究棟へ赴いた私たちは今日の食材を見たりしながら、郷土料理その2が食べたいと言われたので、作ることになりました。
「ということで、郷土料理で山の幸をふんだんに使った天ぷらにしようと思います」
「天ぷら?いうてそんな珍しいもんちゃうな…?」
「…普通?」
「とはいえ、あまり天ぷらにして食べないようなものばかりですわね…」
ルーテリアさんは紫蘇の葉を見つつ首を傾げる。
「こういったものも美味しくできるんですよ。さぁ、物は試しです!」
早速、料理をするために油を熱している間に天ぷら液を作っていく。
「へぇ…こんな感じで作ってるんや」
「…お肉も欲しかった」
「ミィ、注文したのはセリアの郷土料理ですわ。まずは食べてからですわよ?」
「ふふっ。私もお肉無しでも満足できるくらいのを頑張って作りますからね」
そう言いながら箸で軽く液を垂らし、油の温度を感覚で見てから食材を通して揚げていく。
衣をくぐらせた紫蘇を油へ入れると、ジュワッという軽い音と共に泡が立つ。
「鮎は尾だけ外へ出して揚げると見た目も綺麗になります。」
さらに、同時進行で前のようにご飯も炊いていく。
「後は揚げた食材を並べて…。」
「できました。山の幸の天ぷら定食です」
山で取れる鮎などの魚、紫蘇の葉、ニンジンやキノコなどを使ったものと、天つゆ、ご飯、そして塩を小鉢に入れて味変もできるようにして提供する。
「…思った三倍くらい豪華になっとる」
「…美味しそう」
「ではセリア、いただきますわね。」
そう言って手を合わせてから各自各々の食材を一口食べる。
「…?!なんやのこれ、めっちゃ美味いねんけど!?」
「…あっさり…でもしっかり味ある。…そのままでも美味しい」
「ほくほくで…魚が全然臭くありませんわ…。これは癖になりますわね…♪」
「気に入ってもらってよかったです♪」
その後もやはり追加で天ぷらを揚げると、各自が平らげてしまう。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
皆で食べ終え、お茶をゆっくりと飲む。
「あぁ~…一週間しか無いの無理かもしれん…」
「…餌付け、されてる」
「餌付けって…。そんな大袈裟な…。」
「うふふっ、これを普段から食べていたセリアにはたぶんわかりませんわ?」
そんな事を言いつつ、皆さんが一服している間に洗い物をして、お風呂場へと向かう。
「…至福。」
「ご飯の後のお風呂…。逆でもたぶん溶けてそうやぁ…。」
「セリアさん。お風呂場でしていた瞑想というのはこういう時にしても良いものなんですの?」
「こういう時だからこそ、落ち着かせるためにするんですよ。ルーテリアさん」
「……zzzZZ」
「って、する前から浮いて寝とるのもおるけど…」
「まぁ何時もの事ですわね。とはいえ、少しだけやってみましょうか。」
静寂の中、水滴の滴る音が広がる。
血潮を感じ、ゆっくりと熱を感じながら深呼吸をする。
「……さん。…ルーテリアさん?」
「へ…? あ、あぁ…私としたことが、いつの間にか眠ってしまっていましたわ……」
「気持ちいい湯舟の中だとそうなっちゃいますよね」
クスクスと笑いつつ、皆で研究棟へ戻り、歯磨きを済ませて、布団へと入りに行く。
「基本的には、この後に瞑想をして、寝ますね。何か質問はありますか?」
「なんか特別な訓練とかはせえへんの?」
「いえ、特には。ただ瞑想をしてから寝るだけですよ」
「本当に普通に生活をしている感覚ですのね。では、これをノートに纏めてから私たちも寝ましょうか」
「…良い具合に眠たい。」
「うちら一応研究参加者やねんから書いとき?」
「…むぅ。」
文句を言いつつも今日一日のしたことを纏めたり、各々の感想文を書いていく。
私はその間にお茶を用意し、終えた3人の所にそっと置く
「お疲れ様です。何か変なところはありましたか?」
「いえ、今のところは変化をあまり感じれませんわね。ただ…」
「ただ…?」
「満たされた雰囲気になっているのは確かですわ?」
「…ふふっ。なら良かったです」
三人が眠った頃。
ガーバントは今日の記録を見返していた。
「……変化無し。」
ローレファルスも腕を組む。
「睡眠時間、食事量、魔力量、精神状態。」
「全部正常です。」
「むしろ精神状態は初日より安定している。」
「……普通過ぎる。」
「普通じゃない。」
ローレファルスが首を振る。
「普通の生活だけでこれだけ整う人間はいない。」
「しかも本人は努力している自覚すらない。」
「生活そのものが修行になっている。」
ガーバントは静かに息を吐く。
「測定不能か。」
「とはいえ、まだ始まって1日だ。ここから劇的に変わる所もあるかもしれん」
そう言いつつも監視室でローレファルスは伸びをする。
「退屈なものだな。こうも日常的なのを見るだけとは」
「それが研究だ。可能性があるのなら全部調べる。頭の固いの連中が嫌がる筆頭だ」
「違いない。とはいえこうやって日常が続くとは限らないが…学園はどうさせるつもりだ?」
ガーバントは首を傾げながら言うと、ローレファルスはふっと笑いつつ。
「基本は介入しない。だが殺傷に繋がりそうなら介入をする。」
「少なくとも学院の魔法理論では、防御は望めん。」
「…わかった。目を光らせてはおくが、そっちも頼んだぞ」




