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朝は神社で掃除をしていた最弱の巫女見習い、今日から魔法学園に通います。  作者: 九尾


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第13話 「知らない常識」

四人で並んで校舎へ向かう中、ふとすれ違う生徒たちが、一瞬だけこちらを見る。


「……また一緒だ」

「昨日も教師棟から出てきたよな」

「聞いた? 特別寮らしいよ」

「Gのくせに?」


小さな声。


けれど完全には隠していない。


「何か話題になっていますね?」


私は首を傾げる。


「……気にしなくていい。」


ミィさんが短く答える。


「せやせや。放っとけばええ」


ルイネさんも笑って手を振る。


「ですが、皆さん色々教えてくださる方ばかりですし」


その言葉に三人は足を止めそうになる。


「「「……。」」」


「セリア、それは違いますわ」


ルーテリアさんが小さくため息を吐いた。


「え?」


「……そのうち分かりますわ。」


「そうなんですね」


私は素直に頷く。


何が違うのかは、よく分からなかった。


教室へ入った瞬間。


さっきまで騒がしかった教室が、一瞬だけ静かになる。


視線だけがこちらへ集まる。


「……。」


「おはようございます」


私が挨拶すると、数人は視線を逸らし、数人は鼻で笑い、誰も返事をしなかった。


「……今日もか。」


ルイネさんが小さく呟く。


「?」


「気にせんでええよ。」


「はい。」


私は空いている席へ向かい、座ったころにガーバント先生が入ってくる。


「んじゃ、HRを始めるぞ。それとセリア・レイン。昼休み終了後、研究棟へ来い。」


「あ、はい!」


「チッ、またかよ」

「何回目だ?」

「Gランクなのに」

「贔屓じゃねぇか」


(また小声でセリアの事が言われてる…不快。)


「じゃあ連絡事項は…」


そう言ってHRが始まり、明らかな敵意を私は感じた。本当に不快…。


(…また終わったらすぐ行こう。)


そう思いつつ、授業が開始する。


「では今日は術式についてだ。ノート15ページを開け」


そのガーバントの言葉に机に教科書を広げ、見ていく。


「魔法とはマナコアから魔力を取り出し――」


「世界中、どこでもこの理論は共通認識だ。」


(昨日、蒼い火を見た。魔力漏れも、詠唱も無かった。)


(あれは教科書の理論じゃ説明できない。)


(だから昨日、ローレファルス先生も…。あの人は気付いてる。)


(セリアは知らないんじゃない。)


(別の理論で魔法を使ってる。)


私はセリアを見る。


首を傾げながら、それでも真剣にノートを書いている。


……知らないんだ。本当に。演技じゃなく。


その間も観察をしながら適当に知っている術式を聞き流す中、ふと後ろの席から聞こえる。


「聞いたか?なんか研究棟から来たって話」

「なんでも、教師のお気になんだろ」

「きっしょ。Gに何期待してんだよ」


(…始まった。昼休みにすぐ行こう…。)


そんな事を思いつつ聞き耳を立てながら授業はそのまま進み、教師が目を光らせていたこともあって教室は静かだった。


気付けば午前最後の授業も終わりを迎える。


「今回はここまでだ。各自予習しておくように」


その言葉と共に昼休みの鐘が鳴り、それぞれが席を立って行く中、すぐにセリアの所へ向かった。


「…セリア。ご飯。」


「あ、お疲れ様です。ミィさん」


ニコニコとしながらすごく楽しそうに教科書を仕舞う姿なのもあり、善意で動く彼女に悪意が向けられている事に酷く辟易する。


「…ん、行こ。」


セリアの手を取ってルイネとルーテリアのいる方向へ歩いていくと、丁度準備を終えて立ち上がる姿が見える。


「では参りましょうか。」


「そやね。めっちゃ腹減ったわ」


そんな会話をしながら食堂へ向かう道中、やはり視線が釘付けになっていた。


(…またヒソヒソしてる。)


「また教師棟か。」

「ほんと特別扱いだな。」

「研究対象なんじゃね?」

「あんなGが?」


その言葉が聞こえながらも、ルーテリアに目配せをして足早に食堂に向かうように催促し、すぐに向かう。ご飯も食べたいし。


そう思いながら食堂で注文をし、移動している最中。


セリアがとある茶色の刺繍を身につけた少女が、こちらへ歩いてくる。


ドンッ。


「失礼。」


と言いながらセリアのお盆に肩をぶつける。


スープが少しこぼれそうになるのをスッとバランスを咄嗟に保つ。


「わとっ…。いえ、私も前をちゃんと見ていませんでしたし。そちらのも零れてないですか?」


一瞬彼女は何を言っているのかわからないような雰囲気で目を丸くした後、想定していた反応ではなかったのか、少女は露骨に顔をしかめる。


「……気持ち悪。」


そのまま小さく舌打ちするようにして去っていく。


「…わざと。」


「ああいう奴、おるんよ。」


「気にする必要はありませんわ。」


「あはは。だとしても、私も余所見をしてたのでお互い様ですよ。」


そう言いながら席に着き、一緒に食事を楽しむ。


「…さっきのはDランク。」


「やね。茶色の刺繍やったし」


「そういえば、刺繍で判別できるって書いてましたね?」


「えぇ。とはいえあの咄嗟によくバランスを保てましたね」


「あはは。よく子供たちに農作業中に後ろから抱きつかれたりしてたもので」


「…ある意味器用。」


そんな風に談笑を続ける四人を、食堂の隅から一人の少女が見つめていた。


黒い刺繍の制服。Fランク。


エルマ・カルディナ。


(Aランクの人と……Gランクの人が、一緒に笑ってる……。)


(そんなこと……あるんだ……。)


(あんなに楽しそうに……。)


(少しだけ……私も話してみたい。)


エルマは思わず自分の黒刺繍へ視線を落とした。


(でも…あんなことをして……本当に大丈夫なの……?)


そう思いながら、四人の背中が食堂から消えていくのを見送った。


昼食を終えた後は午後の授業が続いた。


午後は魔物学と歴史学。


どちらも座学であり、特に大きな出来事もなく時間だけが過ぎていく。


私は先生の話を一つも聞き逃さないよう、夢中でノートを書き続けた。色々あって難しいですけど…。


放課後。


「セリア・レイン。今日も研究棟だ。昨日言った通り、三人を連れて来い。」


「はい。」


ルーテリアさん、ルイネさん、ミィさんを連れて研究棟へと足を運んだ。


(難しい事も多いですけど、お師匠様、すごく楽しいです…!)

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