第九章 セバスの実力
セバスが軽く指を弾くと、水面が爆発した。
「アクア・エステティック・バースト!!」
何万トンという水が巨大な刃となり、ヒロミチたちの横を通り抜けて背後の巨岩を一瞬で粉砕した。
大亀の怪力でも壊せなかった硬い岩が、まるでバターのように切り裂かれている。
「な、なんて威力だ……!」大亀は震え上がった。「この俺が、指先一つ動かせねえ。こいつ、トモヒロ師匠と同じ……いや、それ以上のプレッシャーを感じるぞ!」
ヒロミチは肌が粟立つのを感じていた。セバスから放たれるのは、自分と同じ「愛の力」。だが、その練度は今のヒロミチとは比較にならないほど高く、洗練されていた。
「君……いい資質を持っていますね」
セバスはヒロミチのすぐ目の前まで、水面を滑るように移動してきた。
「あなたの『ゲイ・エナジー』はまだ蕾の状態。ですが、開花すれば私に届くかもしれない。……ふふ、少しだけ興奮してきましたよ」
セバスは攻撃を仕掛けることなく、ただ優雅に一瞥をくれただけで、再び川上へと歩き出した。
「今はまだ、あなたを愛でる時期ではないようです。ヒロミチ、もっと強く、もっと美しくなりなさい。そうすれば、いつか運命の舞台で相まみえるでしょう」
セバスの姿が霧の中に消えた後も、二人はしばらく動くことができなかった。
「世界は広いな、大亀くん……」
ヒロミチは自分の震える手を見つめた。
「トモヒロ師匠以外にも、あんなに強くて、あんなに気高いゲイがいるなんて。僕はまだ、スタートラインに立ったばかりだったんだ」
大亀は力強く頷いた。
「ヒロミチさん、俺も修行し直します。あんな奴に、あんたを指一本触れさせないくらい、最強の盾になってみせますよ!」
衝撃的な出会いを経て、二人の修行の旅は、より一層熱を帯びていく。
その頃、道場の中田もまた、遠く離れた場所でこの「変化」を感じ取り、不敵な笑みを浮かべていた。
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