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真実の愛に目覚めし拳   作者: m
第2部 もしもあの時

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第十七章 1世紀 2


――西暦1世紀。

吹き抜ける乾いた風と、照りつける太陽の熱。

次に中田が目を開けたとき、彼は自分のものではない、見知らぬ誰かの体の中にいた。


中田は状況を把握しようと辺りを見渡そうとしたが、首が回らない。指先一つ、自分の意志で動かすことができなかった。視覚と聴覚だけが、強制的に「宿主」の感覚に同期させられている。


目の前には、白く巨大な石柱が立ち並ぶ、圧倒的なスケールの神殿がそびえ立っていた。


(でっけぇ……)


まるで映画のセットか、教科書で見た古代遺跡がそのまま蘇ったような光景に、中田は小学生のような幼い感想を抱いた。呆然とその美しさと威厳に見惚れていると、突然、体が勝手に動き出した。


宿主は神殿に背を向け、迷いのない足取りでそこから離れ始めたのだ。


(おい、待て! なんで勝手に動くんだ!?)


中田は必死にブレーキをかけようとした。足に力を込め、踏ん張ろうと思考の限りを尽くす。だが、肉体は中田の叫びを完全に無視し、リズミカルに土を蹴って歩き続ける。まるで自分という意識が、他人の人生を特等席で鑑賞させられている観客になったかのようだった。


その時、頭の中にあの白髪の人物の涼やかな声が直接響いた。


「ごめん、ごめん。説明が足りなかったね。君が今抱いている疑問は、至極当然のことだ。なぜ体が勝手に動くのか……はっきり言えば、それは今この瞬間、この体が本来の歴史で行っていた行動をなぞっているだけだからだ」


周囲の通行人には聞こえていないようだ。中田は内心で毒づきながら、その声に集中した。


「これは基本的には変えられない。物事はすでに確定した歴史通りに進む。……なら、どうやって歴史の歪みを直すのか。そこが肝心だね」


白髪の人物の声は、どこか楽しげだった。


「抽象的な話になるけれど、人生には何度か、自身の運命を変えるチャンス――『空白の瞬間』があるんだ。例えば、ずっと自堕落に過ごしていた男が、たまたま溺れかけていた人を助けたとする。その助けた相手が実は大企業の社長で、お礼に社員として採用される……なんてことが起きたりね。こういう突発的な分岐は、その時の本人の気分や偶然に左右されるから、あらかじめ決められた『運命』というシステムでは制御しきれないんだよ」


声はさらに核心に迫る。


「要約するとね。君には、この滞在中に一回だけ、運命を変える権利がある。君自身の意志で思考し、行動を完全にコントロールできる瞬間が一回だけ存在するんだ。そこで正しい選択をして、歴史をあるべき姿へ修正してほしい。……ただし、気をつけて。君がその行動をやめた瞬間に、運命はまた冷酷な歴史のレールへと戻り、君は再びただの観客になる」


それだけ言い終えると、声はぷつりと途切れた。


(……一回だけ、かよ。ハードすぎんだろ)


不自由な体の中で、中田は心の中でぼやいた。歩みを止めない肉体は、いつの間にか神殿を離れ、活気ある市場のような場所へと入り込んでいる。


(それはいい。ルールは分かった。……けどさ、肝心なことをまだ聞いてねえぞ。俺が入ってるこの『中の人』、一体誰なんだよ!)


中田は自分の手足を見下ろそうとしたが、視界は勝手に前方を向き、歩いていると話し声が聞こえる場所についた

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