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真実の愛に目覚めし拳   作者: m
第2部 もしもあの時

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第十五章 ゲーム

「さて、質問はあるかい?」


目の前の人物が、銀糸のような髪を指先で弄びながら促した。

中田の脳裏には、数えきれないほどの疑問が渦巻いていた。ここがどこなのか、お前は何者なのか、自分は死んだのか。だが、それらを差し置いて、中田の心臓を最も強く締め付けている焦燥があった。


中田は乾いた喉を鳴らし、最も重要で、それでいてあまりにも単純な問いを口にした。


「……ライバルのヒロミチに、今の俺は勝てるか?」


その問いを聞いた瞬間、白髪の人物の瞳に奇妙な陰影が差した。少しだけ視線を泳がせ、数光年の彼方にある記録を読み解くような沈黙の後、その唇が残酷なまでに滑らかに動いた。


「勝てないね」


その声に迷いは微塵もなかった。


「断言しよう。君はヒロミチに、永遠に勝てないよ。このままの君であれば、一万回挑もうが一万回敗北する。それが君に用意された『脚本』だ」


中田は目を見開いたが、激しい憤りは湧いてこなかった。むしろ、心の奥底にあった氷の塊が、ようやく正体を表したような、奇妙なまでの納得があった。

ヒロミチの放つ、太陽のような、眩しすぎて直視できない輝き。彼と並び立つたびに感じていた、自分の輪郭が薄れていくような敗北感。中田の直感は、ずっと前から叫んでいたのだ。自分は彼の背中を追うだけの存在であり、いつかその影さえ見失う日が来るのだと。


「……そうか。やっぱりな」


中田が静かに頭を垂れると、その人物は彼の頬を覗き込むようにして囁いた。


「納得しているのかい? その諦念こそが君を敗北へと繋ぎ止めている鎖だ。だが……もし、その脚本を破り捨てたいと思うなら。私の『ゲーム』に参加してみないか?」


白髪の人物の瞳に、星々が爆発するような、危うくも魅惑的な光が宿る。


「このゲームを経た後、君は今の君とは似ても似つかない存在になる。精神も、肉体も、そして君を取り巻くものさえも……格段に、文字通り次元の違うレベルへと昇華されるだろう。どうする。やるか?」


リスクを問う必要はなかった。ここから戻れる保証も、ゲームの内容さえも不明だ。しかし、中田には「永遠の敗北」を受け入れるという選択肢こそが、何よりも恐ろしかった。


「やる」


言葉が唇を離れる。それは中田の意志というより、彼の生存本能が叫んだ決断だった。


「即答だね。素晴らしいよ、中田君」


白髪の人物は、今日初めて、仮面ではない血の通った愉悦を浮かべて笑った。


「いい返事だ。……では、君の『運命』を根底から書き換える、不愉快で、残酷で、この上なく魅力的なゲームを始めよう。君がその輝きに焼かれるのか、あるいは太陽をも飲み込む深淵となるのか……見せてもらおうじゃないか」


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