第十章 コレナガ 迷子
「……ここはどこだ?」
タケダ師匠から伝授された究極の速さを手に入れたコレナガだったが、致命的な問題に直面していた。
あまりにも速すぎて、曲がるべき角を三つほど大陸単位で通り過ぎてしまったのだ。
目の前には見渡す限りの砂漠。ヒロミチたちのいる場所とは正反対の環境である。
「くそっ、この炎の出力が強すぎて制御しきれん……! どうしたんだ。さっきまではできていたのに。くそっヒロミチどこにいるんだ!」
最速の伝令は、現在、地球規模で盛大に迷走していた。
その頃、ヒロミチたちはかつて壊滅させたはずの「アンチゲイ団」の残党による待ち伏せを受けていた。
「ヒロミチ! 今日こそ貴様らの不潔な愛を、ここで沈めてやる!」
数百人の残党兵が包囲網を狭めていく。
ヒロミチは焦りながらもやけに落ち着いている小林を見てなぜか安心していた。
「ヒロミチさん、ここは僕に任せてください」
一歩前に出たのは、これまでの戦いでサポートに徹していた小林だった。
敵の指揮官が嘲笑う。「ハッ! そのひょろ長い男に何ができる? 殺せ!」
一斉に小林に敵が迫る。しかし、小林の周囲で空気が歪んだ。
小林は静かに顔を上げ、指先で小さなエナジーを描いた。
「ヒロミチ、大亀、ソウタ。私の新しい力を見て驚愕なさい!」
瞬間、小林の背後からゲイエナジーの光が伸び、それが数千、数万の弾へと分裂した。
「万華鏡・愛の弾幕!!」
それは一点集中ではなく、戦場全体を覆い尽くす広範囲殲滅魔法だった。
降り注ぐ光の粒は、アンチゲイ団の戦士を紙細工のように貫き、残党兵たちの武器だけをピンポイントで破壊していく。
「な、なんだこの広範囲攻撃は……! まるで空そのものが攻撃してくるようだ!」
わずか数秒。
平原を埋め尽くしていたアンチゲイ団の軍勢は、戦意を喪失し、その場に崩れ落ちた。
小林は少し息を切らしながらも、ヒロミチを振り返った。
「ヒロミチ、今のうちに進みましょう。」
「ああ、そうだな。いいのか殺さなくて。」
「いいんですよ。彼らはもう私たちを襲ってくることはないわ。もう彼らには戦意を感じられないもの」
その頃、コレナガは北極圏でシロクマと並んで途方に暮れていた。




