第十九章 奪われたライバル
ケイイチとセバス、かつて同じ師ユウスケの下で修行した二人の激突は、もはや人間業ではなかった。
「『アクア・エステティック・レクイエム』!」
セバスが放つ高密度の水刃が、真空を切り裂き尺田へと襲いかかる。
「無駄だと言ったはずだ。『アブソリュート・ゼロ(絶対零度)』」
ケイイチが指を鳴らすと、セバスの放った水は一瞬にして凍りつき、粉々に砕け散った。
「くっ、これほどまでに心が冷え切っているというのですか、ケイイチ!」
二人のオーラがぶつかり合う衝撃で、本拠地の巨大なホールに亀裂が走る。力は互角。しかし、セバスの心にある「かつての友への情熱」が、わずかな迷いを生んでいた。
「……愛とは、弱さのことだ。セバス、お前は今、中田を安じたな?」
ケイイチの瞳が冷酷に光る。
「しまっ……!」
セバスが背後の中田を振り返った瞬間、ケイイチの影が爆発的に伸び、意識を失っている中田を飲み込んだ。
「中田くんは人質として預かっておこう。愛に狂ったお前たちが、どこまで無様に足掻くか見物だ」
「待ちなさい、ケイイチ!」
セバスが叫ぶが、ケイイチは闇の中へと姿を消した。
そこへ、轟音と共に壁を突き破ってヒロミチ、大亀、小林、コレナガの四人が突入してきた。
ヒロミチはセバスを見た時にセバスから「中田君が連れ去られました」と言われ、なぜ中田がここにいるのかは分からなかったたがヒロミチ達はとにかく行動に移したが彼らの前に三人の影が立ちはだかった。アンチゲイ団が誇る最強の三連星、最高幹部**『虚無の三騎士』**だ。
「ここから先は通さん。貴様らの無意味な情熱を、ここで完全に断絶してやろう」
「どいてくれ! 仲間が連れ去られたんだ!」
ヒロミチが拳を固めるが、最高幹部たちの放つプレッシャーはこれまでの敵とは一線を画していた。
「ヒロミチさん、ここは俺たちが食い止めます! あんたは中田さんを!」
大亀が咆哮し、最高幹部の一人にタックルをかます。小林とコレナガも、それぞれの技を駆使して残りの幹部を足止めする。
「……セバスさん 大丈夫ですか」
ヒロミチがセバスの隣に並ぶ。セバスは拳を握りしめ、かつてないほど激しい怒りと悲しみを漂わせていた。
「ええ……。ですが、中田くんを奪われました。ケイイチ……彼はもう、私が知っている彼ではないのかもしれません」
最高幹部たちとの戦闘が激化する中、本拠地の深部からは中田を連れ去ったケイイチの気配が遠ざかっていく。
「中田くん……待ってて。今、助けに行くから!」
ヒロミチの胸の中で、かつてないほど激しく情熱の炎が燃え上がる。それは、ライバルを想う心と、師匠トモヒロが信じた「愛」の力。
奪われたライバル、立ちはだかる最高幹部、そして変貌したかつての友。
全ての因縁が、アンチゲイ団の最深部、「無」が支配する祭壇へと集約されていく。




